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事故物件じゃねぇか
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門を開いて敷地内に足を踏み入れる。門番が気絶しているだけであることを確認してから、貴族寮の建物を見上げてみる。
でかいな。大体、転生前の母校である高校の体育館三つ分くらいはある。レンガ造りでおしゃれだし、頑丈そうだ。
「よう来たな。ほれ、中に入るのじゃ」
入口の壁に背を預けていたアカネが扉を開ける。
「おいアカネ。さっきの門番、何か意味があったのかよ?」
「いや」
強い声を出したが、アカネの表情はびくともしない。
「あの門番は仕事をしただけじゃよ。操る云々はそこの小娘の勘違いじゃろうて」
「じゃあ、魔力の表情が歪んでるってのはなんだよ?」
「知らんわ。どこぞの貴族の悪ふざけじゃろ。少なくともわらわは関係ない。まぁ、助け舟を出さなかったのは、おぬしらの実力を見てみたかったというのもあるがな」
やっぱり試してたんじゃないかこの野郎。
「大の男が細かいことを気にするでないわ。女にもてぬぞ」
「うるせぇ」
アカネは貴族寮のエントランスに入っていく。俺達もそれに続いた。
「ご主人様ご主人様」
「なんだサラ」
「ボクはご主人様のことかっこいいと思ってます」
「ああ?」
「ボクからはちゃんとモテてますから、大丈夫ですよっ」
「……おう」
そうそう。こういうのだよ。サラのいいところは。
ぴょんぴょんと跳ねながら言っているのがまことに愛らしい。
アカネの案内でずんずんと広い廊下を進んでいく。赤い絨毯の敷かれた床は見るからに貴族の屋敷っぽい。シャンデリアとかも天井にかかっている。やばいな。
俺はきょろきょろしながらアカネを追い、サラは俺の後ろをぴったりとついてくる。
アイリスはというと、珍しく難しい表情で空色の髪を弄っていた。
「どうした。なにか気になることでも?」
「ええ。すこし」
俺の質問に、アイリスが頷く。
「先程の門番。おそらくですが……人間じゃありません」
「なんだと?」
見た感じ人間のおっさんだったけどな。
「あれは人間に見せかけたモンスターです。魔力が歪んでいたのは、そのせいかもしれません」
「モンスターだって? そうは見えなかったけどな」
「我々にはそう見えていた。ということでしょう」
アイリスの言葉に、アカネがにわかに笑い出した。
「意外と冴えとるのぅ娘っ子。その通り、あれは人間に見せかけたモンスターじゃ。もっと言うならば、ゴースト亡霊ファントムの一種じゃな」
「ゴースト亡霊ファントム?」
なんだその頭の頭痛が痛いみたいな名前のモンスターは。
「ここはその昔無差別殺人事件があった土地なのじゃ。もう百年も前に建て替えられて忘れ去られておるがな。そのせいか敷地内が半ダンジョン化しておるのじゃ。それで、その類のモンスターが湧いておる」
「そんなの……」
俺の袖を、サラがぎゅっと掴んだ。
「ホントなんですか?」
「まことじゃ。こんなことで嘘を吐く意味はないわ」
サラは震えていた。怖がり屋さんだったか。まあ十歳じゃしかたない。
今夜は一緒に寝てやるとするか。いつも一緒に寝てるけどな。
「しかし……貴族の連中はそんなところに住んでるのか。肝が座ってるってレベルじゃねぇな」
俺の言葉に、アカネがからからと笑う。
「知っておったら住んだりせんじゃろうて。気付いたものは何も言わずに出て行っておるわ」
ふーむ。なんというか。魔法学園っておかしなところだな。
「ほれ、ついたぞ。ここがダーメンズ家の部屋じゃ」
やがて辿り着いた大扉をアカネがノックする。
「若様、ロートスを連れてきましたのじゃ」
「通せ」
アカネが扉を開き、顎をしゃくって入室を促した。
そして俺達は、ヒーモと対面する。
でかいな。大体、転生前の母校である高校の体育館三つ分くらいはある。レンガ造りでおしゃれだし、頑丈そうだ。
「よう来たな。ほれ、中に入るのじゃ」
入口の壁に背を預けていたアカネが扉を開ける。
「おいアカネ。さっきの門番、何か意味があったのかよ?」
「いや」
強い声を出したが、アカネの表情はびくともしない。
「あの門番は仕事をしただけじゃよ。操る云々はそこの小娘の勘違いじゃろうて」
「じゃあ、魔力の表情が歪んでるってのはなんだよ?」
「知らんわ。どこぞの貴族の悪ふざけじゃろ。少なくともわらわは関係ない。まぁ、助け舟を出さなかったのは、おぬしらの実力を見てみたかったというのもあるがな」
やっぱり試してたんじゃないかこの野郎。
「大の男が細かいことを気にするでないわ。女にもてぬぞ」
「うるせぇ」
アカネは貴族寮のエントランスに入っていく。俺達もそれに続いた。
「ご主人様ご主人様」
「なんだサラ」
「ボクはご主人様のことかっこいいと思ってます」
「ああ?」
「ボクからはちゃんとモテてますから、大丈夫ですよっ」
「……おう」
そうそう。こういうのだよ。サラのいいところは。
ぴょんぴょんと跳ねながら言っているのがまことに愛らしい。
アカネの案内でずんずんと広い廊下を進んでいく。赤い絨毯の敷かれた床は見るからに貴族の屋敷っぽい。シャンデリアとかも天井にかかっている。やばいな。
俺はきょろきょろしながらアカネを追い、サラは俺の後ろをぴったりとついてくる。
アイリスはというと、珍しく難しい表情で空色の髪を弄っていた。
「どうした。なにか気になることでも?」
「ええ。すこし」
俺の質問に、アイリスが頷く。
「先程の門番。おそらくですが……人間じゃありません」
「なんだと?」
見た感じ人間のおっさんだったけどな。
「あれは人間に見せかけたモンスターです。魔力が歪んでいたのは、そのせいかもしれません」
「モンスターだって? そうは見えなかったけどな」
「我々にはそう見えていた。ということでしょう」
アイリスの言葉に、アカネがにわかに笑い出した。
「意外と冴えとるのぅ娘っ子。その通り、あれは人間に見せかけたモンスターじゃ。もっと言うならば、ゴースト亡霊ファントムの一種じゃな」
「ゴースト亡霊ファントム?」
なんだその頭の頭痛が痛いみたいな名前のモンスターは。
「ここはその昔無差別殺人事件があった土地なのじゃ。もう百年も前に建て替えられて忘れ去られておるがな。そのせいか敷地内が半ダンジョン化しておるのじゃ。それで、その類のモンスターが湧いておる」
「そんなの……」
俺の袖を、サラがぎゅっと掴んだ。
「ホントなんですか?」
「まことじゃ。こんなことで嘘を吐く意味はないわ」
サラは震えていた。怖がり屋さんだったか。まあ十歳じゃしかたない。
今夜は一緒に寝てやるとするか。いつも一緒に寝てるけどな。
「しかし……貴族の連中はそんなところに住んでるのか。肝が座ってるってレベルじゃねぇな」
俺の言葉に、アカネがからからと笑う。
「知っておったら住んだりせんじゃろうて。気付いたものは何も言わずに出て行っておるわ」
ふーむ。なんというか。魔法学園っておかしなところだな。
「ほれ、ついたぞ。ここがダーメンズ家の部屋じゃ」
やがて辿り着いた大扉をアカネがノックする。
「若様、ロートスを連れてきましたのじゃ」
「通せ」
アカネが扉を開き、顎をしゃくって入室を促した。
そして俺達は、ヒーモと対面する。
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