37 / 53
男にあるんだから女にだってあるんだよな。
しおりを挟む身形を整え酒場のような食堂へ向かう。丁度入れ替わりで円卓が空いたのですかさずキープする。
「片付けますからしょしょお待ちくだっさー」
「取り敢えずエールで良いですかね?」
「私は飲まないわよ?」「私もです」
「あたいもかなー」
「じゃあ私とゲインさんで。皆さんはお水ですね」
「俺も水で良いかなー」
「ゲインさん、もしかして、酔いつぶれたら私が何かするとでも思ってます?」
「今日は疲れたからガッツリ食って回復したいんだよ」
「酔いつぶれてなくてもするじゃん」
「武器を携帯して護衛します」
「ゲインはスケベだし押しに弱いけど、がっつく女は嫌われるわよ?」
「後が無いんですよぅ…」
「今増やしたら置いてくからな?」
「増やしません!おねーさん、エール3つ!」
片付け終わったテーブルに、注文した料理が並ぶ。焼肉に焼き魚が6つに焼き鳥が2つ。スープは4つのソーサーが4皿。エールを含めて4900ヤン。5人で1000ヤン切るなら安いもんだろう。
「でへぇ~、ゲインさぁ~ん、抱っこしてく~らさ~い」
食事を終えて、酔っ払ったメロロアが何事かほざいておる。椅子に座るメロロアの前にしゃがみこみ、両手を広げると飛び込んで来た。顔を挟む圧が暖かくて柔らかいじゃないか。後、酒くせ。
「えへ、えへへ~、ゲ~インさぁ~ん」
「メロロアは今日も仕事を頑張ってたんだな。少し酸っぱい匂いがするけど「もう、歩けます…」風呂行ってから帰っといで」
「はい…。お風呂行ってきます」
「アレが1番効くわね」
「恐ろしい口撃です」
「ホントは好きなクセにね~」
酒臭いのは好きじゃないぞ?部屋に戻って横になる。もれなく2人がくっ付いて、腕を取られて布団がかけられない。
「布団くれよ。もしくは布団かけたの確認してから来いよ」
「私が温めて差し上げます」
「布団くれたら一緒に暖まれるぞ」
「じゃああたいと1つの布団であったまろ?」
「2枚なら2倍暖まれるぞ」
「普通に寝れば良いのに…。絡み付いてるとまたメロロアにキスされちゃうわよ?」
「「あぁ…」」
「さ、先にキスしたらよくない?」
「ですね!」
「じ、じゃああたいから…」
肩からにじり寄るタララの顔が赤い。いざとなると恥ずかしくなるのなコイツは。ぷくっとした唇が魅力的に見えるのはスキルの効果だろうか?舌先でペロっと舐めてやるとハムっと食われた。
「私もっ」
首をグイッと回されて、ブチュッとされる。
「増えたら私とゲインの2人旅よ?」
「分かってるよう。けど、好きが溢れちゃうんだもん…。うっ、うぇっ」
タララが泣いちゃった。肩に寄せて撫で回し、おでこにチュッチュとキスをしてやると、脚を絡めて静かになった。柔らかいな。カウモアも肩を枕にして寝始めた。
「ああっ!また私の場所がなーい」
音も無く鍵を開けて部屋に入って来るメロロアに、タララは抱き着く圧を強め、カウモアは俺の顔を抱き締める。とても柔らかい。
「もがっ、おかえり」
「私も仲間に入れてくださいよぅ」
「メロロアはかけがえのない仲間だよ」
「それはそれで嬉しいですが…」
「不意打ちでキスなんてするからよ」
「反省します。弁えますからから私にもゲインさんとイチャイチャさせてくださーい」
「…タララ、カウモア」
2人の圧が弱まって、やっと布団から起き上がれた。
「ほれ、ハグしてやるから早寝しろよ?」
「ゲインさぁーん」
正面から飛び込んで来たのを抱き返し、ギュッとしてやる。湯上りの髪が良い匂いする。
「キス、しても、良いですか?」
少しはにかんで、メロロアがキスをねだる。普段からこうならギルドでモテモテだろうに…。
「ちょっとだけな。俺だって本当は我慢してんだから」
「ゲインさんは、本当に良い男ですね…」
チュッと軽く唇を合わせただけで離れて行った。
「あら、我慢できたのね。2人共、見習いなさい?」
「お2人はナニしたんですか…」
「言うと真似しそうだから言わないわ。おやすみ」
その夜は両サイドからべったりされなかった。寝返りが打てたおかげで熟睡できたと思う。
よく寝た。目覚めるとみんな起きててベッドに座ってた。
「…何してんだ?」
「おはよ。見てたのよ」
「何を……ってお前等バカか?見るなよ」
4人揃って俺の張り出したテントを見ていたようだ。中身をひん剥かれてなかっただけまだマシだが、バカなのか?バカなのか?
「おはようございます。眼福の朝です」
「ゲイン、あたいのも、見ても良いんだぞ?」
「ゲインさん、そちらの処理くらい、しても構いませんよ?」
「増やすぞ?」
「ん、我慢するね」「自重します」
「取り敢えず、トイレ行って来るから身形でも整えときなされ」
「あ~い」「「了解です」」「私も行くわ」
アントルゼと連れションして食堂へ。朝だから商人系の人が多い。手を振るメロロアを見つけて円卓に合流し、朝食を食べる。今日はみんな焼肉とキノコスープとソーサーに無料水。メロロアが仕事に行くので、彼女の同じ物を頼んだ方が早く持って来ると言う言葉に従った。早いかどうかは分からないが店員4人で一斉に持って来たよ。
「後4日ですね。やる事が無いと体が鈍ってしまいそうです」
「私はせっかく買った武器を使ってもないわ」
「んじゃ~、何か狩る?」
いきなり実践じゃまずかろうと言う事で、今日は訓練する事になった。とは言え、街の近くではケンカと勘違いした衛兵や冒険者と一悶着してしまうので木の門まで行く事にした。慣れたら実践出来るし、丁度良いだろう。
食事を終えると職場に向かうメロロアと別れ、俺達は南門へと向かった。
「今日も南門なのね」
「南はゴブリンが安定して出てるし、他の野獣も少ないからな」
門を潜って街道を走る。アントルゼのペースに合わせているが、だいぶ走るのに慣れて来たみたいだ。
「マメをこさえないようにな」
「重いけどサンダルよりは走りやすいわ」
「アリちゃん、成長したねぇ~」
「良い事です」
「ゲイン、私この2人からいじめを受けているわ」
「大きくなって見返してやるんだな」
「大きくなったらおっぱい枕してあげるわ」
「ダメだかんねっ」「私が先です」
わちゃわちゃしながら畑の続く街道をひた走り、木の門に到着した。門番は独り身のジェーンだ。何やら恨み節をのたまっているが、聞かなかった事にして橋の横の開けた場所で訓練を開始する。
「休憩は要るか?」
「いらないよー」「問題無いわ」「同じく」
先ずは牛の指示の元、大盾を構えたタララにツルハシスコップを持ったアリが挑む。
「基本はレイピアと同じく突きです。殺傷力は控えめですがゴブリン程度なら場所如何で殺れますので、しっかりと力を込めて突いてください」
「了解よ!」
「盾壊さないでよね?」
「タララ様は受け止めず、受け流す事に集中してください。盾や体をずらす事で盾へのダメージを減らすのです。避けてしまうと押し込まれますので敵の足は止めなければなりません」
「わかった」
ガスッ、カツン、ガッ…
両手、片手、逆手と、色んな持ち方で突いて行く。タララも体を変え、盾をずらして盾へのダメージを減らそうとしているな。
「タララ様、盾を動かし過ぎて体が見えてますよ。素人でなければ狙われています」
「素人なりに忖度はしてるのよ!?」
「アリ、相手はプレートメイルです。顔でなければ大したダメージは入りません。それにポーションもあります」
「今すぐ飲みたいわ!腕が上がらないのよ!」
「では後100回。手を抜いたら終わりませんから。タララ様もですよ」
「ぐぎ…、普段っ、どんだけっ!楽、してるかっ、わかるよっ!」
「投石っ、便利、過ぎぃっ!」
タララとアリがガツガツやり合ってる間、俺はボーッと突っ立ってた訳じゃない。草藪に入ってカツリョクソウを摘んだりしていたのだ。休憩に入った2人に水とカツリョクソウを2束ずつ差し出すと、ぐびぐびもしゃもしゃやりだした。
「明日、腕上がらなくなりそ…」
「私もよ…」
「ではゲイン様、我々もやりましょうか」
牛がスラリと刺突剣を抜く。俺は普通の剣鉈を抜いた。
「刺突剣相手じゃ分が悪いな」
「タララ様のラウンドシールドを貸してもらいましょうか?」
「盾のスキル無いんだが、大丈夫かな?」
「加減しますのでしっかり避けてください」
タララから小盾を借りて着けてみる。使えなくはなさそうだけど、やっぱり少し重いや。斜に構えて体の正面に盾を構える。長い事腕を伸ばしてはいられないな…。
「ずっとその姿勢では疲れますので腕を畳んだり伸ばしたりすると良いでしょう。盾で殴る事も出来ますからね」
言葉が途切れると同時にヒュッと刺突剣が音を立て、俺は咄嗟に後ろへ飛ぶ。横薙ぎにしたのは刺突剣だが、斬れないからと当たる訳には行かない。相手の得物が刺突剣とは限らないので、今対峙している得物は片手剣として見なければならない。
重いだなんて言ってられないぞ…。とにかく避ける事に集中する。下手に盾を出しても軌道を変えられるのがオチだからな。牛の左へ左へと回りながら前後して、間合いを外すのに必死になった。
「ぜい…ぜいっ、はあ、はふっ…」
「しっかりと避けられていましたね。良い感じです」
「牛ちゃん、ゲインに甘くなーい?」
すっかり回復してまったり水を飲むタララが心無い事を言う。
「そうでも無いですよ?当たらなければ、それだけ相手を消耗させられます。盾を持っているからと言って、攻撃を受ける必要は無いのです」
「ゲインの方が消耗してるわね」
「俺もまだ、未熟なのだろう、ふぅ、ふ~…」
「休憩したら、今度はアリがゲイン様とやってください。今度は突きではなく斬りと薙ぎです」
噛み砕いたカツリョクソウを水で流し込む。一歩や半歩の移動では走るスキルは発動しないみたいで、体感で遅く感じる事が解った。動くなら大きく動いた方が早く移動できるだろうな…。草の上に横たわり、体力の回復を待った。
俺が寝っ転がってる間、タララは牛の剣を受けていた。刺突剣は多少柔らかいので盾の横から刃が入る。盾を振り、体を動かさないと危険だ。シュリンシュリンと盾の縁を擦る音を聞きながら、タララが根を上げるのを待つ。
「ひっ、も、らめっ!」
「もっと横から攻撃されていると思ってください。体と盾を密着していると刺さりますよ?」
「はっ、吐きそ!ゆるひて~」
泣き言を言ってどうにか許しを得たらしい。と言うより鎧に当たったと言う事で死んだ扱いになったようだ。ゾンビみたいにフラフラ歩いて俺の横に寝そべった。次は俺か…。
「あ、当たったら、すぐに言いなさいよね!?」
「お前の方が当たったの分かるだろ」
「アリはくれぐれも顔を狙わないように。ゲイン様の可愛いお顔に傷を付けたくはありません」
「分かってるわよっ。じゃあ、行くわよ?」
盾を構えた俺に、アリの得物が振るわれる。間合いが遠いので盾を動かすだけで避けられる。袈裟斬り、斬り上げからの薙ぎ払い。全て盾を狙っての大振りだ。当たるはずがない。袈裟斬りの構えを見て、右に大きく移動すると、やはり走るスキルが効いて素早く後ろを取る事ができた。振り返ろうとするアリの反対側に更に回り込む。
「ゲインが消えたわっ!」
「ここにいるぞー」
後ろ抱きにして腕と武器を抑え込んだ。
「羨ましいのでそこまで」
牛の声にアリの力が抜ける。
「なんで当たらないのよ」
「そりゃあ盾を攻撃してたら当たらんだろ、的が小さいんだから。それに間合いが遠過ぎて俺の体まで届いてない」
「盾の位置から片手で振らないと体には当たりませんね」
「その時は盾でパンチすっけどな」
「その時を狙って腕を斬ります」
「鎧は斬れないわよ?」
「体勢を崩せれば、回り込んで攻撃も出来ますね」
「さっきのゲインみたいにって事ね」
「ゲイ~ン、そろそろアリちゃんから離れようか~?」
ダウンしているタララが恨めしそうな声を出す。
「嫉妬に狂ったら強くなるかしら?」
「モンスターに嫉妬する事があれば、あるやも知れませんね」
「あたいもゲインにハグされたい!」
「私もです。ですがタララ様とゲイン様の打ち合いは止めておきましょう。盾を壊しかねません」
鉈で叩き付けたら鉈も盾も修理しなくちゃならなくなる。やるとしたら棍棒作ってやらないとな。その後は素振りや動き方の練習をして、川辺まで降りて昼食にした。干し肉を使わないと悪くなってしまうからな。
炙った干し肉に、乾燥野菜と干し肉のスープ。木の枝に巻き付けたソーサーで腹を満たす。
「このネジネジしたの、カリカリでおいしーね」
「私はスープに浸して食べるのが好きだわ」
「砂糖を混ぜたらお菓子になりそうですね」
「とにかく食べられて良かったよ。こっそり魚を焼いて食べる時の技が上手くいったな」
「そう言やさ、ここの魚は食べないの?獲れそうじゃん」
「ゴブリン餌にしてる魚だぞ?」
「そんな凶暴なのがいる川に潜らせたの?」
「いや、俺達が殺ったゴブリンを流してたんだ。少なからず食ってると思う」
「試しにさ、どうかな?」
タララが渾身のお願いポーズで俺を誘惑しようとするが、今回は折れてもらった。焼くのに時間をかけたくないのだ。頭撫でて忘れさせた。
食休みしたら橋を渡って実践してみる。今日も絶賛バトルロイヤル中だが雑魚に構って等居られない。アリのためにゴブリン1匹連れて来る。
「今の装備でなら死ぬ事はありませんが、装備を壊されないようにしてください」
「武器で殺すの、初めてなんだけど…」
「犯されるまでは見守っています」
「犯すって何よ!?ああもう来た!」
犯される前に助けてやれよ、とは言えない。負けたらこうなる、と言うのを体で覚えさせるのも大事だからだ。生娘なれば尚の事、この手の敵に敵意を持ってもらわねばならん。
棍棒を持ったゴブリンが一番弱そうな奴を狙って突っ込んで来る。こっち来んな。俺が連れて来たからヘイトが向いてるだけだかんね?振り回す棍棒を避けて背中を押してアリの前に突き出してやると、アリの刺突で胸に穴が空いた。ウゲウゲ言って倒れ込むゴブリンに、背中から得物を突き刺して1匹完了。
「ふっふっ、臭いわ!」
「臭いで済むだけ慣れたって事だな。偉いぞー」
「すぐにでも武器を洗いたいんだけど!?」
「後で川に行って洗おうか」
「2匹目を連れて来ました」
休憩も無く、牛がゴブリン連れて来て、ササッとアリの後ろに回り込む。そうやってヘイトを変えるのか。
今度は素手のゴブリン。諸手を挙げて突っ込んで来るのを腹に一突き。腹を抱えてうずくまった所を兜割りが決まった。
「あんまり斬れないわ!」
「ゴブリンなら斬るより叩き殺す方が良いぞ。刃物は脂が着いて斬れなくなるからな」
「刺した時に傷口を広げるための刃であると考えた方が良いですね」
「もっと押し込めって事?」
「抜けなくなったら困るから今のままで良いと思う。もし抜けなくなったら躊躇わず手放せよ?殺った後で回収すれば済む話だからな」
「ゲイン、それなら収納しちゃえば良くない?」
「それでも良いな。アリ、やってみるか?」
「本番で出来ないと困りますからね、やるべきでしょう」
などと言いつつもうゴブリン連れて来てるよ…。
「ゴブリンも本番だと思うのよね…」
走り寄るゴブリンに突撃するアリ。両手持ちにした得物を突き出すと避け切れないゴブリンは右の肺を貫かれた。痛みのショックで振り回された腕がアリの肩を打つ。
「いっ!痛いわよっ!!」
次の瞬間には、ゴブリンの顎をツルハシスコップが穿いていた。どうやら成功したらしい。
「大丈夫か?」
「痛いわよ!?」
「アザになってはいけません。今日はこのくらいにして治療しましょうか」
「是非そうしてちょうだい!」
3匹のゴブリンを収納し、川辺に降りる。周りで見てる奴がいない事を確認し、アリはマスクと鎧を脱いだ。俺はゴブリンの袋の中身だけ取り出して、残りを川に流す。鉄貨30の銅貨8枚、こんなものである。
「だいじょぶだいじょぶ、折れてな~い」
「ゴブリンはあんななりですが力はあります。当たるにしても受け流せるようにしたいですね」
「この鎧、打撃には弱いのね…」
ポーションを塗られ、人心地着いたようだ。
「いや、全体的に弱いぞ。当たらない事に重きを置いて行動すべきだ」
「殴られる練習もしなきゃいけないって訳ね…」
「一つずつ、やって行きましょう」
「ほれ、お駄賃だ」
「正当な報酬よね、それ」
袋の中身をくれてやり、アリが鎧とマスクを着けたら街に戻る。
「まだ明るいけどお風呂に入りたいわ」
「あたいも~」
「風呂から出たら皮装備に着替えてニアさんの店に行こうか」
「ゲイン様、先に防具屋に行くのが良いかと。武器屋にも寄るべきでしょうね」
「臭いわよね、分かってるわ」
「じゃあ、装備のメンテナンスしてから風呂だな」
「南門からだと東西一往復するのがめんどいね~」
どこの門から行っても一往復はする事になるんだがな。東西の大通りに出て東へと進み、1本路地に入ってしばらく歩くとニアさんの中古防具屋さんだ。ドアを開けても中には入らず声だけかける。
「こんにちはー、ゴブリンやって来たんだけど、メンテナンスをお願いしまーす」
「あら、その割にはキレイじゃない…1人に殺らせたの?悪い人ね」
「新しい武器を使う練習でね」
「私、殴られたの」
やたらと声の低い店主のニアさんが俺を殺さんばかりの視線をくれて来た。
「ゲイン様ではありませんよ?ゴブリンの攻撃を受けただけです」
ナイスフォローだ。
「……そう。勘違いしちゃったわね。ごめんなさいね坊や」
「ゲインには抱き着かれたわ」
ニアさんの視線が白い。なんて事言いやがる。
「あたいもぎゅってされたい」「私もです」
お前等もか!
「練習だからってほとんど素人の相手に背後から攻撃する訳にはいかんだろ…。それに腕と武器を取っただけだ」
「まあ、痛いよりは良いわ」
「……そう。他意が無いなら良いのかしらね。中に入って装備を出しなさい」
白い視線が収まると、いつものように俺には頭に手を当てて、女達は脱いだ装備を《洗浄》された。更衣室で皮装備に着替えてやがる。俺も着替えたい。そしてアントルゼの鎧をチェックされ、問題ないとのお墨付きを頂いた。
「あくまで皮よりマシ程度と考えておく事ね」
「見た目はキレイなのに、残念ね」
動きやすさと軽さに重きを置いた鎧だからなぁ。運次第で刺突や撫で斬りを防げるってだけなので、殴られたら痛いし折れるし、刺さるし斬れる。当たらないに越した事は無いのだ。
装備を収納したらお礼を告げて、髭もじゃ店主の中古武器屋へと向かう。アントルゼが使用感を親父に告げるが、その状態で慣れろと言われただけだった。後は刃こぼれのチェックをして、シュリーンっと軽く研がれて300ヤン。タララの盾は直す必要無いってさ。あ、小盾返すの忘れてたので返しとく。
「持ってても良いよ?あんま使わないし」
「これはタララの命を守る物だ。移動中に襲われたら一瞬でも使わなきゃならんだろ。持っててくれ」
「ゲイン~」
「イチャイチャするなら出て行け!」
追い出された。これ以上の用事も無いし、風呂に行こうか。
「せっかく東まで来たんだからさ、ギルドに顔出してこーよ?」
タララがギルドに行きたいと言う。売り物はあるけれど、ギルドに金が無いと売るに売れないんだよなぁ。
「冷やかしなんてしたら後が怖いわよ?」
俺の横に寝る2人のうち、どちらかがメロロアになる気がする。
「売り物はあるが…、売るなら商業ギルドだな。ギルド証に振込みしたくないし」
「良将は引き際を弁えると言います。無闇な挑発は控えるのが良いかと」
「挨拶するだけなんだけどなぁ~」
その時、俺の右乳首に刺すような痛みが襲った!金属鎧だからさすれない。
「いっ!」
「何よ?びっくりするじゃない」
「やられた…。メロロアに、俺達がここに居るのを、気付かれた…」
「ほら、やっぱり顔出しとこ?」
仕方なく、混み始めてるギルドに入り、メロロアに一声かけて外に出た。お風呂一緒したいのでご飯我慢してて、だってよ。メロロアの左右にいた女性職員がキャーキャーしてた。何故だ?
宿に戻ると俺は皮装備に着替えた。メロロアが帰るのを待つ事になったので暇だったのもあるが、蒸れるし重いのだ。皮もそれなりに蒸れるのだけど、ベルトを緩めてあるのでまだマシだったりする。暇を持て余した女3人はトイレ行ったりベッドでごろ寝したり、俺の頭を膝に乗せたりと自由気ままに過ごしてる。寝転がるなら鎧を脱ぎたいんだが、ヘルメットしか外させてくれなかった。
「鎧脱ぎたいんだけど?寝にくいんだよ」
「収納なさればよろしいでしょう?鎧を脱ぐ為の1ピルすら、私には惜しい時間なのです」
膝枕する約束はしたけどさ、そこまでマジにならなくても良くね?髪を梳く指が頭皮を優しく刺激して、少し気持ち良い。見上げる先には二つの丘が絶景である。
「あンた、ずっとおっぱい見てるわね」
「首曲げても戻されるんだよ。どこ見りゃ良いんだ?」
「天井のシミでも数えたらどう?」
「シミは二つ山の先にあるんだよ」
トイレから帰って来たアントルゼはベッドに座り、俺にはどうしようも出来ない事を言う。
「見せているのです。じっくり見てください」
「良い眺めだけど、服だしなぁ」
「脱ぎますね?」
「カウモアちゃん、ダメだよ?」
意外と疲れたのか寝転がってたタララが首だけ向けて威嚇する。
「そう言われましても…、戦闘すると興奮状態になりますよね?」
「なるけどさぁ」
「性的興奮も同じく高まるのです。タララ様は感じた事ありませんか?」
「あたいは今、疲れてる方が強いかなー」
今じゃない時は性欲高まってるのか?
「私はそんなのなった事無いわよ?」
「実戦経験の差って奴か?俺なんてガキの頃からゴブリン殺ってるけど、そっちの興奮は無かったな」
「男性はお一人でも処理出来ますからね。女もできますが…」
「街を出た先の宿は一人部屋にしようか」
「ゲインと二人部屋がい~」
「三人部屋と二人部屋ですね」
「俺にプライベートは無い訳か、酷い女達だ」
「申し訳ございません」
頭を下げるカウモアの二つ山が密着する。とても柔らかい。
「増やすなら他所でやってよね?」
「ああ、その件ですが…。避妊魔法を受けると言う手もあります。教会に金貨を納める必要があったので今まで出来ませんでしたが」
「何それ?」
「一時的に子供を授からなくする魔法です。昔の女兵士や冒険者はほとんど施術していたと聞いております。王侯貴族の中にも数多居たとか」
「子を成すのが仕事でしょうに、なんでそんな事するのかしら」
「夫以外の男性と子を成す行為を致すからですね」
男妾であったり若い貴族だったり、要するに体を持て余した貴婦人の遊びで妊娠しては困るからって事で施術を受けるらしい。アントルゼは引いていた。
「夫が妻や妾を持つのに、妻が男妾を持っては行けない道理はありませんよね?」
「まさか、お母様も?」
「それはどうでしょうか。皆が皆、ではありませんから…」
「ただいま戻りました~。真面目なお話ですか?」
「いや、破廉恥なお話だったよ」
「続きはお風呂と食事の後でじっくりと!」
お前らエロ話好きだなー。けど、避妊魔法なんて初めて聞いたぞ。
公共浴場で疲れた体を解し、酒場のような食堂で明日への活力を摂取した。メロロアが勧めるもんだからエールも飲んで、ほろ酔い気分で部屋に戻って来た。
「…で、避妊魔法ですがぁ…、ここでは受けない方が良いですね~」
フラフラのメロロアは、カウモアの話を一通り聞いて、施術を否定をした。
「どして?」
「だってぇ、ここの司祭、スケベで有名ですよぉ?スケベ親父に股を見せられます?」
有名なの?知らんのだけど。
「え!?アソコ…見せるの?」
「私もそのように聞いております。女性司祭にしてもらうのが良いでしょうね」
「ゲインさん、それまではお預けです。残念ですが他の所でして差し上げますね」
「なんで俺が致す前提になってんだ?」
「しなくて良いわよ?けど、どうしてもしたくなったら、避妊魔法してないと困るのよね」
「どうしてもしたくなったら1人でするぞ?」
「私はゲイン様としたいです」
「あたいが先!…だけど、なんか怖いよぉ」
「私はこれでも自制出来ますから」
「切羽詰まってるんじゃなかったかしら」
「これでも修練は積みましたからね。ゲインさんが気持ち良くなりたいのでしたら、いつでも一肌脱ぎますよ」
「私はまだまだ修練不足のようですね…」
カウモアは項垂れて部屋の隅にあるベッドに潜ってしまった。
「一人部屋を借りるのは良いと思いますよ。後は、耳栓でも用意しましょうか」
「カウモア、おっぱい枕しても良いぞ?」
「…お気遣い嬉しいですが、もっと悶々としてしまいます…」
何だか寂しそうな様子だったので誘ってみたが断られてしまった。俺もフラフラして来たので寝る事にしたよ。その日の夜は左右にメロロアとタララが着いて寝た。寝返り打てなくて寝にくかったけど、とても静かな夜だった。
朝になって、耳栓されてる事に気付いた。外では危険だが、安心して寝られる場所なら良いかも知れない。
現在のステータス
名前 ゲイン 15歳
ランク C/E
HP 100% MP 100%
体力 D
腕力 E
知力 E
早さ D-
命中 E-
運 D
所持スキル
走る☆☆ 走る☆☆ 走る 走る 走る
刺突☆☆ 刺突
硬化☆☆ 硬化 硬化
投擲☆☆ 投擲
急所外物理抵抗☆☆
飛躍☆ 飛躍
木登り☆
噛み付き☆☆ 噛み付き 噛み付き
肉体強化 肉体強化☆
腕力強化☆ 腕力強化 腕力強化
脚力強化☆ 脚力強化☆ 脚力強化
知力強化☆
体力強化☆ 体力強化 体力強化
ナイフ格闘術☆ ナイフ格闘術
棒格闘術☆
短剣剣術☆ 短剣剣術☆
避ける☆
魅力☆
鎧防御術
察知
探知
マジックバッグ
マジックボックス
鑑定☆ 鑑定
魅了
威圧
壁歩き
水魔法☆ 水魔法
|├ウォーター
|├ウォッシュ
|└デリートウォーター
├ウォーターバレット
├ウォーターウォール
└ボーグ
土魔法☆
├ソイル
├サンド
└ストーン
火魔法
├エンバー
├ディマー
└デリートファイヤー
所持品
革製ヘルメット
革製肩鎧E
革製胴鎧E
皮手袋E
皮の手甲E
混合皮のズボンE
皮の脚絆E
水のリングE
水のネックレスE
革製リュック
├草編みカバン
├草編みカバン2号
├紐10ハーン×9 9ハーン
└布カバン
├冊子
├筆記用具と獣皮紙
├奴隷取り扱い用冊子
└木のナイフ
革製ベルトE
├ナイフE
├剣鉈E
├剣鉈[硬化(大)]E
├解体ナイフE
└ダガーE
小石中☆500
小石大☆450
石大☆20
冒険者ギルド証 0ヤン
財布 ミスリル貨238 金貨15 銀貨16 銅貨14
首掛け皮袋 鉄貨74
箱中 681,835→666,435ヤン
ミスリル貨2 金貨31 銀貨142 銅貨144 鉄貨35 砂金1250粒
マジックボックス
├箱
|└シルクワームの反物×33
├未購入チップ各種箱
├医薬品いろいろ箱
├食料箱×2
├調理器具箱
├ランタン箱
|└油瓶×10 9.4/10ナリ
├竈、五徳
├蓋付きバケツ大
├テントセット
├マット×4
├毛布×4
├洗濯籠
|├耐水ブーツ
|└耐水ポンチョ
└宝石
鉄兜
肩当
胸当
腰当
上腕当
ゲル手甲
ゲル股当
帆布のズボン
脛当
鉄靴
熊皮のマント
籠入り石炭0
石炭86ナリ
ランタン
油瓶0.3/0.8ナリ
着火セット
服箱
├中古タオル
├中古タオル
├未使用タオル×2
├中古パンツ
|パンツE
├未使用パンツ×2
├ヨレヨレ村の子服セット
├サンダル
├革靴
|街の子服AセットE
└街の子服Bセット
スキルチップ
ハシリウサギ 0/4521
ウサギS 0/1
ウサギG 0/1
ハシリトカゲ 0/3166
ハシリトカゲS 0/1
ハチ 0/2859
ハチS 0/1
カメ 0/3459
カメS 0/1
ヨロイトカゲS 0/2
石 0/1861
石S 0/1
スライム 0/2024
オオスズメ 0/1573
トンビS 0/4
フォレストモンキー 0/972
ウルフ 0/1070
カラードウルフ 0/1
ワニS 0/1
グラスベア 0/1
ラージアントワーカー 0/100
ラージアントソルジャー 0/1
蝶 0/204
花 0/161
腕 0/541
腕S 0/1
腕G 0/1
脚 0/650
脚S 0/101
脚G 0/1
頭 0/576
体 0/523
体S 0/1
体G 0/1
棒 0/627
ナイフ 0/640
ナイフS 0/1
短剣 0/352
短剣S 0/100
鎧S 0/1
袋S 0/1
箱G 0/1
水滴 0/446
水滴S 0/1
立方体 0/525
火 0/4
魅了目S 0/1
威圧目S 0/1
ドクハキヤモリ 0/1
頭三本線S 0/1
頭三本線G 0/1
眼鏡S 0/100
眼鏡G 0/1
1
お気に入りに追加
192
あなたにおすすめの小説
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
異世界の叔父のところに就職します
まはぷる
ファンタジー
白木秋人は21歳。成績も運動もいたって平凡、就職浪人一歩手前の大学4年生だ。
実家の仕送りに釣られ、夏休暇を利用して、無人の祖父母宅の後片付けを請け負うことになった。
そんなとき、15年前に失踪したはずの叔父の征司が、押入れから鎧姿でいきなり帰ってきた!
異世界に行っていたという叔父に連れられ、秋人もまた異世界に行ってみることに。
ごく普通な主人公の、普通でない人たちとの異世界暮らしを綴っています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以前にアルファポリス様で投稿していた処女作です。
物語の大筋は変わっていませんが、文体を完全な一人称に、誤字脱字と文章修正を行なっています。
小説家になろう様とカクヨム様でも投稿している物の逆輸入版となります。
それなりに書き溜め量があるので、さくさく更新していきます。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
あ、出ていって差し上げましょうか?許可してくださるなら喜んで出ていきますわ!
リーゼロッタ
ファンタジー
生まれてすぐ、国からの命令で神殿へ取られ十二年間。
聖女として真面目に働いてきたけれど、ある日婚約者でありこの国の王子は爆弾発言をする。
「お前は本当の聖女ではなかった!笑わないお前など、聖女足り得ない!本来の聖女は、このマルセリナだ。」
裏方の聖女としてそこから三年間働いたけれど、また王子はこう言う。
「この度の大火、それから天変地異は、お前がマルセリナの祈りを邪魔したせいだ!出ていけ!二度と帰ってくるな!」
あ、そうですか?許可が降りましたわ!やった!
、、、ただし責任は取っていただきますわよ?
◆◇◆◇◆◇
誤字・脱字等のご指摘・感想・お気に入り・しおり等をくださると、作者が喜びます。
100話以内で終わらせる予定ですが、分かりません。あくまで予定です。
更新は、夕方から夜、もしくは朝七時ごろが多いと思います。割と忙しいので。
また、更新は亀ではなくカタツムリレベルのトロさですので、ご承知おきください。
更新停止なども長期の期間に渡ってあることもありますが、お許しください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる