異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ～奴隷を買って魔法学(以下略)

なんの意味があったのか

「先生。面接をお願いしますよ。世間話をしに来たわけじゃない」

「合格です」

「はや」

　ほぼ面接してないぜ。

「私がロートスさんを落とすわけないじゃないですか。大好きなんですよ？」

「それはとても嬉しいですけど、仕事に私情を挟むのはどうかと」

「クラブの顧問なんて仕事の内に入りません。趣味みたいなものです。お手当だってほとんど出ないんですもの」

　まぁいいけどさ。

　そもそもクラブに入るのに面接で合否を決める仕組みはどうなんだ。誰でも入れるもんじゃないんだな。今の流れでなんとなく察したわ。
　セレンは話についていけていないようで、無言を貫いている。

「あ、そうそう。ロートスさんとセレンちゃんのパーティには、特例として今日から依頼を受けられるようにしておきます。このまま街のギルドにいって、学生証を提示してください。それがそのままギルドカードとして使えますので。あとこれを」

　椅子に座っていた先生はゆっくりと立ち上がると、俺達に一枚の紙を渡してきた。

「冒険者ギルドについての注意書きです。よく読んでおいてくださいね」

「どうも」

　どれどれ。一読して、内容を要約してみる

　冒険者ギルドとは、要するに依頼の斡旋所だ。冒険者に対する依頼を一括で管理する組合である。それ以外の方法で冒険者に依頼を出すことはできないし、冒険者側もうけることはできない。もし個人間で依頼が発生した場合、闇営業として罰せられることになる。冒険者はギルドカードの停止処分を受け、依頼人は罰金を支払い、さらに今後ギルドに依頼を出すことができなくなってしまう。とのこと。

　ちなみにギルドカードというのは、冒険者としての身分証明書のようなものだ。免許みたいな感じだな。

「先生。また『千里眼』で俺を見てましたね？」

　お金に困っていることを知られているなんて、それしか考えられない。

「たまたまですよ。たまたま」

「だといいけど」

　依頼を受けられることには感謝すべきなのだろうか。ううむ。微妙なところだ。

「……ギルドに行ってきますよ。これで失礼します」

「はい。頑張ってくださいね」

　ひらひらと手を振る先生を背に、俺は部屋を後にした。

　サラは俺にぴったりついてくるが、セレンはすこしだけぼーっとしたような雰囲気で遅れてついてくる。
　本棟を出た時には、すでに陽が赤くなりかけていた。

「セレン、どうした？　心ここにあらずと言った風だけど」

「あなたがアデライト先生と親しいことに、びっくりしてた」

「驚くようなことか？」

「驚くようなこと」

「ふーん」

　セレンはアデライト先生を尊敬している節があるから、そう感じるのかもしれない。

「不思議な人」

「俺か？」

「そう」

「馬鹿な。俺はミスター平均値を自負するほどの男だぜ？」

「無理がある」

「はは。手厳しいな」

　笑う俺と、やはり無表情のセレン。
　だいぶ打ち解けてきたんじゃないか？　いい傾向だな。

「うっしゃ。ギルドに行くぞ。夜になる前に依頼を受けちまおう。俺の事情だけで決めちまったけど、それでいいか？」

「全然かまわない」

「悪いな」

「へいき」

「サラも。頑張ってもらうぞ。お前授業中居眠りしてたからな」

「あっ。気付いてましたか……」

　そりゃ隣で爆睡されたら気付かないわけないわ。逆にどうして気付かれないと思ったのか。

　こうして俺達は、新米冒険者としてギルドに向かうのだった。