207 / 985
四次元ポケなんとか
しおりを挟む
それからどうした。
十数分の後、俺達はカード村からほど離れた小川のほとりに辿り着いていた。
馬車を下ろし、俺達を降ろすと、アイリスはドラゴンから人間の姿へと戻る。服も元通りになっているあたり、魔力的なサムシングが働いているのだろう。
それはともかく、馬車はえらく静かである。普通、こんなことになったら中の人間が騒いでもよさそうなものだが。
「誰も乗ってないってことはないよな」
「確かめてみるっすか」
ウィッキーが怖いもの知らずを体現したかのような勢いで馬車の扉を開く。
「おっと」
その瞬間、車内から放たれた攻撃魔法がウィッキーに直撃した。あれはたぶんフレイムボルトだろう。
ウィッキーは危なげなくバリアを張って防いでいた。
「見え見えの奇襲っすね。そんなのに当たるわけないっす」
ウィッキーすごい。
「くそっ」
馬車の窓から逃げ出そうとしているのは、やはりというべきかマクマホンだった。
「アイリス、捕まえろ」
「お任せあれですわ」
窓から転がり落ちたマクマホンは、あっけなくアイリスに捕縛されてしまう。
「はなせ! 小娘が!」
「やめとけ。無駄な抵抗だぞ。アイリスに捕まったら天地がひっくり返っても逃げられないぜ」
「なにを……! 帝国の外交官である私にこのような仕打ち……いくらロートス様とはいえゆるされることではない! 国際問題になりますぞ!」
「しらん」
なにやら喚いているマクマホンはとりあえず放っておこう。
「ウィッキー。中にサラはいるか」
「いや……なんもないっすね」
「なんだと?」
バカでかい馬車だから、てっきりあのクリスタルごと載っていると思っていたのに。
「おいマクマホンのおっさん。サラはどこだ」
俺の問いに、マクマホンの顔が引きつる。
「そんなもの――」
「答えなくていいわ」
声を遮ったのはルーチェだった。
「彼の首にかかったペンダントがあるでしょ。それ、取って」
ルーチェの指示に、アイリスが従う。マクマホンの首から毟り取ったペンダントを、アイリスはルーチェへと投げ渡した。
「どうぞ、メイド長」
「ありがとアイリス」
ペンダントを受け取ったルーチェは、それをじっくりと検めてから、俺の横まで来て見せくれた。
「これはね、マジックアイテムの一種だよ」
「マジックアイテムとな」
「帝国ではマジクアイテムの作成が盛んなの。魔法産業に関しては世界一の技術をもってる」
なるほど。それが帝国が大国である所以かもしれないな。
「そのペンダントは、何に使うんだ?」
「アイテムボックス。魔法で作り出した疑似空間に、物体を収納できるんだよ」
ああ。いわゆる四次元ポケなんとか的なやつか。それは便利すぎるな。
「すげぇな。マジックアイテムがありゃ、スキルいらずじゃねぇか」
「スキル至上主義を否定する帝国らしい技術っすね」
「たしかにな」
ウィッキーも興味津々なようだ。
「じゃあ、あれか。その中にサラが収納されてるってことなのか」
ルーチェは頷く。
これは腹が立つ。サラをアイテム扱いしやがるとか、やっぱりマクマホンの野郎はいけすかねぇぜ。
「早く出してやってくれ」
「まかせて」
ルーチェがペンダントの中心に指を置くと、そこから強めの光が漏れる。
そして、目の前に巨大なクリスタルがどこからともなく現れた。
サラが全裸で封じられている、あのクリスタルであった。
十数分の後、俺達はカード村からほど離れた小川のほとりに辿り着いていた。
馬車を下ろし、俺達を降ろすと、アイリスはドラゴンから人間の姿へと戻る。服も元通りになっているあたり、魔力的なサムシングが働いているのだろう。
それはともかく、馬車はえらく静かである。普通、こんなことになったら中の人間が騒いでもよさそうなものだが。
「誰も乗ってないってことはないよな」
「確かめてみるっすか」
ウィッキーが怖いもの知らずを体現したかのような勢いで馬車の扉を開く。
「おっと」
その瞬間、車内から放たれた攻撃魔法がウィッキーに直撃した。あれはたぶんフレイムボルトだろう。
ウィッキーは危なげなくバリアを張って防いでいた。
「見え見えの奇襲っすね。そんなのに当たるわけないっす」
ウィッキーすごい。
「くそっ」
馬車の窓から逃げ出そうとしているのは、やはりというべきかマクマホンだった。
「アイリス、捕まえろ」
「お任せあれですわ」
窓から転がり落ちたマクマホンは、あっけなくアイリスに捕縛されてしまう。
「はなせ! 小娘が!」
「やめとけ。無駄な抵抗だぞ。アイリスに捕まったら天地がひっくり返っても逃げられないぜ」
「なにを……! 帝国の外交官である私にこのような仕打ち……いくらロートス様とはいえゆるされることではない! 国際問題になりますぞ!」
「しらん」
なにやら喚いているマクマホンはとりあえず放っておこう。
「ウィッキー。中にサラはいるか」
「いや……なんもないっすね」
「なんだと?」
バカでかい馬車だから、てっきりあのクリスタルごと載っていると思っていたのに。
「おいマクマホンのおっさん。サラはどこだ」
俺の問いに、マクマホンの顔が引きつる。
「そんなもの――」
「答えなくていいわ」
声を遮ったのはルーチェだった。
「彼の首にかかったペンダントがあるでしょ。それ、取って」
ルーチェの指示に、アイリスが従う。マクマホンの首から毟り取ったペンダントを、アイリスはルーチェへと投げ渡した。
「どうぞ、メイド長」
「ありがとアイリス」
ペンダントを受け取ったルーチェは、それをじっくりと検めてから、俺の横まで来て見せくれた。
「これはね、マジックアイテムの一種だよ」
「マジックアイテムとな」
「帝国ではマジクアイテムの作成が盛んなの。魔法産業に関しては世界一の技術をもってる」
なるほど。それが帝国が大国である所以かもしれないな。
「そのペンダントは、何に使うんだ?」
「アイテムボックス。魔法で作り出した疑似空間に、物体を収納できるんだよ」
ああ。いわゆる四次元ポケなんとか的なやつか。それは便利すぎるな。
「すげぇな。マジックアイテムがありゃ、スキルいらずじゃねぇか」
「スキル至上主義を否定する帝国らしい技術っすね」
「たしかにな」
ウィッキーも興味津々なようだ。
「じゃあ、あれか。その中にサラが収納されてるってことなのか」
ルーチェは頷く。
これは腹が立つ。サラをアイテム扱いしやがるとか、やっぱりマクマホンの野郎はいけすかねぇぜ。
「早く出してやってくれ」
「まかせて」
ルーチェがペンダントの中心に指を置くと、そこから強めの光が漏れる。
そして、目の前に巨大なクリスタルがどこからともなく現れた。
サラが全裸で封じられている、あのクリスタルであった。
35
お気に入りに追加
1,211
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる