316 / 981
力の化身
しおりを挟む
(さぁ……僕の『ホイール・オブ・フォーチュン』の力。改めて思い知ってもらおうか)
歯車の回転が加速する。がっちりとかみ合った歯車が、異音もなくスムーズに動いている。
なにが飛んでくるんだ。ビームか? レーザーか?
油断せず身構えてみても、何かを撃つような気配はない。
「ん?」
大伽藍の床に、魔法陣のようなものが浮かび上がっている。
何だあれは。
その魔法陣の中に、人影が生まれた。それは小柄な少女の姿をしていた。だが、顔がない。のっぺらぼうのようにつるっつるの顔面をしている。ぼろぼろのワンピース。剥き出しの素足には煤のような汚れが付着している。床まで伸びた長い髪がやけに不気味だった。
「またオリジナルのモンスターか? 芸がないな」
(勘違いしてもらったら困る。その子はモンスターじゃない。れっきとした人間さ)
「なに?」
(まぁあれだよ。実験の副産物ってやつかな。子どもを攫ってきて、適当にいじくり回してたら偶然すごいのが出来ちゃってね)
「筋金入りのクズだな、てめぇは」
(悲しいけど、それがその子の運命だったんだよ。運命を弄ったのは僕なんだけどね。ははは)
俺は歯を食いしばる。
邪悪ってのはこいつのような奴をいうんだろうな。
(キミは殺しをひどく嫌っているようだから、こういうのは効くだろう?)
否定できないのが辛いところだ。
「殺さず無力化すればいいだけだろ」
(そうだね。そうしてくれると僕も嬉しい。せっかく手に入れた成果を失うのも忍びないしね)
のっぺらぼうの少女が、深く腰を落とした。
(できればの話だけど)
反応する余裕などなかった。
刹那にして彼我の距離を詰めた少女が、俺の眉間に鋭いつま先を叩きこんでいたからだ。
直撃を受けた俺は無様に吹っ飛ぶ。ものすごい勢いで視界が回る。たぶんこれは、あれだ。首から上が吹き飛び、ぐるぐると宙を舞っている。
マジか。
油断していたわけじゃない。むしろ万全の構えだった。
それなのに、微動だにできなかった。
速すぎる。
(うわぁ……びっくりするくらい強いねその子。怖いなぁ)
てめぇが作ったんだろうが。
立ったままの俺の身体が、少女の蹴りによって爆発四散する。
「ファーストエイド」
自分に医療魔法をかける。すると首の傷が塞がり、完治する。
俺は首だけの状態で床に転がった。
痛い。
(ええぇ……生きてるのかい? それで?)
「うるせぇな。別にいいだろうが。首だけで生きる人間がいても」
(だめでしょ)
変なところで常識的な奴だ。
少女が迫りくる。俺の頭をサッカーボールみたいに蹴り飛ばすつもりだろう。
死ねば蘇生できるが、簡単に死ぬわけにもいかない。少女への対策がないうちに死んでもクソスキルの無駄遣いになる。それに、クリスタルから放たれる琥珀色の光も要警戒だ。
ロートス・アルバレス最大のピンチだな。
だが、ピンチの時こそチャンスと言うし、死中に活を見出すしかない。
「これはちょっと癪だが」
ファルトゥールの像を思い出す。あいつは目からビームを撃っていた。
俺もそれをやろうと思う。
「くらえ」
両目から、凄絶な出力のビームが発射された。少女を脚を狙う。殺さずに機動力を奪うにはこれしかない。
青白いビームは少女のくるぶしあたりをかすめ、後ろのマシなんとか五世の歯車に直撃。派手な光を生み出した。
そして俺の頭部は、少女に蹴られて爆発四散した。
あーあ。また死んだ。
歯車の回転が加速する。がっちりとかみ合った歯車が、異音もなくスムーズに動いている。
なにが飛んでくるんだ。ビームか? レーザーか?
油断せず身構えてみても、何かを撃つような気配はない。
「ん?」
大伽藍の床に、魔法陣のようなものが浮かび上がっている。
何だあれは。
その魔法陣の中に、人影が生まれた。それは小柄な少女の姿をしていた。だが、顔がない。のっぺらぼうのようにつるっつるの顔面をしている。ぼろぼろのワンピース。剥き出しの素足には煤のような汚れが付着している。床まで伸びた長い髪がやけに不気味だった。
「またオリジナルのモンスターか? 芸がないな」
(勘違いしてもらったら困る。その子はモンスターじゃない。れっきとした人間さ)
「なに?」
(まぁあれだよ。実験の副産物ってやつかな。子どもを攫ってきて、適当にいじくり回してたら偶然すごいのが出来ちゃってね)
「筋金入りのクズだな、てめぇは」
(悲しいけど、それがその子の運命だったんだよ。運命を弄ったのは僕なんだけどね。ははは)
俺は歯を食いしばる。
邪悪ってのはこいつのような奴をいうんだろうな。
(キミは殺しをひどく嫌っているようだから、こういうのは効くだろう?)
否定できないのが辛いところだ。
「殺さず無力化すればいいだけだろ」
(そうだね。そうしてくれると僕も嬉しい。せっかく手に入れた成果を失うのも忍びないしね)
のっぺらぼうの少女が、深く腰を落とした。
(できればの話だけど)
反応する余裕などなかった。
刹那にして彼我の距離を詰めた少女が、俺の眉間に鋭いつま先を叩きこんでいたからだ。
直撃を受けた俺は無様に吹っ飛ぶ。ものすごい勢いで視界が回る。たぶんこれは、あれだ。首から上が吹き飛び、ぐるぐると宙を舞っている。
マジか。
油断していたわけじゃない。むしろ万全の構えだった。
それなのに、微動だにできなかった。
速すぎる。
(うわぁ……びっくりするくらい強いねその子。怖いなぁ)
てめぇが作ったんだろうが。
立ったままの俺の身体が、少女の蹴りによって爆発四散する。
「ファーストエイド」
自分に医療魔法をかける。すると首の傷が塞がり、完治する。
俺は首だけの状態で床に転がった。
痛い。
(ええぇ……生きてるのかい? それで?)
「うるせぇな。別にいいだろうが。首だけで生きる人間がいても」
(だめでしょ)
変なところで常識的な奴だ。
少女が迫りくる。俺の頭をサッカーボールみたいに蹴り飛ばすつもりだろう。
死ねば蘇生できるが、簡単に死ぬわけにもいかない。少女への対策がないうちに死んでもクソスキルの無駄遣いになる。それに、クリスタルから放たれる琥珀色の光も要警戒だ。
ロートス・アルバレス最大のピンチだな。
だが、ピンチの時こそチャンスと言うし、死中に活を見出すしかない。
「これはちょっと癪だが」
ファルトゥールの像を思い出す。あいつは目からビームを撃っていた。
俺もそれをやろうと思う。
「くらえ」
両目から、凄絶な出力のビームが発射された。少女を脚を狙う。殺さずに機動力を奪うにはこれしかない。
青白いビームは少女のくるぶしあたりをかすめ、後ろのマシなんとか五世の歯車に直撃。派手な光を生み出した。
そして俺の頭部は、少女に蹴られて爆発四散した。
あーあ。また死んだ。
15
お気に入りに追加
1,202
あなたにおすすめの小説
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる