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ヘッケラー機関はかなり鬼畜やん

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 父と母は互いに目線を交わすと、俺の対面に静かに腰を下ろした。

「今、どこまで知っている?」

 二人とも特に驚いた様子はない。この展開は予想できていたのだろうか。

「俺が運命を操作されて生まれてきたこと。そのせいで『無職』になったこと。あんたらがヘッケラー機関の手先だってこと。俺が失敗作だってこと。あとは、エレノアも同じように運命を操作されてるってことくらいか」

 大体こんな感じか。

「では、我々の知っている限りを教えよう」

 いつになく真面目な顔の両親。

「最初に言っておくけど。私達は計画初期の段階までしか把握していないわ。最重要機密は、上層部に独占されているから」

「ああ。それでもいい」

 家の中は静かだった。

「まず……そうだな。父さんと母さんは、お前の本当の親ではない」

「だろうな」

「私達は子どもを作れない体質でね。だから、養子を取る感覚でプロジェクト・アルバレスに参加したの」

 そんな理由で? まぁ、気持ちは理解できなくもないが。

「じゃあ俺の本当の親は誰なんだ」

「お前の出生は明らかではないんだ。ある日、機関のトップから授かったのが生まれたばかりのお前だった」

「あいつか……マシなんとか五世ってやつだろ?」

「知ってるのか」

「一回やり合ったよ。尻尾を巻いて逃げたけどな」

 さすがに驚いたのが、両親は目を大きくしていた。

「マシーネン・ピストーレ五世と対峙して生きているだと……?」

「そんなの、ありえないわ」

 そう言われてもな。生きてるんだから仕方ない。

「それはいい。肝心なのはプロジェクトの中身だ」

「ああ……そうだな」

 具体的に聞いた方がいいか。

「俺の運命は、どういう風に弄られたんだ? どうやったらクソスキルばっかり貰える運命になるんだよ」

「べつにクソスキルを与えようと思って操作したわけじゃない。お前とエレノアちゃんは同じように運命を改変されているんだ」

「エレノアと、同じ?」

 そんな馬鹿な。
 だったらなんで俺とあいつとの間で、貰えるスキルに天と地ほどの差があるんだ。

「母さんたちが聞いた話によるとね。あなた達は、どんなに頑張っても人生が思うようにいかないって、そういう風に運命を変えられているの」

「は?」

 なんだそれは。

「呪いだろうが。そんなの……!」

 俺はテーブルをぶっ叩く。
 母がびくりと肩を震わせた。

「ロートス。怒りはもっともだ。機関の中でも反対意見は多かった。だがマシーネン・ピストーレ五世は、この実験を断行したんだ。この辺境の村に、計画の拠点を移してな」

「何のためにそんなことを」

「最強の人間をつくるため。そして、神を超越するためだ」

 ふざけた理由だ。

「お前とエレノアちゃんのスキルがまったくの別物になったのは、想定外の事態だった。仮説では、同じように神スキルを手に入れるはずだったんだ」

「でも俺は『無職』だ。だから失敗作だってのか」

「……そういうことだ」

 理解不能だ。人の人生を弄びやがって。

「お前たちの元々の運命は、大きな苦難を乗り越えていくものだった。その中で成長し、成功を収める人生だった。それを、努力しようが工夫しようが上手くいかないように調整した。そうすれば、世界の修正力、いわゆる神のはたらきにより、さらに強力なスキルが得られると仮定した」

 そうか。

 もともとただのロートス・アルバレスとして生まれるはずだった赤子に、異世界転生を果たした俺が割り込んだ。
 そのせいで、運命がぐちゃぐちゃになったってことか。
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