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帰郷
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案の定、墜落してぐしゃぐしゃになった俺の体は瞬時に元通りになった。
「生きた心地がしないぜ。まったく……」
独り言を言いながら、立ち上がって周囲を見渡す。
どうやら森の中のようだ。真っ暗で何も見えない。
自分が今どこにいるかもわからない。
なんか急に恐ろしくなってきたな。
「これはやばい」
こんな時は常套句しか言えない。
でも大丈夫。こんな時に備えてアデライト先生が念話灯を持たせてくれているのだ。
俺は懐を探る。
「あれ」
上着を探る。ズボンを探る。下着の中も。
「え……うそだろ?」
ない。念話灯がない。
アカネに貰ったやつもない。
落下の際にどこかに行ってしまったのか。
「どうしろと?」
こんな真っ暗闇の森の中では、何もできない。
とりあえず『ちょっとした光』を発動するが、近くを照らすだけでそこまで視界が良くなるわけでもない。ないよりマシって感じだ。
「朝まで動かず待つか?」
だが、そんな悠長なことは言っていられない。一刻も早くサラのところに行き、戦争を止めないといけないんだ。
それに、アイリスやウィッキー、シーラ達守護隊のことも気になる。
「考えても仕方ない」
とりあえず適当に歩くか。まっすぐ進めば森を抜けられるだろう。
こういう切り替えの速さが、俺の長所だと思うぜ。
そう思わなきゃやってられない。
けれど今回ばかりは、俺の行き当たりばったり戦法が功を奏したようだ。
歩き出してからまもなく森を出ることに成功し、さらには村を発見することができた。
やったぜ。運がいい。
「あれ……この村って」
村に近づいてくると、なにやら見覚えのある風景が見えてくる。
忘れもしない。俺がロートス・アルバレスとして生を受けた村。
「アインアッカ村……そうか、もうここまで戻ってきてたのか」
二、三か月ぶりくらいなのに、やけに懐かしく感じる。
この村を出てから、密度の濃い毎日を過ごしていたからかな。
俺は吸い寄せられるように村の門をくぐり、生家へと足を運ぶ。村の中には見回り役の男達が松明片手に歩き回っており、もちろん俺はその中の一人に見つかった。
「おいお前。こんな時間に何をしている」
聞き慣れた声。
小走りで俺の前までやってきたのは、なんと俺の父親だった。
「おう、久しぶり」
「お前……ロートスか! どうしてこんなところに。魔法学園はどうした」
「わけあって戻ってきた」
「なにぃ? なんだ? そのわけってのは」
「カード村でなんか起こってるって噂、ない?」
父親は首を傾げる。
「いや、何も聞いていないが」
「そっか。ならいい」
やはりまだ広く知れ渡ってはいないようだ。一部の人間しか知らされていないのだから当然か。近くの村ならなにか異変に気付いているとも思ったが、亜人の連中もそう簡単に見つかったりしないのだろう。
「よくはないぞ。『無職』のくせに村に戻ってくるとは、なにを考えているんだ!」
出たよ。いいだろ別に『無職』でもよ。
「くそ。とにかく家に戻るぞ。母さんも驚くだろうな。せっかく魔法学園に入れてやった『無職』が戻ってきて」
「学園を辞めたわけじゃねぇよ。そもそも今は連休中だ」
「連休? ふん、学生の分際で休みなどあるのか。父さんには休みなんかないぞ。来る日も来る日も木を切り倒している。夜はこうして村の警備をしているんだ」
「知ってるよ。ずっとそうだったもんな」
「ふん」
家に帰ると、父親が寝ている母を起こす。
俺の顔を見た母は、幽霊でも見たような表情をして顔を覆った。
「ああ! 神よ! 最高神エストよ! 『無職』が! 我が家に『無職』が帰ってきた!」
それは喜んでいるのか悲しんでいるのかどっちだ。
「あのさ。別に『無職』を嘆くのはいいんだよ。ちょっと話をさせてくれ」
俺はテーブルにつき、腕を組む。
「なんだその態度は。それが親に物を頼む態度か!」
真夜中にも拘わらず怒鳴り声をあげる父。
「やっぱり『無職』は心根も腐っているんだわ……能力だけじゃなく、心まで『無職』なんて」
母は相変わらず嘆いている。
もうどうでもいいわこの感じ。
俺はテーブルを叩き、剣のように鋭い声を振るう。
「ヘッケラー機関の、プロジェクト・アルバレスについて教えてくれ」
直後、両親は無表情になった。
「生きた心地がしないぜ。まったく……」
独り言を言いながら、立ち上がって周囲を見渡す。
どうやら森の中のようだ。真っ暗で何も見えない。
自分が今どこにいるかもわからない。
なんか急に恐ろしくなってきたな。
「これはやばい」
こんな時は常套句しか言えない。
でも大丈夫。こんな時に備えてアデライト先生が念話灯を持たせてくれているのだ。
俺は懐を探る。
「あれ」
上着を探る。ズボンを探る。下着の中も。
「え……うそだろ?」
ない。念話灯がない。
アカネに貰ったやつもない。
落下の際にどこかに行ってしまったのか。
「どうしろと?」
こんな真っ暗闇の森の中では、何もできない。
とりあえず『ちょっとした光』を発動するが、近くを照らすだけでそこまで視界が良くなるわけでもない。ないよりマシって感じだ。
「朝まで動かず待つか?」
だが、そんな悠長なことは言っていられない。一刻も早くサラのところに行き、戦争を止めないといけないんだ。
それに、アイリスやウィッキー、シーラ達守護隊のことも気になる。
「考えても仕方ない」
とりあえず適当に歩くか。まっすぐ進めば森を抜けられるだろう。
こういう切り替えの速さが、俺の長所だと思うぜ。
そう思わなきゃやってられない。
けれど今回ばかりは、俺の行き当たりばったり戦法が功を奏したようだ。
歩き出してからまもなく森を出ることに成功し、さらには村を発見することができた。
やったぜ。運がいい。
「あれ……この村って」
村に近づいてくると、なにやら見覚えのある風景が見えてくる。
忘れもしない。俺がロートス・アルバレスとして生を受けた村。
「アインアッカ村……そうか、もうここまで戻ってきてたのか」
二、三か月ぶりくらいなのに、やけに懐かしく感じる。
この村を出てから、密度の濃い毎日を過ごしていたからかな。
俺は吸い寄せられるように村の門をくぐり、生家へと足を運ぶ。村の中には見回り役の男達が松明片手に歩き回っており、もちろん俺はその中の一人に見つかった。
「おいお前。こんな時間に何をしている」
聞き慣れた声。
小走りで俺の前までやってきたのは、なんと俺の父親だった。
「おう、久しぶり」
「お前……ロートスか! どうしてこんなところに。魔法学園はどうした」
「わけあって戻ってきた」
「なにぃ? なんだ? そのわけってのは」
「カード村でなんか起こってるって噂、ない?」
父親は首を傾げる。
「いや、何も聞いていないが」
「そっか。ならいい」
やはりまだ広く知れ渡ってはいないようだ。一部の人間しか知らされていないのだから当然か。近くの村ならなにか異変に気付いているとも思ったが、亜人の連中もそう簡単に見つかったりしないのだろう。
「よくはないぞ。『無職』のくせに村に戻ってくるとは、なにを考えているんだ!」
出たよ。いいだろ別に『無職』でもよ。
「くそ。とにかく家に戻るぞ。母さんも驚くだろうな。せっかく魔法学園に入れてやった『無職』が戻ってきて」
「学園を辞めたわけじゃねぇよ。そもそも今は連休中だ」
「連休? ふん、学生の分際で休みなどあるのか。父さんには休みなんかないぞ。来る日も来る日も木を切り倒している。夜はこうして村の警備をしているんだ」
「知ってるよ。ずっとそうだったもんな」
「ふん」
家に帰ると、父親が寝ている母を起こす。
俺の顔を見た母は、幽霊でも見たような表情をして顔を覆った。
「ああ! 神よ! 最高神エストよ! 『無職』が! 我が家に『無職』が帰ってきた!」
それは喜んでいるのか悲しんでいるのかどっちだ。
「あのさ。別に『無職』を嘆くのはいいんだよ。ちょっと話をさせてくれ」
俺はテーブルにつき、腕を組む。
「なんだその態度は。それが親に物を頼む態度か!」
真夜中にも拘わらず怒鳴り声をあげる父。
「やっぱり『無職』は心根も腐っているんだわ……能力だけじゃなく、心まで『無職』なんて」
母は相変わらず嘆いている。
もうどうでもいいわこの感じ。
俺はテーブルを叩き、剣のように鋭い声を振るう。
「ヘッケラー機関の、プロジェクト・アルバレスについて教えてくれ」
直後、両親は無表情になった。
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