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イキりたい

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 目を開いた時、眼前に槍の切っ先が迫っていた。
 だが、それがどうした。
 俺はチートを手に入れた。こんなものはどうということはない。

 直後、俺の顔面は槍に貫かれて爆散した。
 やっぱり死ぬのかよ。
 まぁ生き返るんですけどね。

「おりゃ」

 槍を放ち終えたルージュの胴体を、思い切り蹴り飛ばす。
 死に体だったルージュはバランスを崩して飛び退いた。

「どないなってんねや。何回殺したら死ぬねん。ほんま鬱陶しいわぁ……!」

「悪いな。俺もあんまりよくわかってないんだわ」

 ルージュの額に青筋が浮かぶ。
 とりあえず俺は部屋を確認することにした。

 エレノアに襲いかかった奴らは、フレイムボルト系の魔法で吹き飛ばされている。
 アイリスは、いつも通り敵に対して殴る蹴るなどの暴行を加えていた。

「な、なんやて……?」

 ルージュが驚いている。

「これは……一体どうなっている……」

 静観を決め込んでいたエルゲンバッハも眉をひそめていた。
 おいおい。

「何をそんなに驚くことがある? ん?」

 俺の煽りを受け、ルージュが舌打ちを漏らす。
 口を開いたのはエルゲンバッハだった。

「我々は万全を期してここに来た。物理戦闘に秀でたそのスライムには、『リリィ・フォース』のオー・ルージュを。『大魔導士』対策として、魔法に有利なスキルを持つメンバーで隊を構成した。支援スキルも十分に用意したのだ」

 なるほど。
 油断は一切しなかったってことか。それはすごい。

「で? 俺への対策は? なんにもしなかったのか?」

「フン……数だけのクソスキルしか持たぬ『無職』ごとき、取るに足らぬ。プロジェクト・アルバレスだかなんだか知らんが、戦力にならなければ脅威ではない。警戒すべきは貴殿本人ではなく、貴殿が抱える手駒でありますからな」

 ま。そんな事だろうと思ったぜ。

「杜撰だな。どうしてそこまで周到な準備をしてんのに、俺だけノーマークなんだよ。なんか隠された力があるとか思わなかったのか?」

「不死身のことを言っているのであればまったくの的外れ。驚くべき能力ではありますが、それだけでは我らの障害にはなりませぬ」

 そうかそうか。なるほど。

「残念だったな。お前らは今までの記録から完璧な作戦を考案したつもりだったかもしれないが……俺に秘められた真の力には思い至らなかったわけだ」

「なにをゴチャゴチャ言うとんねん。どうせこいつらには女しかロクな戦力はおらん。わての勝ちは、揺るがへんのや!」

 再びルージュが動く。
 バカめ。

「アイリス。やれ」

「はい」

 今回はアイコンタクトすらない。アイリスには声色だけですべてが伝わる。

「何回やっても同じや! わての『リリィ・フォース』がある限り――」

 言い終わるより早く、アイリスの蹴りがルージュのどてっ腹に突き刺さった。
 ルージュは痛みを口にするまでもなく、部屋の壁を突き破ってどこかへ吹っ飛んでいってしまった。

 えげつない。

「ルージュ姉さん!」

「な、なんで!」

「姉さんの『リリィ・フォース』が……何が起こったんや!」

 敵はみんな驚愕を表している。
 まぁ、そうなるわな。

「どういうことだ」

 これにはエルゲンバッハも今日一番の驚きを見せていた。

「簡単なことだよ」

 俺は今、自分でもわかるくらいのドヤ顔を浮かべているだろう。

「俺は、神を超越したんだ」

 我ながら、死ぬほど痛々しい発言だぜ。
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