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ややこしいやつ
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「どういうことだ」
ヘッケラー機関を倒せば世界が破滅するだと? えらくぶっとんだ理論だな。
マクマホンは顎をさすっている。
「ふむ。それについては、ソルヴェルーチェ嬢の方がお詳しいのではありませんかな?」
話を振られたルーチェは、ぴくりと肩を震わせる。
「そうなのか?」
「まぁ……」
なにやら煮え切らない感じだ。
「彼女の生家であるウル・ダーナ家は、帝国でも有数の名門貴族であります故、この世界の真実についてもよくご存じでしょう」
この世界の真実? またそれかよ。
真実ってのは一体いくつくらいあるんだ。
というか。
「ルーチェって、帝国貴族だったのか」
「……うん。黙っててごめんなさい」
「いや、別にそれはどうでもいい。国籍なんか問題じゃないからな」
ルーチェの顔がはっとする。
マクマホンが愉快そうに笑った。
「王国生まれにも拘らず帝国貴族に嫌悪感を抱かれないのは、流石という他ありませんな」
「そりゃどうも」
王国と帝国の歴史に何があったのかは知らないが、こちとら世間知らずもいいところなんでね。
それに俺の生まれは王国じゃなく、日本だからな。精神的には。
「それで、この世界の真実ってのはどういうことなんだ」
「ロートスくんは、どうしてスキルなんてものが存在するか、知ってる?」
「あれだろ、最高神エストが人間の運命を補強するために与えてるんだろ?」
「そう。でも私が言ってるのは、何のために、じゃなくて、どうやってスキルというものが生まれたかってことなの」
えーっと。よくわからない。
マクマホンが口を開く。
「もともとこの世界にはスキルなどという便利なものは存在しなかったのです。最古のスキルが生まれたのは、今からおよそ五百年前」
「けっこう最近なんだな」
「人類の歴史から見れば、仰る通りですな」
なるほどな。
ルーチェが言っているのは、五百年前にスキルが発生した理由ってわけか。
「私の家に伝わる話によると、当時まだまだ小さかったヘッケラー機関は、その勢力を強めるためにこの地域に工作員を放ったの。当時は王国じゃなくて、また別の国があったんだけど」
「工作員?」
「うん。彼らの役目は、人々に共通の認識を広く深く浸透させることだった。その認識っていうのが、能力至上主義なの」
能力。それがスキルに繋がるってのか。
「能力至上主義が社会通念になった時、一斉にスキルを持った人たちが生まれ始めた」
「最高神エストの仕業か」
ルーチェは頷く。
「能力によって人の価値が決まる社会。つまり、能力を身につける運命の人は順風満帆な人生を歩み、そうじゃない人には困難な一生が待っている」
なるほどな。
神とは運命を補強するはたらきのことだ。
能力至上主義の中でそれを果たすには、スキルというわかりやすい項目があった方が便利ってわけだ。
「だんだん話が読めてきたぜ。あれだろ、ヘッケラー機関は最高神エストを上手く利用して、都合のいい社会を作り出したんだな」
「ご明察ですロートス様」
マクマホンがいらない拍手を送ってくる。
「機関を潰せば、スキルという概念が消滅しかねない。もしそうなればこの世界は大きな混乱に包まれるでしょう。我々はスキル至上主義を排したいと思ってはいますが、スキルそのものの消滅は望んでおりません」
まぁ、便利なもんだもんな。
いくらクソスキルとはいっても、ないよりはあった方がいい。
しみじみそう思うぜ。
しかし。今の話を聞くなら、スキルが存在する以上スキル至上主義からの脱却は難しい気がするけどな。
ヘッケラー機関を倒せば世界が破滅するだと? えらくぶっとんだ理論だな。
マクマホンは顎をさすっている。
「ふむ。それについては、ソルヴェルーチェ嬢の方がお詳しいのではありませんかな?」
話を振られたルーチェは、ぴくりと肩を震わせる。
「そうなのか?」
「まぁ……」
なにやら煮え切らない感じだ。
「彼女の生家であるウル・ダーナ家は、帝国でも有数の名門貴族であります故、この世界の真実についてもよくご存じでしょう」
この世界の真実? またそれかよ。
真実ってのは一体いくつくらいあるんだ。
というか。
「ルーチェって、帝国貴族だったのか」
「……うん。黙っててごめんなさい」
「いや、別にそれはどうでもいい。国籍なんか問題じゃないからな」
ルーチェの顔がはっとする。
マクマホンが愉快そうに笑った。
「王国生まれにも拘らず帝国貴族に嫌悪感を抱かれないのは、流石という他ありませんな」
「そりゃどうも」
王国と帝国の歴史に何があったのかは知らないが、こちとら世間知らずもいいところなんでね。
それに俺の生まれは王国じゃなく、日本だからな。精神的には。
「それで、この世界の真実ってのはどういうことなんだ」
「ロートスくんは、どうしてスキルなんてものが存在するか、知ってる?」
「あれだろ、最高神エストが人間の運命を補強するために与えてるんだろ?」
「そう。でも私が言ってるのは、何のために、じゃなくて、どうやってスキルというものが生まれたかってことなの」
えーっと。よくわからない。
マクマホンが口を開く。
「もともとこの世界にはスキルなどという便利なものは存在しなかったのです。最古のスキルが生まれたのは、今からおよそ五百年前」
「けっこう最近なんだな」
「人類の歴史から見れば、仰る通りですな」
なるほどな。
ルーチェが言っているのは、五百年前にスキルが発生した理由ってわけか。
「私の家に伝わる話によると、当時まだまだ小さかったヘッケラー機関は、その勢力を強めるためにこの地域に工作員を放ったの。当時は王国じゃなくて、また別の国があったんだけど」
「工作員?」
「うん。彼らの役目は、人々に共通の認識を広く深く浸透させることだった。その認識っていうのが、能力至上主義なの」
能力。それがスキルに繋がるってのか。
「能力至上主義が社会通念になった時、一斉にスキルを持った人たちが生まれ始めた」
「最高神エストの仕業か」
ルーチェは頷く。
「能力によって人の価値が決まる社会。つまり、能力を身につける運命の人は順風満帆な人生を歩み、そうじゃない人には困難な一生が待っている」
なるほどな。
神とは運命を補強するはたらきのことだ。
能力至上主義の中でそれを果たすには、スキルというわかりやすい項目があった方が便利ってわけだ。
「だんだん話が読めてきたぜ。あれだろ、ヘッケラー機関は最高神エストを上手く利用して、都合のいい社会を作り出したんだな」
「ご明察ですロートス様」
マクマホンがいらない拍手を送ってくる。
「機関を潰せば、スキルという概念が消滅しかねない。もしそうなればこの世界は大きな混乱に包まれるでしょう。我々はスキル至上主義を排したいと思ってはいますが、スキルそのものの消滅は望んでおりません」
まぁ、便利なもんだもんな。
いくらクソスキルとはいっても、ないよりはあった方がいい。
しみじみそう思うぜ。
しかし。今の話を聞くなら、スキルが存在する以上スキル至上主義からの脱却は難しい気がするけどな。
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