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来るべき日に備えていろいろやって行くぞ
しおりを挟む手持ちの金では999枚買う事が出来なかったので俺も99枚にしようと思う。アントルゼと同じ枚数だからパーティー資産にしたいが、いずれ999枚使うのだから払う事にした。財布から148500ヤンを払おうとして金貨が足りない。んもー!
「どうかなさいましたか?」
「アリのチップ、999枚使おうと思ったら手持ちが無かった。99枚に妥協したら金貨が足りなかった。辛い」
「雨が上がったらギルドに行ってお金にして貰いましょう。両替でも良いですね」
「だよな。ミスリル貨ばっかり持ってても使いにくいや」
「そろそろ箱を片付けましょう。私の膝がゲイン様を待っております」
「箱…、ああ箱だ。33箱あるから8つずつ持ってってくれ」
「やっと自分用の家具が手に入るのね」
アントルゼの上に雲が出来てる。その雲を割って、アリの顔が現れた。家の中なら外しても良いのだがな…。
「バケツもあるけど1つは洗濯用に空けとけよ?それと、2人は2階に部屋を移動してくれ。もう奴隷じゃないんだしな」
「どうせ引き払うのでしょ?このままで良いわよ」
「私もです」
カウモアも同意見だそうな。テーブルを片付け、みんなに8箱ずつ持たせたら、女達は洗濯しに浴室へ向かう。俺は自室で洗濯するよ。下着を見られるのは恥ずかしいみたいだしな。
取り出した箱にタオルとパンツとよれよれを入れて…、せっかくだしアクセサリーを着けてみよう。右手の人差し指に入らないので小指にはめて、ネックレスを着ける。
今のMPは77%。ウォッシュとデリートウォーターで16%減るはずだ。
「ウォッシュ」
箱の中に魔法をかけるとベシャベシャゴトゴト音がする。MPは73%。4%抑えられた?消費が半分になった?洗濯物を取り出して板に伸してデリートウォーター。MPは69%…やはり半分になってるみたい。後でタララにもやってもらわなきゃな。
板を持って居間に向かい、洗い終える3人を待ってると、しばらくしてカウモアが呼びに来た。
「お待たせしました。板を貸して頂ければ乾燥させて参ります」
「タララに俺のアクセを付けさせて比較してみたいんだが」
「タララ様の消費は10%ですよね?」
「うん」
「でしたらその確認もして来ましょう」
もう俺がしなくても良くなったし、板を貸して横にでもなっていよう。カウモアが浴室へ向かうと、俺は1人横になり、雨音を聞きながら目を閉じる。
「ゲイ~ン、洗ったよ~」
「ん、魔力の消費はどうだった?」
「4%減っておりました」
「そうか。消費魔力半減じゃ無かったかー」
「さっきは1つ7000とか言ったけど、これ結構なお宝よね」
「5個も着けたら撃ち放題だな」
「同じの見つけたら後3つ買いましょうよ」
「熊のチップも取りに行くし、出てくれると安上がりだな」
7000ぽっちで最大値の2%も下げるとか、なかなかとんでもないアクセじゃないか。
洗濯が終わってみんな暇を持て余す。寝転がってしがみついて来たり、甘いお湯を飲んでみたり、近くに座って笑顔でこちらを見ていたり、三者三様のくつろぎ方をしているな。俺はと言うと、鑑定を使って未鑑定チップ1000枚を検める。
立方体 250
白の土魔法のスキルチップ
使用する事で土の基礎魔法のスキルを取得できる。
水滴 52
白の水魔法のスキルチップ
使用する事で水の基礎魔法のスキルを取得できる。
ナイフ 120
白のナイフのスキルチップ
使用する事でナイフ格闘術のスキルを取得できる。
短剣 120
白の短剣のスキルチップ
使用する事で短剣剣術のスキルを取得できる。
サル 115
白のフォレストモンキーのスキルチップ
使用する事で木登りのスキルを取得できる。
鳥 213
白のオオスズメのスキルチップ
使用する事で飛躍のスキルを取得できる。
ウサギ 130
白のハシリウサギのスキルチップ
使用する事で走るスキルを取得できる。
チップの正しい名前が分かるのはありがたいが、☆が付かないのでどれも使う気にはならない。短剣で思い出したが、短剣の銀チップを買ってあったんだった。これは星が付くので千切らねば。
タララを剥がして少し間合いを取り、無心で千切り始めた。
ビリッ、スーハー、ぺっ。
ビリッ、スーハー、ぺっ。
久しぶりに100枚千切りしたな。噛み付きの精度も調子良く、両手で持った2枚に齧り付き、素早く100枚終えてしまった。
「おつかれ。何でそんなに早いのよ」
アントルゼがコップに入れたお湯を持って来た。多分甘いお湯だ。
「噛み付きの賜物だな」
「誰が触ったか分からない物、よく口に入れるわね」
「気にしないようにしてたのに…」
「気にはしてたのね、失言だったわ。これ飲みなさいよ」
「飲む前に口をゆすぎたいな…」
「ゲインが苦労をわかちあってる~」
「タララ様も100枚千切ってみては?」
「め~んどくさ~い」
「鉄貨も貯まれば山になるのに。タララはその分種類で稼いでもらおうかな」
白チップ2種類で100枚分と考えれば安上がりで強くなれるよな。種類を集めるのが大変なのだけど。
「ゲイン様、そろそろお昼の支度を始めようと思います。干し肉を頂けますか?」
「ああ。やっと焼いて食えるな」
「わ~い、やっと肉が食える~」
俺を枕にしてるタララも嬉しそうだが、肉は朝にも食べただろ。みんなで厨房に向かい、飯の支度をしよう。
俺が作る柔らか干し肉は、美味い。自画自賛する程度には美味いので仕方ないよな。その分宿や酒場の値段よりだいぶ高値を付けなきゃならん。ダンジョンに潜っていた時に気付いたんだが、売り物の干し肉ってメインの肉に小さな肉片を貼り付けて作られてるんだよ。筋や売り物にならない肉片を有効活用してると思えば聞こえが良いが、精肉としても価値の低い部位をメインに使ってたりするので3枚200ヤンの低価格が実現するのだ。
日持ちしにくい弱点はあれど、しっかり保存して10日程度の遠征なら持つので普通に売れると思う。1枚200ヤンだがな。
そんな1枚200ヤンの炙りをガジガジやってるタララは600ヤン目だ。
「はぁはぁ、ゲインのお肉、んまぁ…」
食べられちゃったよ、俺。
「美味しいけど、変な事言わないでよね?」
「ぜひ食べて頂きたいです」
「食事中にいかがわしい事言わないでよね?」
「1枚200ヤン。売れると思うか?」
「んもう!」「安いわね」「売れますね」
「まあ、売る気はないけどな。本業が疎かになっちまう」
「本業がお金稼ぎだと思ってたわ」
「なら、雨が上がったら金稼ぎに行くかね」
「外行くの?」
「木の伐採もしたいからな。街の近くで少しやろう」
昼食を終えて、外出の支度をして待ってると、雨は午後を過ぎて上がった。
「ゲイン様、行きましょうか」
「地面がぬかってるだろうから、足元は気を付けてな」
「久しぶりのカエル男だね」
「タララ、今度熊皮のマント買ってやるよ」
「がおー食べちゃうぞー」
「とっとと行きましょ」
熊、アリ、牛、カエルが街をゆく。そう言えば俺、既に動物園の1匹になってたわ…。げろげーろ…。西門の門番がギョッとしてる。この中だとタララが1番まともに見える?いやいや俺だろ、頭装備は普通に人だからな?門を潜り、畑のあぜ道を通って森に向かう。
畑の奥は少し拓けて、その先に森がある。ゴブリンもここまで街に近いと近づいては来ない。
「何も居ないわね」
「居ない場所に来たからな。居たら居たで問題だ」
森に入って少しの所で良さそうな木を探す。木の間隔が近過ぎたり、傷のある物が良い。仮設の壁だし、終わったら薪にするからな。
「ゲイ~ン、これどう?」
タララが見つけたのは大きなホラの空いた直径60ドン程の木だ。切っちゃおう。
「山奥に向かって倒すから、みんな一度戻って来てくれー」
「「はーい」」「りょうかーい」
「切るのにいちいち集まるの?」
集まったアントルゼが疑問を口にする。
「危険だからな、お約束ってヤツだよ。あそこの木まで離れてくれ」
「はーい」「はいはい」「了解です」
折角だから新しい剣鉈の具合を見ておきたい。スコッと抜いた黒い剣鉈を両手で握って振りかぶった。
スッ
「は?」
真横への一振りは幹を貫通して振り抜かれた。
「空振りじゃないの」「いえ、当たってます」
「良い鉈だけど、切れ過ぎだな。武器屋の親父がヘマしたのかな?」
「ヘマで切れ味良くなるの?」
「切れ味がこれでヘマしてなかったら飛んでもない業物…だったわコレ」
「ゲイン様、武器に使われないようにお気を付けて」
「そうだな。慣れるまで使うしかないよな」
切れてない方の幹を、慎重に切る。少しズレたが水平に振り抜けた。切込みを切り開いて倒すのだが、当てる程度の力でざっくり入ってくので結構面倒臭い。ちまちま削り取るように山側の幹を大きく抉り、反対側はスパッと切り落とす。
ミシミシミシミシ…
「倒れるぞー」
俺も素早く逃げる。木こりが事故をおこすのは倒れて来る木の下敷きになるより、切った幹に突進される方が多いのだ。
ズズズ……ズン…
「ふぅ」
「コレを仕舞えば良いのね?」
「加工してからな。水吸って重くなってるから、そのままだと50ドンも切れないぞ」
「雨上がりですから理解できます」
「んー?前の木は長く切れたけど?」
「ある程度乾いてたんだよ」
「そっか」
話をしながら枝を払う。切り落とすだけならこの鉈すごく楽だ。
「ゲイ~ン、あたいもなんかやりた~い」
「鉈を貸すから皮剥きを頼めるか?」
「どーやんの?」
タララに皮剥きを教えてやるが、その前に木を短くしてしまおう。根元をキレイに切り取るのはマジックボックスでやる。末端の切り欠きを収納して取り出すと結構重かった。更に3ハーンで切って行く。薄ーい円柱を収納する事で収納出来ない重さの物を切り取る事が出来るのだ。
準備が整いさてさてレクチャー。木の皮に縦の切れ目を2本入れ、下から丁寧に引き剥がす。剥がれた縁に鉈を差し込み、めくりながら剥がして行く。めくりながら回して行くのは力持ちのタララにも出来ないので、左右にめくって完了とした。
屋根の建材になったりするのだが、今回は売りに行かないし、焚き付けにしか出来ないな。アントルゼに俺のアクセを貸して、脱水してもらおう。
「デリートウォーター…。本当に消費が抑えられてるわね。25発は撃てるわ」
「倒れますよ?」
「知ってるわよ!けどゲインの魔法みたいに辺り一面カラッカラにはならないわね」
「俺そんなにカラカラにはしてないぞ?」
「それだけこの木に水分が多いと言う事なのでしょう」
「ふぅん、そうね。もう1発いっとく?」
「この後バラして収納するから温存しようか」
「ゲイン、次はよはよー」
「はいはい待っとれー」
3ハーンに切った丸太の皮を剥いて乾かす事4本。出来るだけ水平に、中心を狙って薄ーい板を収納する。ゴトッと音を立てて切れた。
「みんなもやってみれ。出来るだけ水平に、出来るだけ薄くな」
「ゲイン…、斜めになっちゃったの…」
「地面が傾いてるからだな。次は切る物の水平を見ような。今回はそのまま切って大丈夫だぞ。板にしてみれ」
「そうするわ」
「ゲイン様、縦に切ると崩れてしまいますがどうしましょう?」
「カウモアのは水平に切れてるからそのまま板にしてくれ」
「かしこまりました」
「ゲイ~ン、あたいもイチャイチャしたーい」
「後ろから抱きしめてやるからこの辺りで切ってみろ」
「…うん、逆に無理。横で見てて…」
「赤くなるな。はよ切れ」
「あ~い」
「今度は縦に、この辺とこの辺な」
「あ~い」
「切れたら倒すぞー」
「あたいのヤツ、みんなのより多くない?」
「柱だから四角くしてんだ」
「そーなんだ」
「盾刺して押すぞー」
「棒で良くなーい?」
「棒でも良いぞー」
タララの角材は10ドン四方で16本取れた。カウモアの板は1ドン厚で幅はさまざま58枚、俺は角材8本の板25枚、アントルゼのは2ドン厚の板20枚と端材になった。そして樹皮。枝葉やや切り株、余す事なく、もろもろ収納して帰る。貴重な薪になるからな。
家に着くと、業者さんが作業を始めてた。今日は門柱の割れ欠けを直すだけなので今からでもやっておきたいのだと。で、もう施工は終わったそうで、固まるのを待つだけだそうだ。挨拶を交わし帰って行った。
「夕飯は食べに行く事にして、壁をやってしまうか」
「あいよー」「先に済ませるのが良いわね」「了解です」
タララの角材を地面に置いて、大体の当たりを取る。正面に6ハーン、左右のコの字に3ハーンで作ってく。
尖った端材で角材のあった場所に線を引き、それを挟むように10×10ドンの穴を切り取るのを角材1本につき2ヶ所。深さは90ドンにした。開けた穴にアントルゼが角材を2本ずつ刺して行く。それをタララが金棒でトントン埋め込んだ。
2本の角材の間にカウモアが1ドン厚の板を挟むと、タララがガツガツ金棒で叩いて落としてく。間隔の開いた角材は俺が紐で締め、更に板を挟み込んだ。それを4ヶ所やってコの字の壁が完成した。
「外出られないと思うのだけど」
「大丈夫。板1枚外せば良いんだ」
引き戸のように板1枚を引っ張りずらすと、出入りしにくい出入口となった。2枚ならもっと楽に出入りできそうだ。
「それでそこの板を幅広のって指定したのね」
「魔物避けの壁は全部丸太で作るんだけどな。それだけだとゴブリンが登って来てあんまり効果ないんだ。だから壕とセットで作るのさ」
足と濡れた装備を洗ったら、ランタンと鍋を持って食事に行こう。
行く先はいつものギルド直営宿。此処に金を落とすのは癪だが女将さん達のせいではないので仕方ないよね。800ヤンでお腹いっぱい。
スープ1000ヤン分、ソーサー800ヤン、干し肉1600ヤン。1人850ヤン。今回はみんなで払ったけど、そろそろパーティー用の資金を分けたいな。一括で払った方が手間が無いし鉄貨が邪魔だもの。
火をもらい、ギルドに顔を出す。買取りカウンターで、不要なドロップを換金する。
ゴブリンナイフ 程度中 24本×50ヤン 1200ヤン
コボルドナイフ 程度中 32本×50ヤン 1600ヤン
コボルドソード 程度中 1本×5000ヤン 5000ヤン
コボルドマント 程度中 8枚×2500ヤン 20000ヤン
知力のリング 8個×4000ヤン 32000ヤン
命中のリング 2個×4000ヤン 8000ヤン
体力のリング 2個×4000ヤン 8000ヤン
速さのリング 4000ヤン
魔力のネックレス 6本×5000ヤン 30000ヤン
知力のネックレス 4000ヤン
総額 113800ヤン
傷があっても石が無くても買取り価格が変わらなかった。ギルドはあくまで効果で査定をすると言う事だろう。5人で割って22760ヤン。俺は40ヤン払って22800ヤンを受け取り、メロロアへの報酬を預かった。
「そうだ。みんなも金降ろしとけよ」
「現金で払うから全額降ろしてちょうだい」
「私も同じく全額で」
「あたいは今の手持ちの細かいのを預けて端数でおねがーい」
「え?はい。承りました」
アントルゼとカウモアの預金額は大した事無いからすぐに支払われたが、タララの端数は額面が大きいのか待ったがかかった。
「あの、タララ様?端数は万からで構いませんか?」
「100万からで」
「あの…、そうなりますとギルドマスターの承認が…」
「アイツ居ないから10万にしとけ」
「居ない事もあるのね」
「じゃあ10万の位からねー」
「はい…。ちなみに、何かのお支払いでしょうか?それでしたらギルド証での引き落としが便利ですよ?」
「たかが小銭にいちいち使い道を聞くのかね?」
「いえ、そう言う訳では…」
「酒場とかお風呂、露店や出店、村に行った時なんかもだけど、現金使う場所多いじゃん?夕飯食って、パーティーで朝昼の飯を買って…ってするとさ、現金ある程度持ってたいんだよね」
「わかり…ました。失礼しました」
タララが受け取る端数はミスリル貨8枚が含まれていた。見たくて覗いてる訳じゃないぞ?周りから見られない為だ。
「そうだ。両替お願い。分配するのに必要なんだ」
「はい。いくらでしょうか?」
「じゃあこれ。金貨にして」
ミスリル貨を出すと凄く集中して両替していた。集中と言うより嫌そうにしてた。何で自分の物でも無い金を扱うのに嫌そうな顔するんだ?しかも価値の変わらない両替だぞ?
出された金貨をササッと仕舞い、長居はしないで帰るに限る。
「んじゃ、帰るか」
「あーい」「お風呂入って寝ましょ」「そうですね」
家に着き、着替えてラージアントワーカーのチップを買う。99枚、148500ヤン。箱中に入れて明日みんなに渡そう。マットに横たえ、チップを千切った。
スキル : 肉体強化 肉体強化☆
肉体強化 : 肉体に関わる能力を強化するスキル。体力、腕力、脚力、が僅かに増し、体力、腕力、脚力、が少し増す。
熊のチップも集めなきゃな。ブラウンさんに卸すからアリのチップももう少し欲しい。鎧が出来るのが明後日で、テントはいつ…だっけ……zzz
朝食を食べながら、テントはもう出来てるだろうと言う事を知る。ギルドに寄った時はもう暗かったし、雨だから行けなかったって事で勘弁してもらおう。洗い物を終えて街に繰り出す。近い順に雑貨屋から行こうか。
「雑貨屋?何買うの?」
「俺は袋を買うよ。でな、パーティー資金を入れるのに使おうと思ってるんだ」
「パーティー資金からみんなの買い物をする訳ね?」
「特に食事代な。みんなで財布ジャラジャラしてるのは時間の無駄かと思った」
「食べる子と食べ過ぎない子が居るのだけど」
「その分動け、ちゃんと食べて大きくなれ」
「アントルゼはあの頃より遥かに体を動かしています。もっと食べても問題ないかと」
「急には無理よ、長い目で見て。じゃあ、私達も幾許か渡しておく?」
「いや、俺がチップ買ったからアリ99枚分貯まってる。しばらくはそれで持つだろう」
話をしながら雑貨屋に到着。油売りのお爺さんに挨拶し、店員のおねーさんに袋を見繕ってもらった。
布袋 6枚 12000ヤン
マタルが1ナリ入る。
鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、ミスリル貨、そしてお釣りを入れたり予備用の6枚だ。お金を収納する時は各袋に仕分けする事は出来ないが、取り出す時は鉄貨1枚から出せるのでお釣り袋は欠かせない。仕分けは後でやるとして、一先ず袋を箱中に仕舞った。
俺の買い物は終わってしまったが、女達は店の中に隠れて何やら物色してるようだ。女の買い物は長いので、暇だな…あ。
「帆布か皮のズボンが欲しいんだけど、あるかな?」
「はい、ありますよー。補強されたのが良いですよね?」
「鎧の下に着る物だから補強無しが良いな。で、出来れば帆布で。皮だとブリブリ言うからさぁ」
「では、持って来ますのでお待ちくださーい」
「ゲイン様、鎧下を探しておいでですか?」
店員と入れ替わりでカウモアが現れた。牛と言いアリと言い、他の客がギョッとしてるぞ。俺もだが。
「股当着けると当たるのが気になってな。そっちはどう?慣れそうか?」
「慣れはするでしょうが、着替え用に用意するつもりで探し出して来ましたよ」
カウモアが迷宮のような店内から探し出して来たのは、帆布で出来たズボン…のような物だ。脚を入れる筒に紐が1本付いている。それが2つと少し幅広の紐1本。どうやって履くんだろ?
「気になりますか?」
「履いた事無いからなぁ。なんでくっ付いて無いんだ?」
トイレがしやすいのだと言う。そんな話を聞いてると、店員がジト目寄って来た。カウモアの下履きは女性用で、俺は下着を凝視する変態さんと言う事らしい。
店員が持って来た下履は男用。普通にズボンだった。
「男もあっちの方が便利じゃないか?股当の付け外しなんてそれ程手間じゃ無いけどさ」
「…女性はどちらもしゃがんでしますので…」
「俺もしゃがんでした方が良いのかな?」
「ゲイン、そう言う事じゃないのよ?」
どうやら違うようだ。アントルゼも服を抱えて現れた。布の服多め。そしてタララもやって来た。
それぞれお会計して店を出る。俺のズボンは15000ヤン。丈夫な布なので下手な皮鎧並の値段がする。ギルド証でお買い上げ。
「あんた、下着は新調しなかったの?」
「まだ履けるし」
「はぁ。男はそんなモノなのかしらね。そうだわ、誕生日教えなさいよ。誕生日には下着をプレゼントしてあげるわ!」
「アントルゼ、そう言う贈り物は恋仲の者がするのですよ?」
「そ、そうなのね…」
「誕生日に物を贈る習慣が無いもので、よく分からんが、そうなのか…」
ちょっとありがたいなと思ってしまった。俺、買わなくて済むなら1年とか買わないからなぁ。ただ、逆に贈るのは絶対出来ないな。
ちょっと恥ずかしい思いをしながら着いたのはテント屋。やはり窓が必要な佇まいである。
「こんにちはー、テント出来てるー?」
「…いらっしゃい。ハーレム用のは置いてないぜ…って、あんたらか」
「ハーレム用と言ったら天幕ね。絨毯ふわふわの」
「絨毯かー、俺の部屋にあるヤツで良いか?」
「金を払って早く持ってけ!コイツだ!」
フレームに、アウターとグランドと壁。野外用にペグも付いて、袋に入って紐で縛られ15万ヤン。これもギルド証でお買い上げだ。
「意外と安いわね、勉強したの?」
「同じ構成で売らせてもらうからな、情報料代わりだ…と言いたいが、インナーが無いからその分普通に安いんだ。その分フレームは1本追加したぞ?強度に難があったからな。やはり三角柱は強い」
窓の無いテント屋から出て、食料品店で肉を買う。干し肉は腐らない限りあるだけ欲しいのだ。塩と香辛料も買っておく。肉5ナリで5000ヤン。干し肉1枚200ヤンを超えてしまう良い肉だ。タララよ、よだれを拭け。その後は敷居の高い防具屋に寄って進展を聞き、家に戻った。
「お肉焼こ?ねえお肉!お肉ぅ~」
「1枚だけなら良いぞ?」
「ゲ~イン~」
「お肉見て発情期になってるわ」「見ちゃいけません」
昼飯はタララに2枚、他1枚で焼く事にした。切って焼くのは俺。タララにやらせると食われるか、よだれソースがかかるだろうからな。
1/5ナリになるように収納で切り分けて25枚。20枚は塩水に漬けて保管。残りの5枚は香辛料をまぶして待つ。肉食獣の目が光るので失敗は許されない。
スープが煮え、ソーサーが温まって、ようやく肉を焼く。油を垂らした熱い焼き鍋に、焼く直前に塩をまぶした肉が悲鳴をあげる。さあどんどん焼くぞー。
3枚目を焼き始めたら1枚目の様子を見る。茶色になってるので引っくり返す。両面が茶色くなったら皿に乗せて、焼けた順に重ねてく。5枚焼いて、配膳したらみんな揃っていただきます。
「んまっ、んまっ」
「ゲインって焼き方上手よね。なんでなの?」
「小鳥を頭からバリバリ食うためだよ」
「骨ごと食べるのですか?」
「小鳥は骨を食う、なんて言われてるしな。バリバリ食えるくらいじっくり焼かないといけないから、自然と焼き加減は覚えたよ。数少ない、村の子が勝手に食っても怒られない食い物の1つだったんだ」
「愛でるだけの者だと思ってたわ」「同じく…」
以前野営した川のほとりに穴を掘って水溜まりを作り、罠で捕まえた小鳥をその場で焼いて…ってしてたんだ。キレイに抜けた羽は野菜に変わるのでみんな必死だったな。
片付けをしたらやる事が無くなったので着替えて寝よう。せっかくだし、帆布のズボンを履いてみようかな。部屋に戻って鎧を外し、ズボンも脱いで帆布のに履き変えた。ちょっとゴワゴワ、厚くて硬め。鉄靴と股当を着けて動いてみる。布だからしゃがんでもブリブリ言わない。合格。ちょっと庭でも歩いてみるか。
トントン。
「ゲイン、いるかしら?」
ちゃんとノックするのはあの2人。声からするとアントルゼだ。
「なんぞー?」
「テントを張りましょ?現地に着いて作り方に手間取ってたら馬鹿みたいだもの」
それもそうか。アントルゼにみんなも呼ぶようお願いし、俺は庭へと向かった。
「ゲイン~、来たよー」
「ゲイン様、鎧下を変えたのですね」
「なんかゴワゴワだけど良い感じだよ」
「何度か洗うと柔らかくなりますよ」
「さ、テント建てましょ」
アントルゼが急かすので袋からフレーム等を取り出してみんなで確認する。
大袋
革紐2本
アウター
グランド
壁2枚
フレーム短6本
フレーム長4本
木製ジョイント8個
皮ベルト2本
小袋
ペグ12本
「フレームが2種類あるな」
「4本の方が三角側ね。ジョイントは2つ予備のハズよ」
「ねね、この釘っぽいのはどこに刺すの?」
「12本…。いちにいさん…。フレームの、床に着く所に刺すのかもね」
「アウターの裾に紐が付いています。こちらに縛る可能性はありませんか?」
「ペグは最後だろうし、先に形にしてしまおうか」
フレーム短を2本繋げて長くする。ジョイントの穴に差し込み三角柱にして、下辺を皮ベルトで留める。三角の壁をフレームに縛り付け、たるんだ皮ベルトを調整した。先に三角だな。そこにアウターをバサバサっとかけて、角を合わせて内側に付いてる紐でフレームを固定する。この時点で更に確認。
ペグは長辺に4本ずつ、三角に2本ずつ付けるようだ。ハンマーが欲しい。タララの金棒で差し込んで縛り付けた。最後にグランド敷いて出来上がり。靴脱いで入ろう。
現在のステータス
名前 ゲイン 15歳
ランク C/E
HP 100% MP 96%
体力 D
腕力 E
知力 E
早さ D-
命中 E-
運 D
所持スキル
走る☆☆ 走る☆☆ 走る 走る 走る
刺突☆☆ 刺突
硬化☆☆ 硬化 硬化
投擲☆☆ 投擲
急所外物理抵抗☆☆
飛躍☆ 飛躍
木登り☆
噛み付き☆☆ 噛み付き 噛み付き
肉体強化 肉体強化☆
腕力強化☆ 腕力強化 腕力強化
脚力強化☆ 脚力強化☆ 脚力強化
知力強化☆
体力強化☆ 体力強化 体力強化
ナイフ格闘術☆ ナイフ格闘術
棒格闘術☆
短剣剣術☆ 短剣剣術☆
避ける☆
魅力☆
鎧防御術
察知
探知
マジックバッグ
マジックボックス
鑑定☆ 鑑定
魅了
威圧
壁歩き
水魔法☆ 水魔法
ウォーター
ウォッシュ
デリートウォーター
ウォーターバレット
ウォーターウォール
ボーグ
土魔法☆
ソイル
サンド
ストーン
火魔法
エンバー
ディマー
デリートファイヤー
所持品
鉄兜E
肩当E
胸当E
腰当E
上腕当E
ゲル手甲E
ゲル股当E
脛当E
鉄靴E
革製ヘルメット
革製肩鎧
革製胴鎧
皮手袋
皮の手甲
混合皮のズボンE
帆布のズボン
皮の脚絆
耐水ブーツ
耐水ポンチョ
水のリングE
水のネックレスE
草編みカバンE
草編みカバン2号E
布カバンE
革製リュックE
木のナイフ
ナイフE
剣鉈E
剣鉈[硬化(大)]E
解体ナイフE
ダガーE
革製ベルトE
小石中391
小石大344
石大☆20
冒険者ギルド証 10,000,000→9,835,000ヤン
財布 ミスリル貨9 金貨10 銀貨7 銅貨14
首掛け皮袋 鉄貨34
箱中 136500ヤン
ミスリル貨 金貨 銀貨 銅貨 鉄貨 お釣り
メロロア分 29360ヤン
マジックボックス
各種お宝
冊子
筆記用具と獣皮紙
奴隷取り扱い用冊子
寸胴鍋
大鍋
ヤカン
お玉
コップ
皿
カトラリー
竈
五徳
木ベラ
籠入り石炭0
石炭86ナリ
洗濯籠
蓋付きバケツ大
多目的板
蓋の無い箱
敷物
ランタン
油瓶0.5/0.8ナリ
着火セット
テントセット
翡翠特大
中古タオル
中古タオルE
中古パンツ
パンツE
ヨレヨレ村の子服セット
サンダル
革靴
街の子服AセットE
街の子服Bセット
スキルチップ
ハシリウサギ 3152/4521
ウサギS 0/1
ウサギG 0/1
ハシリトカゲ 2056/3166
ハシリトカゲS 0/1
ハチ 1742/2859
ハチS 0/1
カメ 2000/3459
カメS 0/1
ヨロイトカゲS 0/2
石 4/1861
石S 0/1
スライム 1023/2024
オオスズメ 416/1573
トンビS 0/4
フォレストモンキー 830/972
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ワニS 0/1
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腕 440/541
腕S 0/1
腕G 0/1
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脚S 0/101
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体S 0/1
体G 0/1
棒 526/627
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ナイフS 0/1
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短剣S 0/100
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水滴S 0/1
立方体 425/525
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威圧目S 0/1
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眼鏡G 0/1
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