374 / 981
豆腐かよ
しおりを挟む
清々しい朝がやってきた。
それなりの疲労を感じるが、とてもすっきりとした目覚めだ。
ここ数日でチャージしていたものを吐き出したおかげかもしれない。
ベッドの上でうんと身体を伸ばす。
隣ですやすやと寝息をたてるオルタンシア。暑いのか、華奢な肢体を晒していたので、そっと布団をかけてやる。
なんて健やかな寝顔だろうか。
まだ幼さの残る中性的な美しさが光っている。
「やっちまったか」
後悔はない。
ちょっとした罪悪感はある。
主に、エレノアとアデライト先生に対して。
まぁ、今更だ。
開き直り続けるしかない。
俺は静かにベッドから出ると、服を着て部屋を出た。
そこでばったり、ラルスと顔を合わせる。
「ああ。ちょうどいい。今起こしにいこうと思っていたところなんだ」
「どうした?」
なにやら慌てている様子だ。
こんな朝から一体何があったのだろう。
「キミを追ってギルドの連中が来てる。チェチェンの仇討ちだと息巻いているぞ」
「まじかよ」
仇討ちってなんだよ。
別に殺してねーわ。
「そいつらは今どこに?」
「宿の前に集まってる」
「わかった。なんとかする」
俺は早足で宿から出た。
宿場町の大通りに、数十人の冒険者が整然と並び立っていた。
なんか軍隊みたいだ。冒険者ってあのモヒカン達みたいなならず者ってイメージだったけど、なんか雰囲気が違う。
周囲の通行人達は何事かと遠巻きに眺めている。
「出てきたぞ! あのガキがロートス・アルバレスだ!」
冒険者の一人が叫ぶ。
凄まじい殺気が一挙に集中する。
うお。
なんて圧力だ。並の人間ならこれだけで気絶するだろうな。
事実、俺についてきたラルスは殺気の余波だけですでに失神していた。
おいおい。
最近いいとこまったくないな。
ラルスも決して弱いわけじゃない。むしろ強者の部類に入る。アイリスも『トリニティ』には一目置いていた感じだったしな。
そのラルスがこの有様だ。
グランオーリスの冒険者は、それだけレベルが高いってわけか。
俺は冒険者達の前に歩み出る。
「こんな朝早くからご苦労なこったな。俺に何か用か?」
更に殺気が強まる。肌がビリビリと痺れ始めた。
最前列にいた一人の若者が一歩前に出てくる。
身の丈ほどもある大剣を背負ったツンツンした金髪の青年だ。黒いバトルスーツがかっこいい。
「俺はサニー・ピース。S級冒険者だ」
びっくりするくらいのイケメンボイスだった。
「そして、キミが再起不能にしたチェチェン老の弟子でもある」
「弟子……すると、後ろの奴らも?」
「そうだ」
サニーは頷く。
「ここに集まった者は、みなチェチェン老の弟子だ」
つまり、弟子達が師匠の仇討ちに来たってことか。
あのじいさん、そんなに人望のある冒険者だったのかよ。
しかし、再起不能ってのはどういうことだ。
「話が読めないな。俺はデコピンしただけだぞ?」
「チェチェン老は神スキル『リュミエール・アッシュ』の恩恵もあって、生まれてこの方敗北を知らなかった。それが、お前のような子どもに完敗したんだ。そのせいで昨夜、彼は引退を表明した」
「クソ雑魚メンタルじゃねぇか」
再起不能って精神的な理由かよ。ちょっとダサすぎるだろ。
いい歳して、たった一回の挫折で折れるんじゃねぇよ。
それなりの疲労を感じるが、とてもすっきりとした目覚めだ。
ここ数日でチャージしていたものを吐き出したおかげかもしれない。
ベッドの上でうんと身体を伸ばす。
隣ですやすやと寝息をたてるオルタンシア。暑いのか、華奢な肢体を晒していたので、そっと布団をかけてやる。
なんて健やかな寝顔だろうか。
まだ幼さの残る中性的な美しさが光っている。
「やっちまったか」
後悔はない。
ちょっとした罪悪感はある。
主に、エレノアとアデライト先生に対して。
まぁ、今更だ。
開き直り続けるしかない。
俺は静かにベッドから出ると、服を着て部屋を出た。
そこでばったり、ラルスと顔を合わせる。
「ああ。ちょうどいい。今起こしにいこうと思っていたところなんだ」
「どうした?」
なにやら慌てている様子だ。
こんな朝から一体何があったのだろう。
「キミを追ってギルドの連中が来てる。チェチェンの仇討ちだと息巻いているぞ」
「まじかよ」
仇討ちってなんだよ。
別に殺してねーわ。
「そいつらは今どこに?」
「宿の前に集まってる」
「わかった。なんとかする」
俺は早足で宿から出た。
宿場町の大通りに、数十人の冒険者が整然と並び立っていた。
なんか軍隊みたいだ。冒険者ってあのモヒカン達みたいなならず者ってイメージだったけど、なんか雰囲気が違う。
周囲の通行人達は何事かと遠巻きに眺めている。
「出てきたぞ! あのガキがロートス・アルバレスだ!」
冒険者の一人が叫ぶ。
凄まじい殺気が一挙に集中する。
うお。
なんて圧力だ。並の人間ならこれだけで気絶するだろうな。
事実、俺についてきたラルスは殺気の余波だけですでに失神していた。
おいおい。
最近いいとこまったくないな。
ラルスも決して弱いわけじゃない。むしろ強者の部類に入る。アイリスも『トリニティ』には一目置いていた感じだったしな。
そのラルスがこの有様だ。
グランオーリスの冒険者は、それだけレベルが高いってわけか。
俺は冒険者達の前に歩み出る。
「こんな朝早くからご苦労なこったな。俺に何か用か?」
更に殺気が強まる。肌がビリビリと痺れ始めた。
最前列にいた一人の若者が一歩前に出てくる。
身の丈ほどもある大剣を背負ったツンツンした金髪の青年だ。黒いバトルスーツがかっこいい。
「俺はサニー・ピース。S級冒険者だ」
びっくりするくらいのイケメンボイスだった。
「そして、キミが再起不能にしたチェチェン老の弟子でもある」
「弟子……すると、後ろの奴らも?」
「そうだ」
サニーは頷く。
「ここに集まった者は、みなチェチェン老の弟子だ」
つまり、弟子達が師匠の仇討ちに来たってことか。
あのじいさん、そんなに人望のある冒険者だったのかよ。
しかし、再起不能ってのはどういうことだ。
「話が読めないな。俺はデコピンしただけだぞ?」
「チェチェン老は神スキル『リュミエール・アッシュ』の恩恵もあって、生まれてこの方敗北を知らなかった。それが、お前のような子どもに完敗したんだ。そのせいで昨夜、彼は引退を表明した」
「クソ雑魚メンタルじゃねぇか」
再起不能って精神的な理由かよ。ちょっとダサすぎるだろ。
いい歳して、たった一回の挫折で折れるんじゃねぇよ。
5
お気に入りに追加
1,202
あなたにおすすめの小説
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる