上 下
241 / 984

ちゃんと仕事して

しおりを挟む
「ははっ。まぁそう驚くこたぁねぇ。末裔っつっても、神族の血はほとんど残ってねぇ。元を辿ればってだけだ。その証拠に、ほら、アタシにはスキルがあるだろ?」

 呆気にとられていた俺に、マホさんが苦笑する。
 その証拠にとか言われても、何のことかわからない。神族はスキルを持っていないということだろうか。

「神族の時代。アタシら末裔は神代と呼んでるが、その時代は争いもなく、神族を中心にあらゆる種族が平和に暮らしていたらしい。だが、ある時、突然湧いて出たように人間を名乗る種族が現れた」

 突然湧いて出たように?

「そんなことありえるんですか?」

「さぁな。アタシにもわからねぇ。言い伝えによれば、人間は神族とほとんど同じ姿で、高い知性を持ってたって話だ」

「高い知性……それから、どうなったんです」

「人間は、他の種族を威圧し、この世界の頂点に立とうとしたんだ」

「なんだそりゃ」

 意味が分からない。いや、俺も人間だからそんなこと言ってられないんだろうけど、やっぱり意味が分からない。

「順を追って説明するとだな。まず人間らは自分たちが現れた土地に国をおったてて、そこから周囲の種族達を攻撃、支配していったみてぇなんだ」

「侵略ってことですか」

「そういうこった」

「どうしてそんなこと」

「そりゃ、今の人間を見りゃわかるだろ。どいつもこいつも自分の国のことしか考えてねぇ。他の国や種族の事なんて、養分にしか思ってねぇだろ?」

 確かに。
 あくなき欲望は、人間の業ともいえる。

「人間ってのはそういう生き物なのさ。他者を虐げ、甘い蜜を吸うことに人生をかけるんだ」

「否定はしませんけどね……」

 元の世界でも、そういう人間は多かった。心から他人のことを思える人間なんて、俺の周りにも両手で数えるほどしかいなかったような気がする。

「まぁ、人間達が好き勝手しやがった結果、神族が種族総出で対処したんだとさ」

「対処って?」

「最高神エストの創造だ」

 ここでエストが出てくるのか。

「神族は、人間に運命っつー枷をつけることで制御しようとした。それまで限界を知らなかった人間の行動に、制限をかけたのさ」

「神族にはそんな力が?」

「ああ。神族は、みんなそれぞれの異能を持っていたらしい。神の権能ってやつだな」

「かっこいい」

「はは。確かにな」

 マホさんは頬杖をつく。

「ま、そのせいで神族は力を使い果たし、ほぼほぼ滅びちまったのさ。生き残ったのは僅か、今じゃ神族の血を受け継ぐのは十人いるかいないかってとこだな。血を色濃く受け継いでいるとなると、三人いるかどうか」

「やばいですね」

「ああ。やべぇな」

 しかし。ますますわからないな。

「どうしてマホさんはヘッケラー機関に?」

「……アタシら神族の末裔は、人間がまた馬鹿をやらないように、コントロールする使命があるんだよ。だから、世界的に力をもつ国家や組織に紛れこんでる」

「つまり、スパイだと」

「似たようなもんだな」

 なるほど。
 ヘッケラー機関をはじめ、世界に対して影響力のある団体の活動を制御していると。
 マホさんには悪いけど、正直、機能しているとは思えないなぁ。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...