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隣国マッサ・ニャラブ共和国

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「ご主人。マッサ・ニャラブ共和国って、どんな国なのですか?」

 シーラ達の偵察を待つ間、サラがそんなことを聞いてきた。

「マッサ・ニャラブはな。お隣の国だよ」

「それは知ってますけど……」

 いや。
 正直なところ、マッサ・ニャラブがどんな国なのか、あんまりよくわかっていない。
 というのも、王国との交流があんまりない国だからだ。
 隣国であるにも拘らず人の往来がないというのは、ちょっと不思議にも思えるが、そういうものだから仕方ないとしか言いようがない。

「マッサ・ニャラブは、三十年ほど前に興った新興国ですわ」

 俺が黙っていると、アイリスがなにやら喋り始めた。

「気候は温暖で乾燥していて、国土の一部に大きな砂漠があるのが特徴と聞きます」

「へぇ~」

 サラが頷いている。

「そんなことよく知ってるねアイリス」

「たまたま知る機会があっただけですわ」

 アイリスって意外と人間社会の事情とかを知っていたりするけど、一体どこでそんな知識をつけるのだろう。

「なぁアイリス。王国とマッサ・ニャラブって、やっぱ仲悪いのか?」

「はい。決して友好とは言えないと思います」

「なんで?」

「歴史的な背景が関係しているのですわ」

「詳しく教えてくれ。知っている範囲でいい」

「よろこんで」

 アイリスはいつもの上品な微笑みを浮かべ、空色の長い髪を揺らした。

「マッサ・ニャラブに住むジェルド族は、永らく王国の支配を受けてきたのです。もともとは独立していたジェルド族を、王国が侵略し併合したのがおよそ百年前。そこから七十年の月日を経て再び独立したのが三十年前。独立には周辺国からの圧力があったと言われています。そういった経緯から、今まで表立った対立はないけれど友好ともいえない、という関係が続いてきたのですわ」

 なるほどな。

「王国で内乱が起きたせいで、そのバランスが崩れたってことか」

「おそらくは」

 皮肉なもんだな。

「えっと……それじゃあ」

 サラがうーんと唸る。

「マッサ・ニャラブは、王国を滅ぼすつもりなんでしょうか?」

「どうだろうな」

「あり得ない話ではありませんわ。ジェルド族の恨みは大きいでしょうから」

 国とか民族同士の対立ってのは、根深いものがあるからな。
 なんとか戦争行為を止めたいものだけど、向こうの出方次第ではどうにもならない場合もある。
 そんなことを考えていると、シーラ達守護隊が戻ってきた。

「ただいま戻りました」

「ご苦労さん。どうだった? 状況は」

「それが……」

 シーラはなにやら困惑しているようだった。

「ん? どうした?」

「マッサ・ニャラブの軍と、アインアッカ村およびカード村の住民とが、非常に友好的な関係を築いていました」

「なんだって?」

 どういうことだ。それは。
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