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戦いの後先
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ヒーモの部屋に戻ってきた俺達は、ひとまず濡れた体をタオルで拭いていた。
「いやぁ素晴らしいよ! 吾輩の見込んだ通りだ!」
ヒーモはソファの上で足を組み、豪快に笑い声をあげた。
「そのままの姿で現れたことには肝が冷えたが、それも結果オーライだったね。まさか向こうも代理人を立ててくれるとは。しかも、あんなか弱い女性をね」
俺は使い終わったタオルをメイドに渡すと、ヒーモの対面に腰を下ろした。服が濡れたままで気持ちが悪い。
「サラ。座れ」
「はい」
同じく頭を拭いたサラが、俺の隣にちょこんと座った。
「礼を言うよロートス。吾輩の描いたシナリオどおりだ」
「そうかい」
実のところ、俺はすこぶる機嫌が悪い。
アイリスが勝利したことは喜ばしい。ヒーモが有頂天になっているのも百歩譲ってまあ許そう。
だが、エレノアが惨敗したことは非常に心苦しい。
十三年間一緒だった幼馴染なんだ。あいつの性格はよく知っている。さっきの敗北がどれほど彼女の心を傷つけたか、改めて考える必要もない。
だから微妙な気持ちになっている。アイリスの勝ちを素直に喜べない自分が嫌だし、傷心のエレノアに寄り添ってやれない自分も嫌いだ。
俺の機嫌が悪いのは、別に誰に怒っているとかじゃない。やり場のない鬱憤みたいなものが溜まっているだけだ。
「ただいま戻りましたわ」
そんなこんなで、アイリスが帰還した。素性が解らないように時間をずらして帰ってきたのだ。
「おお、今日の主役の凱旋だな!」
ヒーモが拍手をすると、周りのメイドも一緒に手を叩く。うるせぇ。
「キミはよくやってくれた。これであのガウマンも、今後吾輩に絡んでくるようなことはないだろうね」
「絡んでいたのはお前の方だったような気もするがな」
俺の呟きを、ヒーモは無視する。
「それでは、ミスター・ダーメンズ。お約束通りマスターのお家をご用意して頂けますか?」
「ああするとも! すぐにでも! すでに用意は整ってある。うちの者に案内させるから、今から向かうといい」
なんだって。そいつはいい。
「礼を申し上げますわ。わたくしも頑張った甲斐があったというものです」
にこりと、俺に笑みを向けるアイリス。
ああ、お前はよくやったさ。
素直に褒めてやれない主人を許してくれ。
「なら、さっそく行くことにする。サラ、アイリス。行くぞ」
俺は二人を伴って、部屋を後にする。
「そういえば」
その際、アイリスが思い出したように口を開いた。
「本日の決闘。どうやらダーメンズ家とガウマン家の対決だとは、誰も思っていないようでしたわ」
「な、なんだって?」
ヒーモは驚いている。
「マスターを奪い合う女二人の争い。そう認知されていたようですわよ」
「ちょっと待って。それって一体どういう――」
「ご自分で、確かめられては?」
アイリスはにべもなくヒーモの追及を受け流すと、あとは黙って俺についてきた。
なんとまあ。
「いやぁ素晴らしいよ! 吾輩の見込んだ通りだ!」
ヒーモはソファの上で足を組み、豪快に笑い声をあげた。
「そのままの姿で現れたことには肝が冷えたが、それも結果オーライだったね。まさか向こうも代理人を立ててくれるとは。しかも、あんなか弱い女性をね」
俺は使い終わったタオルをメイドに渡すと、ヒーモの対面に腰を下ろした。服が濡れたままで気持ちが悪い。
「サラ。座れ」
「はい」
同じく頭を拭いたサラが、俺の隣にちょこんと座った。
「礼を言うよロートス。吾輩の描いたシナリオどおりだ」
「そうかい」
実のところ、俺はすこぶる機嫌が悪い。
アイリスが勝利したことは喜ばしい。ヒーモが有頂天になっているのも百歩譲ってまあ許そう。
だが、エレノアが惨敗したことは非常に心苦しい。
十三年間一緒だった幼馴染なんだ。あいつの性格はよく知っている。さっきの敗北がどれほど彼女の心を傷つけたか、改めて考える必要もない。
だから微妙な気持ちになっている。アイリスの勝ちを素直に喜べない自分が嫌だし、傷心のエレノアに寄り添ってやれない自分も嫌いだ。
俺の機嫌が悪いのは、別に誰に怒っているとかじゃない。やり場のない鬱憤みたいなものが溜まっているだけだ。
「ただいま戻りましたわ」
そんなこんなで、アイリスが帰還した。素性が解らないように時間をずらして帰ってきたのだ。
「おお、今日の主役の凱旋だな!」
ヒーモが拍手をすると、周りのメイドも一緒に手を叩く。うるせぇ。
「キミはよくやってくれた。これであのガウマンも、今後吾輩に絡んでくるようなことはないだろうね」
「絡んでいたのはお前の方だったような気もするがな」
俺の呟きを、ヒーモは無視する。
「それでは、ミスター・ダーメンズ。お約束通りマスターのお家をご用意して頂けますか?」
「ああするとも! すぐにでも! すでに用意は整ってある。うちの者に案内させるから、今から向かうといい」
なんだって。そいつはいい。
「礼を申し上げますわ。わたくしも頑張った甲斐があったというものです」
にこりと、俺に笑みを向けるアイリス。
ああ、お前はよくやったさ。
素直に褒めてやれない主人を許してくれ。
「なら、さっそく行くことにする。サラ、アイリス。行くぞ」
俺は二人を伴って、部屋を後にする。
「そういえば」
その際、アイリスが思い出したように口を開いた。
「本日の決闘。どうやらダーメンズ家とガウマン家の対決だとは、誰も思っていないようでしたわ」
「な、なんだって?」
ヒーモは驚いている。
「マスターを奪い合う女二人の争い。そう認知されていたようですわよ」
「ちょっと待って。それって一体どういう――」
「ご自分で、確かめられては?」
アイリスはにべもなくヒーモの追及を受け流すと、あとは黙って俺についてきた。
なんとまあ。
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