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第二部完
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マーテリアのクリスタルが輝きを帯びる。
『案ずることはありません。すべて元通りなるだけ。あなたは自分の世界に還り、この世界は調和を取り戻す』
「ふざけんな! そんなことさせるかよ!」
俺は〈妙なる祈り〉を発動させようとする。が、そもそもどうすればいいか分からないから対抗策もない。
具体的なイメージが出来なけりゃ、この力は宝の持ち腐れなんだ。
そうか、知っているってのは、そういうことかよ。
『光よ。来たれ』
クリスタルの光に照らされ、俺の全身が輝く。そして、俺の意思に反して身体がふわりと宙に浮いた。
「た、種馬さま……!」
「オルたそっ! くそっ!」
このまま転移させられるのか。それはまずい。なにがまずいって、オルタンシアを一人でこんなところに残すわけにはいかないってことだ。
「こんにゃろー!」
なんとか力を使い、オルタンシアに向けて祈りを放つ。俺の手から迸った光は、オルタンシアを包み込み、この場から消失させた。
これでオルタンシアは、ジェルド族のもとに戻れただろう。最後にこれだけはやっておかないといけない気がした。
『あなたは……なるほど……〈尊き者〉とはよく言ったものです』
マーテリアがなんか言っている。
『こんなことを思うのは意味のないことなのでしょうが……もしあなたが、あの時代にいてくれたら……こんな世界にはなっていなかったのかもしれませんね』
だめだ。
このままじゃこの世界からおさらばしてしまう。
そんなことってあるか?
俺は俺なりに頑張ってきただろうが。大切な人もたくさんいる。まだまだ一緒にいたかったのに。
やるべきことも果たせないで、途中退場かよ。こんな中途半端な状態で、なにもかもほっぽりだせってのか。
ありえねぇ。
こんな結末は認めねぇぞ。
『無駄ですよ。あなたは何も知らない。この世界が何で出来ているのか。何が満ちているのか。ただのノームであるあなたには、とこしえに理解できないのです』
マーテリアの言う通り、どれだけ抗おうとしても何の手応えもない。
分かってしまう。
俺は為す術もなく、元の世界に送り返される。
〈妙なる祈り〉の力も失ってしまう。
『せめてもの餞別です。この世界の記憶を、あなたの中から消し去りましょう』
「待て! やめろ! それだけは!」
『記憶を持ったままでは、辛いだけです。女神の慈悲を、甘んじて享受しなさい』
マーテリアの微笑みは、どこまでも純粋な愛を湛えていた。
女神の慈愛は、人にとっては狂気の毒でしかない。
俺はその事実を、痛いほど実感してしまった。
意識が遠のいていく。
遠くで誰かの声が聞こえる。
朦朧とした意識。ぼやけた視界に、ローブの人影がいくつも見える。
あれは、守護隊のみんな? やっぱりついてきてたんだな。でも、もう遅い。
俺にはもう、何もできない。
この世界で愛した女達の顔が、走馬灯のように目の前を過った。
エレノア。
サラ。
アデライト先生。
アイリス。
ウィッキー。
オルタンシア。
『さようなら。アルバレスの御子。願わくば、あなたの未来が輝かしいものであらんことを』
そして俺は、この世界からは完全に消滅した。
『案ずることはありません。すべて元通りなるだけ。あなたは自分の世界に還り、この世界は調和を取り戻す』
「ふざけんな! そんなことさせるかよ!」
俺は〈妙なる祈り〉を発動させようとする。が、そもそもどうすればいいか分からないから対抗策もない。
具体的なイメージが出来なけりゃ、この力は宝の持ち腐れなんだ。
そうか、知っているってのは、そういうことかよ。
『光よ。来たれ』
クリスタルの光に照らされ、俺の全身が輝く。そして、俺の意思に反して身体がふわりと宙に浮いた。
「た、種馬さま……!」
「オルたそっ! くそっ!」
このまま転移させられるのか。それはまずい。なにがまずいって、オルタンシアを一人でこんなところに残すわけにはいかないってことだ。
「こんにゃろー!」
なんとか力を使い、オルタンシアに向けて祈りを放つ。俺の手から迸った光は、オルタンシアを包み込み、この場から消失させた。
これでオルタンシアは、ジェルド族のもとに戻れただろう。最後にこれだけはやっておかないといけない気がした。
『あなたは……なるほど……〈尊き者〉とはよく言ったものです』
マーテリアがなんか言っている。
『こんなことを思うのは意味のないことなのでしょうが……もしあなたが、あの時代にいてくれたら……こんな世界にはなっていなかったのかもしれませんね』
だめだ。
このままじゃこの世界からおさらばしてしまう。
そんなことってあるか?
俺は俺なりに頑張ってきただろうが。大切な人もたくさんいる。まだまだ一緒にいたかったのに。
やるべきことも果たせないで、途中退場かよ。こんな中途半端な状態で、なにもかもほっぽりだせってのか。
ありえねぇ。
こんな結末は認めねぇぞ。
『無駄ですよ。あなたは何も知らない。この世界が何で出来ているのか。何が満ちているのか。ただのノームであるあなたには、とこしえに理解できないのです』
マーテリアの言う通り、どれだけ抗おうとしても何の手応えもない。
分かってしまう。
俺は為す術もなく、元の世界に送り返される。
〈妙なる祈り〉の力も失ってしまう。
『せめてもの餞別です。この世界の記憶を、あなたの中から消し去りましょう』
「待て! やめろ! それだけは!」
『記憶を持ったままでは、辛いだけです。女神の慈悲を、甘んじて享受しなさい』
マーテリアの微笑みは、どこまでも純粋な愛を湛えていた。
女神の慈愛は、人にとっては狂気の毒でしかない。
俺はその事実を、痛いほど実感してしまった。
意識が遠のいていく。
遠くで誰かの声が聞こえる。
朦朧とした意識。ぼやけた視界に、ローブの人影がいくつも見える。
あれは、守護隊のみんな? やっぱりついてきてたんだな。でも、もう遅い。
俺にはもう、何もできない。
この世界で愛した女達の顔が、走馬灯のように目の前を過った。
エレノア。
サラ。
アデライト先生。
アイリス。
ウィッキー。
オルタンシア。
『さようなら。アルバレスの御子。願わくば、あなたの未来が輝かしいものであらんことを』
そして俺は、この世界からは完全に消滅した。
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