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かませ犬
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グランオーリスのギルドは、かなり立派な建物だった。
王国のギルド本部も相当大規模ではあったけど、こっちのは質感が違う。
高級感があるんだよなぁ。
グランオーリスでの冒険者の立ち位置がよくわかる次第だな。
「ん? どうしたんだ?」
ラルス達三人は、なんか固くなっていた。なんか緊張しているというかなんというか。
「いやね。俺達は冒険者歴も長いし、王国じゃA級としてそれなりに活躍していた。だけど、ここじゃ新参者だ。だから、ちょっと肩身が狭いんだ」
「ああ。なるほど」
そういうのってどこでもあるよなぁ。
ハドソンは溜息を吐く。
「よそ者ってのも大きいだろうな。同じ新人でも地元民とよそ者じゃ扱いが違うんだ」
「グランオーリスは成果主義じゃないのかよ」
「制度上はねぇ。でも、人の心っていうのはそういうものじゃ縛れないでしょぉ? 地元の人間を応援したくなるのが情ってものじゃない」
「まぁ、確かに」
そうなると、俺が成果を出して認められるには結構な苦労をしそうだ。グランオーリスの冒険者界隈、いや国家全体をあっと驚かせるような実績を打ち立てないといけない。
できるできる。
俺ならできる。
そう信じることから始まるんだ。〈妙なる祈り〉ってのはそういうもんだ。
「いつまでも突っ立ってても仕方ないだろ。さっさと入ろうぜ」
「あっ……」
俺はオルタンシアの手を引いて、開け放されたギルドの大扉をくぐる。
その瞬間。
いくつもの鋭い刃物で串刺しにされたような錯覚に陥った。不規則に並べられたテーブルにつく冒険者達から、一斉に殺気を向けられたらしい。
俺の隣で、オルタンシアが腰を抜かして尻もちをついた。
「大丈夫か?」
「あの……はい……すみません」
「流石は冒険者の国。手厚い歓迎だな」
オルタンシアを立たせる。おぼつかない足腰だ。
ラルス達もギルドに入ってくる。
「ロートスくん。お連れさんは平気かい?」
「御覧の有様だ」
こりゃ外で待っててもらった方がよかったかな。
「しゃあねぇ。俺達でもビビっちまう程の威圧感だ」
「坊やの方はなんともなさそうだけど」
まぁこれくらいの殺気なんかどうってことないわな。
凄腕の冒険者といっても所詮はただの人間だ。
入口でなんやかんやこんなやり取りをしていると、数名の冒険者が肩で風を切りながら歩み寄ってきた。
「てめぇ。見ねぇ気配だな? ここはガキの遊び場じゃねぇぞ。死にたくなけりゃとっとと帰んな」
高めの声で喋ったのは、トゲトゲの肩アーマーをつけ、皮のベストを羽織り、両手をポケットに入れた、モヒカン頭の男だった。
『トリニティ』の人達もそうだけど、フードをかぶっているのによく個人を識別できるよな。顔じゃなくて気配で判断しているからそうなるんだろうけど。
「おい。やめないか。彼らはさっき王都に来たばかりなんだ。冒険者登録の試験を受けるだけだから、放っておいてくれ」
ラルスの言葉に、モヒカン達はひゃははと悪そうな爆笑をあげる。
「こんなガキが登録だぁ? どうせ試験官にぶっ殺されておわりだろうがよぉ」
「そんなことはない」
「おいおいよそ者野郎。俺は厚意で言ってやってんだ。誰だって無駄死にはしたくないだろうがよ。それともなんだ? 思いやりのある俺達の提案に異を唱えるってのかぁ?」
「試験を受けてみなければわからないだろう。彼の強さを勝手に決めつけるな」
「ナマ言ってんじゃねぇぞコラァッ!」
正直、俺は甘く見ていた。
新顔相手にイキり散らす輩なんかどうせザコだろうと高を括っていた。
喧嘩を売っているにもかかわらずポケットに手を入れたままなんて素人のやることだし。
そんな俺の予想に反して、ラルスは一撃で昏倒する。
モヒカンの放った拳が、ラルスの顎を正確に撃ち抜いていた。
王国のギルド本部も相当大規模ではあったけど、こっちのは質感が違う。
高級感があるんだよなぁ。
グランオーリスでの冒険者の立ち位置がよくわかる次第だな。
「ん? どうしたんだ?」
ラルス達三人は、なんか固くなっていた。なんか緊張しているというかなんというか。
「いやね。俺達は冒険者歴も長いし、王国じゃA級としてそれなりに活躍していた。だけど、ここじゃ新参者だ。だから、ちょっと肩身が狭いんだ」
「ああ。なるほど」
そういうのってどこでもあるよなぁ。
ハドソンは溜息を吐く。
「よそ者ってのも大きいだろうな。同じ新人でも地元民とよそ者じゃ扱いが違うんだ」
「グランオーリスは成果主義じゃないのかよ」
「制度上はねぇ。でも、人の心っていうのはそういうものじゃ縛れないでしょぉ? 地元の人間を応援したくなるのが情ってものじゃない」
「まぁ、確かに」
そうなると、俺が成果を出して認められるには結構な苦労をしそうだ。グランオーリスの冒険者界隈、いや国家全体をあっと驚かせるような実績を打ち立てないといけない。
できるできる。
俺ならできる。
そう信じることから始まるんだ。〈妙なる祈り〉ってのはそういうもんだ。
「いつまでも突っ立ってても仕方ないだろ。さっさと入ろうぜ」
「あっ……」
俺はオルタンシアの手を引いて、開け放されたギルドの大扉をくぐる。
その瞬間。
いくつもの鋭い刃物で串刺しにされたような錯覚に陥った。不規則に並べられたテーブルにつく冒険者達から、一斉に殺気を向けられたらしい。
俺の隣で、オルタンシアが腰を抜かして尻もちをついた。
「大丈夫か?」
「あの……はい……すみません」
「流石は冒険者の国。手厚い歓迎だな」
オルタンシアを立たせる。おぼつかない足腰だ。
ラルス達もギルドに入ってくる。
「ロートスくん。お連れさんは平気かい?」
「御覧の有様だ」
こりゃ外で待っててもらった方がよかったかな。
「しゃあねぇ。俺達でもビビっちまう程の威圧感だ」
「坊やの方はなんともなさそうだけど」
まぁこれくらいの殺気なんかどうってことないわな。
凄腕の冒険者といっても所詮はただの人間だ。
入口でなんやかんやこんなやり取りをしていると、数名の冒険者が肩で風を切りながら歩み寄ってきた。
「てめぇ。見ねぇ気配だな? ここはガキの遊び場じゃねぇぞ。死にたくなけりゃとっとと帰んな」
高めの声で喋ったのは、トゲトゲの肩アーマーをつけ、皮のベストを羽織り、両手をポケットに入れた、モヒカン頭の男だった。
『トリニティ』の人達もそうだけど、フードをかぶっているのによく個人を識別できるよな。顔じゃなくて気配で判断しているからそうなるんだろうけど。
「おい。やめないか。彼らはさっき王都に来たばかりなんだ。冒険者登録の試験を受けるだけだから、放っておいてくれ」
ラルスの言葉に、モヒカン達はひゃははと悪そうな爆笑をあげる。
「こんなガキが登録だぁ? どうせ試験官にぶっ殺されておわりだろうがよぉ」
「そんなことはない」
「おいおいよそ者野郎。俺は厚意で言ってやってんだ。誰だって無駄死にはしたくないだろうがよ。それともなんだ? 思いやりのある俺達の提案に異を唱えるってのかぁ?」
「試験を受けてみなければわからないだろう。彼の強さを勝手に決めつけるな」
「ナマ言ってんじゃねぇぞコラァッ!」
正直、俺は甘く見ていた。
新顔相手にイキり散らす輩なんかどうせザコだろうと高を括っていた。
喧嘩を売っているにもかかわらずポケットに手を入れたままなんて素人のやることだし。
そんな俺の予想に反して、ラルスは一撃で昏倒する。
モヒカンの放った拳が、ラルスの顎を正確に撃ち抜いていた。
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