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他に偽装するものがあるはずだ

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 エルフ達はきゃーきゃー騒ぎながら俺の股間に視線を集中させる。
 ある者は指の隙間から、ある者はガン見。目を瞑ってそっぽを向く者も何人かいた。

「なに……?」

 俺のズボンをずり下ろしたエルフ達が驚愕に目を見開く。
 それもそのはず、屹立しているであろうと決めつけられていた俺の愚息が、まったくの無反応だったのだから。

「ふにゃふにゃだ」

「副長。これは一体?」

「わ、わからないナリ……おい! 貴様、どういうことナリか!」

 どうもこうも。

「言っただろ。俺はお前達に危害を加えるつもりはないって。だからいやらしい目で見たり、いかがわしい行為に及ぶつもりもない」

 というのは嘘だ。

 正直こいつらはエロすぎる。だってほぼ全裸だもん。
 趣のない露出度ではあるが、エルフはみんな美人で華やかだ。品のない格好でも、なぜか気品に満ち溢れている。

 だから、さっきまで俺の愚息はしっかり反応していたのだ。

 だが、俺にはクソスキル『偽装ED』がある。

 このスキルを発動した瞬間、俺の愚息は急速に元気を失った。
 一時的にだが、男性機能を強制的に低下させる。これはそういうスキルなんだ。

「ううむ。貴様は、他の人間の男とは違うということナリか……?」

「そういうことだ。俺は平和を愛する男だからな。お前達を不快にさせることは決してしない」

 今の俺は下半身を露出させているとは思えないほどに、かっこいい表情になっていることだろう。

「副長」

「わかっているナリ。これほどの人格者を殺すのは忍びないナリ。だが、掟は掟。投獄する以外に、我々にできることはないナリ」

 よかった。俺は胸を撫で下ろす。
 とりあえず、殺されることはなさそうだ。

 しかし、世の中奇妙なものだよな。
 まさかこんなことで命をつなぐことになるなんて。

「仕方あるまいナリ。この男を牢へ連れていくナリよ! あの女と一緒にぶち込んでおくナリ!」

「わかりました!」

 あの女?

 なんだ、他のみんなも捕まっていたのか。
 俺は男だから別にされていたってことなのかもしれない。

 とりあえず、一安心か。
 みんなが無事なら、まだ可能性はある。

 こうして俺は、エルフの村の牢獄に入ることになった。

「ここに入っていろ!」

 縛られたまま蹴りを入れられ、俺は牢屋に転がり込んでしまう。

「いってぇ……」

 もうちょっと丁寧に扱ってくれてもいいんじゃないか。
 人間に対するエルフの振る舞いなんてこんなもんなのかなぁ。殺されなかっただけありがたいと思わないと。

「うそ? ロートスなの?」

 牢屋の先客が俺を呼ぶ。

 おいおい、マジかよ。

「エレノア……」

 捕まっていたのは馬車にのっていたメンバーではなく、幼馴染の少女であった。
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