73 / 981
千年に一人って言っても人口とか出生率によって希少さが変わる
しおりを挟む
俺はその場で踏ん張り、吹き飛ばされないようにするので精一杯だった。
周りでは、エレノアの一撃の余波に耐え切れず高く吹っ飛ばされている新入生たちが何人かいた。
エレノアは手加減がない。まじで凄まじい威力だ。
アイリスは無事だろうか。
「ええ。これはなかなか――」
エレノアの拳を片手で受けとめ、アイリスは変わらぬ微笑を浮かべていた。
「やりますわね」
だが、やはり無傷。
「そうくると――」
エレノアが力強い笑みを浮かべる。
「思ってたわ!」
手を触れ合わせた至近距離。
二人の周りに、いくつもの火が灯る。
「フレイムボルト・レインストーム!」
ここでそれを撃つとは、思い切った判断だな。
弾丸はほとんどその場で爆発し、エレノアとアイリスを包み込んだ。
爆風が雨の軌道を歪ませ、野次馬に横殴りとなって降り注ぐ。
「なるほど。合理的ですね」
真剣な表情で決闘を見ていたサラが、深刻そうに言葉を紡ぐ。
「乙女の極光で肉体を強化し近付いて、至近距離から攻撃魔法を撃つ。自爆みたいに見えますけど、強化された肉体の防御力があるので、自分へのダメージは最小限に抑えられます」
「それは合理的なのか……?」
どちらにしろアイリスに効くとは思えんが。
爆風に煽られるようにして、エレノアが転がり出てくる。ワンピースは泥まみれになり、綺麗な顔や手足も汚れてしまっていた。
「これで……どう?」
荒い呼吸を整えながら立ち上がるエレノア。
なんか、あそこまで頑張っているあいつを見ると、いつの間にか応援してしまっている俺がいた。
爆炎は未だ晴れない。
「やるじゃないか」
俺のクソスキル『限られた深き地獄の耳朶』が、イキールの呟きを拾った。
「まさか乙女の極光を使えるとは……本当にただの平民か?」
「あいつは努力家なんだよ。昨夜は徹夜で魔法書を読み込んでた」
「なに?」
マホさんが会話に入ってきた。
「徹夜で読み込んでいただと? まさかとは思うが、一夜漬けで乙女の極光を習得したなどと言うんじゃないだろうな?」
「はは。そのまさかだよ」
マホさんはどこか誇らしげだ。
「あいつは昨日までフレイムボルトと、その派生魔法しか使えなかった。それじゃああの乳デカ微笑み煽り女には勝てねぇ。だから覚えたのさ。一発で強くなれる上級魔法ってやつをな」
「そんな無茶苦茶な……歴史に名を残す賢者達でも、そんな芸当は無理だっただろうに……!」
「エレノアは別格だ。間違いなく、千年に一人の逸材だろうぜ」
そんなにすごい才能があったのか、エレノア。優秀だとは思っていたが、俺の想像を遥かに超える天才だったようだ。
スキルだけじゃなく、魔法の才能にも恵まれるとは。
幼馴染として鼻が高いな。
それはそれとして。
フレイムボルト・レインストームの爆炎から姿を見せたアイリスは、またしても当然の如く無傷で微笑を湛えていた。
周りでは、エレノアの一撃の余波に耐え切れず高く吹っ飛ばされている新入生たちが何人かいた。
エレノアは手加減がない。まじで凄まじい威力だ。
アイリスは無事だろうか。
「ええ。これはなかなか――」
エレノアの拳を片手で受けとめ、アイリスは変わらぬ微笑を浮かべていた。
「やりますわね」
だが、やはり無傷。
「そうくると――」
エレノアが力強い笑みを浮かべる。
「思ってたわ!」
手を触れ合わせた至近距離。
二人の周りに、いくつもの火が灯る。
「フレイムボルト・レインストーム!」
ここでそれを撃つとは、思い切った判断だな。
弾丸はほとんどその場で爆発し、エレノアとアイリスを包み込んだ。
爆風が雨の軌道を歪ませ、野次馬に横殴りとなって降り注ぐ。
「なるほど。合理的ですね」
真剣な表情で決闘を見ていたサラが、深刻そうに言葉を紡ぐ。
「乙女の極光で肉体を強化し近付いて、至近距離から攻撃魔法を撃つ。自爆みたいに見えますけど、強化された肉体の防御力があるので、自分へのダメージは最小限に抑えられます」
「それは合理的なのか……?」
どちらにしろアイリスに効くとは思えんが。
爆風に煽られるようにして、エレノアが転がり出てくる。ワンピースは泥まみれになり、綺麗な顔や手足も汚れてしまっていた。
「これで……どう?」
荒い呼吸を整えながら立ち上がるエレノア。
なんか、あそこまで頑張っているあいつを見ると、いつの間にか応援してしまっている俺がいた。
爆炎は未だ晴れない。
「やるじゃないか」
俺のクソスキル『限られた深き地獄の耳朶』が、イキールの呟きを拾った。
「まさか乙女の極光を使えるとは……本当にただの平民か?」
「あいつは努力家なんだよ。昨夜は徹夜で魔法書を読み込んでた」
「なに?」
マホさんが会話に入ってきた。
「徹夜で読み込んでいただと? まさかとは思うが、一夜漬けで乙女の極光を習得したなどと言うんじゃないだろうな?」
「はは。そのまさかだよ」
マホさんはどこか誇らしげだ。
「あいつは昨日までフレイムボルトと、その派生魔法しか使えなかった。それじゃああの乳デカ微笑み煽り女には勝てねぇ。だから覚えたのさ。一発で強くなれる上級魔法ってやつをな」
「そんな無茶苦茶な……歴史に名を残す賢者達でも、そんな芸当は無理だっただろうに……!」
「エレノアは別格だ。間違いなく、千年に一人の逸材だろうぜ」
そんなにすごい才能があったのか、エレノア。優秀だとは思っていたが、俺の想像を遥かに超える天才だったようだ。
スキルだけじゃなく、魔法の才能にも恵まれるとは。
幼馴染として鼻が高いな。
それはそれとして。
フレイムボルト・レインストームの爆炎から姿を見せたアイリスは、またしても当然の如く無傷で微笑を湛えていた。
35
お気に入りに追加
1,202
あなたにおすすめの小説
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
追放?俺にとっては解放だ!~自惚れ勇者パーティに付き合いきれなくなった俺、捨てられた女神を助けてジョブ【楽園創造者】を授かり人生を謳歌する~
和成ソウイチ
ファンタジー
(全77話完結)【あなたの楽園、タダで創ります! 追放先はこちらへ】
「スカウトはダサい。男はつまらん。つーことでラクター、お前はクビな」
――その言葉を待ってたよ勇者スカル。じゃあな。
勇者のパワハラに愛想を尽かしていたスカウトのラクターは、クビ宣告を幸いに勇者パーティを出て行く。
かつては憧れていた勇者。だからこそここまで我慢してきたが、今はむしろ、追放されて心が晴れやかだった。
彼はスカルに仕える前から――いや、生まれた瞬間から決めていたことがあった。
一生懸命に生きる奴をリスペクトしよう。
実はラクターは転生者だった。生前、同じようにボロ布のようにこき使われていた幼馴染の同僚を失って以来、一生懸命に生きていても報われない奴の力になりたいと考え続けていた彼。だが、転生者であるにも関わらずラクターにはまだ、特別な力はなかった。
ところが、追放された直後にとある女神を救ったことでラクターの人生は一変する。
どうやら勇者パーティのせいで女神でありながら奴隷として売り飛ばされたらしい。
解放した女神が憑依したことにより、ラクターはジョブ【楽園創造者】に目覚める。
その能力は、文字通り理想とする空間を自由に創造できるチートなものだった。
しばらくひとりで暮らしたかったラクターは、ふと気付く。
――一生懸命生きてるのは、何も人間だけじゃないよな?
こうして人里離れた森の中で動植物たちのために【楽園創造者】の力を使い、彼らと共存生活を始めたラクター。
そこで彼は、神獣の忘れ形見の人狼少女や御神木の大精霊たちと出逢い、楽園を大きくしていく。
さらには、とある事件をきっかけに理不尽に追放された人々のために無料で楽園を創る活動を開始する。
やがてラクターは彼を慕う大勢の仲間たちとともに、自分たちだけの楽園で人生を謳歌するのだった。
一方、ラクターを追放し、さらには彼と敵対したことをきっかけに、スカルを始めとした勇者パーティは急速に衰退していく。
(他サイトでも投稿中)
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる