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輪廻のスパンが短すぎる

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 俺は屋上に『妙なる祈り』を浸透させる。
 こうしちまえば、こいつらはスキルも魔法も使えねぇ。

「無駄なあがきをする。排除しろ」

 指揮官が命令すると、構成員たちは一斉に剣を抜いた。
 あ、やべ。物理攻撃に対しては対策がないぞ。
 こういう時に頼りになるアイリスも今はいない。
 どうするか。

「エレノア」

「うん。あいつらを倒せばいいのね?」

「待て。お前、飛行魔法使えるか」

「苦手だわ。ゆっくり落ちるくらいならできるけど、上昇はできないし。あなたを抱えて飛ぶなんて無理よ」

 じゃあサラを連れていくのも厳しいか。

「よし。ここは俺がなんとかする。お前はみんなに伝えてくれ」

「はぁ? 何言って」

「サラはコッホ城塞に捕まってるってな。そんで、助けに行ってくれ」

 俺はそう言って、エレノアを塔から突き落とす。

「ロートス!」

「頼んだぜ」

 エレノアは驚き眼で地上へ落ちていく。
 そして、俺は数百人の機関構成員に向き直った。

「自暴自棄になったか? アルバレスの御子」

「いいや。別にそういうんじゃねーさ。自暴自棄に見えるってんなら、お前の目が節穴だってことの証明になるぜ」

「無駄口が好きなようだな。まぁいい。処せ」

 号令の直後、俺は無数の剣に貫かれた。
 そして生き返る。

「いやな。ちょっと考えてたことがあったんだわ」

 目の前の構成員をぶん殴り、俺はさらに斬り刻まれて死亡する。

「エンディオーネの加護ってのをさ」

 生き返る。

「蘇生の効果が発動するには、特定の条件を満たさないといけないんだけど、それが今はっきりしたぜ」

 首を斬られ殺される。
 生き返る。

「俺はいつも、運命に立ち向かってた」

 エルフの森で戦った時も。
 マシなんとかとやり合った時も。
 戦争に巻き込まれた時も。
 自分と、仲間の、覆せない死の運命に抗う時、エンディオーネの加護が発動するんだ。

「その度にスキルを失うってのはイマイチぴんとこなかったけど」

 胴体をぶった切られて死亡。
 生き返る。

「なんとなく感じてたことがあるんだよ」

 スキルがエストの加護であり呪いだっていうんなら、スキルを失うことはその呪縛から解き放たれてるってことだ。

 死んだ。
 復活。

 殺される。
 蘇生。

 即死。
 元通り。

「俺ってさ、死ねば死ぬほど強くなるんだよな」

 厳密には、俺の中に宿るアルバレス因子。そして『妙なる祈り』の力が、解放されていくんだ。

「だからさ。やめといたほうがいいぜ。俺を殺すの」

 どれくらい死んだだろうか。
 この数十秒で百回は死んだ。
 いくら殺しても即座に生き返る俺に、構成員たちは恐れ慄いているようだった。

「化け物……!」

「なんだこいつは!」

「聞いてた話と違うぞ!」

 口々に言い、離れていく構成員たち。

「ええい! 何をやっている! 御子のスキルは無限ではない。いずれ弾切れになる! もっともっと殺せ!」

 指揮官が叫ぶが、もう手を出す奴はいない。

「賢い判断だ」

 俺はにっこりと笑ってみた。
 サイコパス感を演出したいと思ったのだ。

「もう遅いけどな」

 先程までとは比べ物にならないくらいまで解放された俺の力。
 見せつける時が来たようだ。

 やっと、チートで無双する時が来たってことだな。
 完全に、そういうことだ。
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