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命を奪う

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 ギルドにやってきた俺達を待っていたのは百人以上もの冒険者達。
 そして、ギルド長のじじいだった。

「来たか。愚かな少年よ」

 ギルド長は大階段の上に陣取り、俺達を見下ろしている。

「出たなクソじじい……!」

 すでに俺達は包囲されていた。前にも後ろにも逃げ場はない。

「まったく……大人しく殺されていれば苦しまずに済んだものを。ハーフエルフのようなゴミなどに味方するからこのようなことになる。ワシ的にも、気の毒に過ぎるわ」

「てめぇ。言ってることが違うぞ。人間とエルフの架け橋になってほしいって言ってたじゃねぇか」

 俺の言葉に、ギルド長は馬鹿笑いをあげる。

「なんとも愚かな少年よ。あのような戯言を真に受けるとはな。所詮はクソスキルしか持たぬ『無職』じゃわい。頭の方も残念だったか」

 こいつ……ここぞとばかりに罵ってくるじゃねぇか。
 いや別にいい。

「俺のことは好きなだけ罵れ。だがよ。先生を罵倒することは許さねぇ」

「許さぬならどうするというのか。ここにいる冒険者達はすべてA級以上。莫大な予算を組んで国中からかき集めた精鋭達じゃ。お前らには何もできはせん」

 なんだと? 俺達を殺すためだけにそこまでやったってのか。おかしいだろ。
 どんだけハーフエルフを排除したいんだよこいつらは。

「サラとルーチェはどこにいる!」

 今すぐにでもぶん殴ってやりたいが、まずは人質にされた俺のかわいい従者達を救出しなければ。

「誰じゃそれは?」

「とぼけんな。俺の家を燃やして、従者を誘拐したんだろうが!」

「知らんわいそんなこと」

「……体に聞くしかねぇようだな」

 A級冒険者がなんだ。百人を超えていようと、俺に取っちゃ有象無象にも等しいぜ。

「アイリス! 全員殺せ!」

 俺が叫んでも、アイリスはすぐには動こうとしなかった。

「よろしいのですか。マスターは、人死にを避けていらっしゃったのでは?」

 そうだ。俺には現代日本的倫理感が残っている。人殺しは悪いことであり、たとえ自分が殺されようと誰かを殺すなんてことはやりたくなかった。

 だけどよ。
 大切な人達を害されたのなら、俺だってやるしかねぇんだよ。

「……かまわない」

 自分が冷静じゃないことくらいわかってる。俺の命令で人が死んだなんてことになったら、後からどれだけ後悔するかわからない。
 けどもういい。今の俺は鬼にも悪魔にもなるさ。

「やれ」

 残っていた最後の理性を捨て、俺はアイリスに命じた。

「かしこまりましたわ」

 アイリスが床を蹴り、跳躍。その動きは肉眼では確認できないほどに速く、苛烈だ。

 数秒後。
 百人以上のA級冒険者達は全滅した。
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