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なり上がった

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 翌朝。

 俺は登校する前に、冒険者ギルドを訪れた。
 報酬を貰うには、昨日の件を報告しなければならないからな。早起きは夜更かしの一千万億倍つらいけれども、背に腹は代えられない。お金は必要だ。

 目をこすりながらギルドに立ち入ると、冒険者達の視線が一斉に俺に集まった。
 え、ちょっと待って。なんでよ。

「あいつが例の――」

「ハナクイ竜のつがいを仕留めたっていう新人か」

「聞くところによると、ドラゴンの頭が爆散してたらしいぜ。マジだったら恐ろしいよな……」

「ははは。久しぶりの大型新人だな。若いモンが張り切るのはいいことじゃ。未来は明るいぞい」

「ふぅん? けっこういい男じゃないの」

「えー、全然普通じゃなーい?」

 くそが。また目立っちまった。

 一体どういうことだ。どうして昨夜のことがこんなに早く広まってるんだ。ありえぬ。

「なんか……居心地悪いですね」

 隣のサラがそんなことを呟いた。今更だろ。

「さっさと報告して出るぞ。長居は無用だ」

 冒険者の朝は早いらしく、ここには百人以上の冒険者たちが集っている。そんな人数の注目なんか浴びた日には、また死神に間違えて殺される羽目になるんだぜ。たぶん。

 俺は受付の女性のもとに急ぎ、カウンターを軽く叩く。

「魔法学園の冒険者クラブから来たロートス・アルバレスです。昨日のファイアフラワードラゴンの件で報告に来ました」

「はい。お待ちしていました。ギルド長の部屋までご案内いたします」

 俺はサラを見た。サラも俺を見ていた。

「ご主人様、ギルド長って」

「ああ。なんか話がでかくなってるな」

 アデライト先生が裏で話をつけてくれるといっていたが、果たしてどれくらいの効果があるものか。
 実際、今も十分目立ってしまってるからお察しだが。

「ではこちらへどうぞ。ご案内いたします」

 受付嬢が立ち上がりかけた、その瞬間。

「その必要はない」

 しゃがれた男性の声がホールに響いた。

 大階段から現れたのは、赤いローブに身を包んだ恰幅の良い老人だ。白いヒゲは長く、まるでサンタクロースのような風貌だった。

「ギルド長だ!」

「まさか、いつもは部屋にこもって出てこないってのに」

「まさにレアだな」

「あの少年がギルド長を動かしたのか。信じられん……!」

 しらねー。勝手に出てきたんじゃん。

 サンタさんは俺の前まで歩みを進めると、どっしりとした息を吐き、白いヒゲをいじる。

「君が、ロートスじゃな」

「そうですけど」

「昨夜のことは聞いたぞ。見事にドラゴンを討伐したそうじゃな。よくやった」

「……どうも」

 やったのはウィッキーだけどな。

「報告を聞く前に、渡したいものがあるのじゃ」

 渡したいものだと? 嫌な予感しかしない。

 ギルド長が懐から取り出したのは、一枚のメダルと、金に輝くカードであった。

「このメダルは単身でドラゴンを打ち倒した者に与えられる勲章。その名も『ドラゴンスレイヤー』。そしてこれは、君の実力を認めて特例で発行したA級冒険者のギルドカードじゃ」

 俺は頭を抱えた。

 あーもう。なんてこった。
 いらんわそんなもん。
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