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奴隷になった瞬間から借金が増えて抜け出せなくなる

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 昼過ぎまでの時間にやれる事をやる。部屋の消臭だ。臭い2人が寝てたベッドに寝たくない。ダニとかノミとかシラミとか、いろんな生き物と寝る羽目になりそうだしな。洗ってある街の子セットとタオルを女に投げて寄越す。

「服を脱いでそれに着替えろ。着替えたらタオルを持ってタララと風呂に行け」

「ゲイン、もしかしてここで見てるつもり?」

「もちろんだ。フル装備のタララに勝てるとは思わんが、お前は甘いからな」

「優しいのかスケベなのか分からなくなるよ…」

「汚ったない女に襲いかかる程、俺はスケベでも迂闊でもない。病気にでも罹ったら困るの俺だろ?タララは脱いだ物を調べて纏めろ」

「これから主となるのだ。好きなだけ見ると良い。…出来るなら、子が出来ぬよう、外に出してくれ」

「そんなに襲われる自信があるのか?」

 俺の質問には答えず、服を脱ぎ出した。スタイルは良いがやはり汚いな。髪にツヤがないのは言わずもがな、垢だか埃だかにまみれて肌が汚れてる。おっぱいはそれなりに大きいが、赤ちゃんがこんなののお乳飲んだら腹を壊すだろうな。

「ゲイン、おっぱいばっかり見てるー」

「おっぱいも、見てる、だ」

 全裸になった女の腹には、石を受けて青アザが出来ている。上手く胃の辺りに当たってたようだ。

「臭いから早く着替えて風呂に行ってくれ。俺はベッドと、その汚物を洗濯するんだ」

「洗濯屋さんじゃダメなの?」

「おばちゃんにそれ持ってったらいくら取られるか分かったもんじゃないだろ。持って行くにしても洗ってからだ」

「洗ってもらうために洗う…。わけわからないね」

 俺の服を着た臭い女はタララに連れられ公共浴場へ向かって行った。残された汚物、触りたくないが仕方ない。テーブルの板を退かし、空箱に投げて行く。パンツが特に汚ったない。
 空箱の中身をウォッシュする。水と汚物が混ざり合い、汚れと水気が消えるのを待つ。元の色がどんなだったかは分からないが、1回じゃまだ黄ばんでる気がする。洗濯屋のおばちゃんにどう洗えば良いのか教えを乞うかなー。計3回ウォッシュした。次にベッドだ。こっちは1回で良いだろう。最後に、ベッドの上に板を乗せ、その上に湿った服を伸して行く。濡れた箱も乗せたらデリートウォーターで一気に乾燥させた。
 もうMP半分になっちゃったよ…。パリパリ感の残る服をバサバサして空気を入れたら畳んでく。女物のパンツの畳み方なんて知らんからそのままで良いや。鍋を洗ってお湯でも飲もう。井戸に移動し寸胴やコップを洗って水を汲み、部屋に戻って湯を沸かす。疲れたのでぐったりしよう…。

「ゲーインー、たーだーいまー、あーけーれー」

 湯を沸かしていたのを忘れてうとうとしてたらタララ達が帰ってきた。お湯は沸騰してて飲めないや。タララ達を部屋に入れたら火を落とす。

「キレイにしてきたよー」

「借金が20500ヤンに増えてしまった…」

「お前飯代考えてないな?これから食うごとに増えてくぞ?」

 女は天を仰いだ。

「とにかく洗ったのに着替えろ。それだって洗濯代もらいたいくらいだ」

「ゲイン、パンツ洗ったんだ…」

「当たり前だろ?洗わないで履いたら折角風呂に入れたのが無駄になるだろうが」

「今度こそ襲うのだな?しっかり見ていろ」

「襲われたいのか?」

「その方が気が楽だ。娼婦の真似事は出来ないが、一晩幾許いくばくかで買ってくれると嬉しい」

「ゲイン!しちゃうの!?あたいともしてないのに?」

「そう言う値下げはしない。1回いくらで何回したらあの無礼者の分の借金を減らせるー、とか考えるなよ?」

「お見通しか」

 スルスルと服を脱ぎ、全裸になった女はしっかり垢を擦り落としたようで肌ツヤが良くなっていた。

「お嬢様には手を出さないで欲しい。最も、貴族に手を出すのは命を縮めるのだがな」

「出すなら先にあたいに出してよ」

「とにかく服を着ろ。昼飯食ったらギルドに行くぞ」

 女が畳んで寄越した俺の服は、何だかちょっと臭かった。これも洗わなきゃなぁ。皿にソーサーと干し肉を乗せて昼食にした。

「これも借金、か…」

「ギルド直営の宿では3枚100ヤン、酒場だと200ヤンだ。3食食って1500ヤン、風呂に入って500ヤン、500ヤンの宿で寝て、1日2500ヤンの2人分。5000ヤンが毎日借金として増えて行く事になる」

「私の剣は4日分…。はは、大した事の無い額だったのだな…」

「知識次第の運次第、実力次第で1日あれば稼げちまうよ」


 少し気落ちした女を連れて、ギルドへと向かった。昼過ぎのギルドはいつも通り閑散としていて、メロロアとマーローネに見つかるのも早かった。

「ゲインさん、お待ちしてましたよ」

「こちらへどうぞー」

 こちらと言ったら尋問室。部屋には奴隷の契約に使うであろう紙束やら道具がテーブルに並べられていた。

「お、お嬢様は、どうなりましたか?」

「そうですね、先にそっちから済ませましょう。お席にどうぞ」

 俺と女が隣同士に座り、対面はマーローネとメロロアが座る。タララの席は無かった。

「椅子出してやれよ」

「気が利かなくて申し訳ありません。今用意します」

「いーよ、時間は有効に使って。ゲインもそれで良いでしょ?」

「分かったよ。話を進めよう」

「かしこまりました。まずはアンテルゼ嬢の治療費はミスリル貨3枚、30万ヤンとなります。現在アンテルゼ嬢は3階ギルマスの部屋にて待機中です。次に仮面代が計1万ヤン。総額31万ヤンを立て替えております。ゲインさんのギルド証から引き落としでよろしいですか?」

「よろしく頼む」

 ギルド証を出してメロロアに渡すと、機械で処理され返された。

「払えるのか!?」

「ゲインの特技は金稼ぎだもんね」

「あの時抜剣しなきゃ良かったなー」

「次に、借金奴隷の契約をします。ゲインさんはエリモアさんをご自分の借金奴隷としますか?」

「うん」

「エリモアさんはゲインさんの借金奴隷となる事を同意しますか?」

「同意する…しかあるまい」

「そうですね、しなければ借金踏み倒しによる犯罪奴隷です。お二人ならすぐに人気が出ますよ」

「メロロア、下ネタは止めなさいって。けど、ゲインさんの下に付くのが断然安全です。同意しますね?」

「同意する」

「事実なんですけどね。それではこちらに署名と血判をお願いします」

 契約書に2人で名を書き、針で血を出し血判を押すとほのかに光って消えた。契約が完了したようだ。

「奴隷に関してのアレコレはこの冊子を読んでくださいね。ゲインさんは読む人なので心配ないですが、読まずにやらかして犯罪、とかよくありますのでご注意ください。私からは以上です」

 冊子を受け取りひとまず収納しとく。後で読まねば。一仕事終えたメロロアは椅子を持ってタララに渡し、部屋を出た。仕事に戻ったのかな。

「では次に、私から。エリモアさん、アンテルゼ嬢のギルド証発行に伴う手続きです。お二人は脱獄犯です。まずは釈放した扱いにするため、保釈金を納めてもらいます。それをしないと街を出入りできません」

「また、借金か…」

「冒険者にならずとも借金を返す宛はありますが、先程メロロアが言った方法でしか効率的な返済は出来ませんし、衛兵に捕まったら犯罪奴隷になります」

「是非も無し」

「お二人の保釈金は、総額15万ヤンです。内訳はアンテルゼ嬢が10、エリモアさんが5です。ゲインさん、引き落とさせていただいてよろしいですか?」

「いつ払込や申請するの?」

「はい。申請書は用意してありますので、この後すぐに衛兵事務所に向かいます」

「引き落としはもう少し待ってくれ。まだアンテルゼ?卑怯者を奴隷にしてないから」

「お待たせしました」

 ノックをして入ってきたのは先程出て行ったメロロアと縛られて引かれてる卑怯者。そしてギルマスだった。

「ゲインくん、奴隷ハーレム羨ましいよ!」

「代わっても良いよ?」

「女性職員に白い目で見られるから無理だよ!」

「マスター、羨ましいとか言ってる時点でやばいっすよ?」

「エリモアさん、ゲインさんで良かったですね」

「早く縄を解きなさい。そしてその縄であれを縛りなさい。不敬罪で半殺しにして奴隷にしてやるんだから」

「こりゃあ、ダメだな」

「何がダメなのかしら?」

「死ななきゃ治らんだろこんなもん。こいつは犯罪奴隷で決定!」

「ゲイン様!」「ゲイン!」

「俺はもうこいつに治療費を払いたくないから手は出さん。出す時は殺す時だ!」

「やれる物ならやってみぎゃあっ!」

 それをしたのは俺じゃない。ギルマスが思い切り脳天にゲンコツを食らわせたのだ。

「き、ぎざまぁ、私は貴「僕も貴族だよ?侯爵家の次男だけど相続位はまだ放棄してないんだ。君伯爵令嬢だったよね、逃げ出して今はただの女だけど。この意味分かる?」…何…だと??」

「君さあ、婚約者から逃げ出したは良いけど、そのせいで相手カンカンだよ?君の家、和解金で火の車になって領地切り売りしてるの、知ってた?お前の存在を無かった事にして土下座までしたんだってさ!」

 何となく、ギルマスが貴族っぽいなーとは思ってた。厭らしい顔で笑うし、人を小馬鹿にするし。けどまだコレよりはずっとマシだ。ちゃんと話が成立するからな。

「ゲイン君、コイツは借金奴隷で頼むよ。売女にした所で真面に仕事するとは思えないし、売れなそうだろ?」

「そりゃあ、見りゃわかるけど…」

「面倒事を力で捩じ伏せる、これも冒険者の嗜みってヤツだよ。コイツのランクはFだけどダンジョン連れて行って良いからさ」

 それは便宜のようでいて、殺しても良いと言う事だ。俺は丸損になるけどな。殺しても良いから傍に置け、そう言う事らしい。まだ冊子は読んでないが、禁止事項を犯しても便宜を図ると言っているとも取れる。
 奴隷女の不安げな視線が向けられる中、長い溜め息を吐いて仕方なく了承した。

「イヤよ!同意もしないし名前も書かない。血判なんて以ての外。お前が奴隷になれば良いのよ!」

 ダガーで左の肩口を突いてやると、プクッと血が押し出された。

「血判はそれで良いな、あとは名前か。文字が書けないヤツには代筆しても良いんだろ?」

「問題ありません」

「私が書きます。お嬢様、いえ、アンテルゼ。今まで生きて来られた事を神に感謝しましょう。そして、これから生きられる事をゲイン様に感謝なさい」

「この裏切り者ぉ!」

「私は今でも、貴女を生かす選択をしています。ゲイン様は今すぐ私と貴女を殺すだけの力があります。殺さないのは使った金が無駄になるからです。貴女が死にたいと言うのなら、私はもう、止めません」

 契約書に胸の血を押し付け、机の上で名前を書く奴隷の声に、主人を思う感情は無い。

「残すは同意のみ、です。アンテルゼ」

「気安く名前を呼ぶな!どうせソイツのゴブリン程度の股間に腰でも振って命乞いでもしたんだろ!?この尻軽女!」

「使っては頂けませんでした。ですがその内してもらいます。貴女が言うように使って頂いていたら、貴女を切り捨てる事を推薦していたでしょうね」

「あたいが先だかんねっ!」

「うるさい。…メロロア、あんた拷問も得意そうだよな?同意するまで痛めつけてくれないか?料金はソレの借金に上乗せで」

「えー。マスター、良いですか?」

「どうぞどうぞ。僕は何も聞いてない」

「でしたら、ゲインさん以外部屋を出て下さい。すぐに終わりますから」

「俺残るのかよ」

「同意と同時に契約がなされるので仕方ないじゃないですか。諦めてそこに居てください」

 血を先に付けたのが裏目に出たようだ。くそう。ギルマスは仕事に戻り、他の者は外で待機すると、椅子に座らされた卑怯者の対面でメロロアが何かやっているようだ。俺は見ない!じっとドアを見つめてる。

ブビビッ!ブリュブシュァァァ!

 糞と小便を混ぜたような臭いと大きな不快音、そして小さな悲鳴が部屋を満たした。

「同意しろ」

「…は…はい…」

 完全に悪。メロロアの声、メロロアの存在全てが悪だ。面倒事を力で捩じ伏せるのは冒険者じゃなくてギルド職員の嗜みだろ。
 契約書が薄ら光り、契約が成立したのを知らせる。

「臭いよぅ」

「まだ出ないでください。洗浄係が部屋の外から《洗浄》しますので」

 洗浄係が来るまで時間がかかった。そりゃあ時間もかかるよな、中古防具屋まで行って連れて来たのだから。店主さんは終始無言で、俺の髪を撫でながら部屋全体を《洗浄》してくれた。俺のウォッシュよりも強力で、ビシャっと1発で汚れも臭いも消し飛んだ。

「臭かったよぅ」

「坊やが奴隷を買うなんて、思っても見なかったわ」

「俺だって買いたくて買う訳じゃないよ!」

「寂しくなったらうちに来なさいって言ったのに」

「寂しくもない!」

「奴隷の装備を整えるなら用意するわ」

「それはお願い。ソレと、外にいたローブのヤツと二人分ね」

「やっぱり寂しかったのね」

「違うったら」

「ゲイーン、もう良い?」

 ドアを少しだけ開けて、タララが顔を覗かせる。契約書はギルド証に仕舞われるとの事でギルド証を渡し、保釈金の振込と同時に二人分の契約書を処理された。

「これで全て完了です。お疲れ様でした」

 メロロアの言葉が嘘でないなら、とっとと外に出てしまおう。俺とタララ、仮面を着けたローブの奴隷2人の4人は、中古防具屋の店主に連れられて中古防具屋へ向かう。

「さて、何から揃えましょうかね?」

「靴と、ズボンと、上着にマント、かな?」

「下着は?」

「下着は別の店で買ってね?うちは防具屋なの」

「防御を兼ねて皮の服が良いと思うんだけど、どうだろ?」

「臭くても良いならそれでも良いわね」

 そう言って倉庫の方に入ってしまった。臭いのはイヤだよ。

「ゲインの事だからポンチョにすると思ってた」

「目立つだろうが」

「心遣い痛み入る」

「これなんてどうかしら?」

 店主が倉庫から持ち出してきたのは膝下まであるロングブーツに膝まで覆うレギンスだった。どちらも皮製でとても茶色い。大きい奴隷のレギンスは、皮の補強がされていて防御の足しになっている。膝裏と腰後部のスリットから通気性を得られるそうだ。元は獣人用なんだとさ。
 ブーツは足を突っ込んで、サイドのを引っ張って履くやつ。履きにくく、脱ぎにくいので売りに出されたそうな。

 小さい奴隷の靴はロングブーツに見える具足だった。ソールの横に凹みの付いた木のサンダルを具足が覆い、凹みに沿って紐で縛ると具足とサンダルが一体化するスグレモノ。俺が欲しいくらいだ。けどサイズが小さ過ぎて無理。売られた理由も履けなくなったからだそうだ。
 レギンスは鱗?トカゲの皮かな?テラテラした光沢がキレイ。背面のスリットが後部を一文字に横切っている。尻尾の太い人が着けていたのだろうか?

「これ、良い皮だよね」

「売れないから安いのよ」

「売れない理由があるんだね」

「座るとお尻が見えちゃうのよ」

「それを私に履けと?」

「履かなくても良いぞ。下着で外を歩くのは寒いと思ってお前らの借金を増やしてるだけだしな」

「入るならあたいが欲しいかも…」

「タララはお尻見せたいのか?」

「ゲイン、あたいの尻尾見たいでしょ?」

「見せるなら、せめて洗ってふわふわにしてからにしてくれ。それと、俺が見たいていで話を振るな」

「貴女の主人は、貴女を殺すつもりは無いみたいね」

「…今はな」

「それならそれで、生きてる事を喜ぶべきよ」

 店主と小さい奴隷は、2~3言話をすると大きい奴隷と共に試着室に向かって行った。店主は再び倉庫へ向かう。今度は何持って来るんだ?

「ゲイン様、似合っておりますでしょうか?」

「似合ってるよ。けどおっぱいは武器だ。隠しておけ」

「承りました。…アンテルゼ、ゲイン様はこう言うお方です」

「お前の乳じゃ物足りないだけでしょ」

「私、これでも自信あるのですよ?」

 自分の乳を見てぐぬぐぬする小さい奴隷は試着室に引きこもってしまった。自信は良いから早くおっぱいを隠せ。

「上着とマントを持って来たわ…」

 ドアを開けた店主は素早く奴隷に服を押し付けると試着室に押し込んだ。もう1つの試着室にも服を押し入れて、なぜか俺が睨まれる。

「タララよ、俺が悪いのか?」

「ゲインは罪な男なのよね」

「泣きたい。胸貸してくれ」

「服、脱ぐ?」

「お前も敵か」

「冗談だよー。ゲインは悪くない。わーるーくーなーいー」

 抱き着いてグリグリする鉄板が痛い。

「私の勘違い、ごめんなさいね」

「ゲインは無意識か事故でもなきゃ手も握らないんだから」

「手は意識を持って繋いだろが」

「寝てる間に既成事実を成せば良いのだな」

「不眠症になるじゃん!」

 服を着て試着室から出て来た大きい方と、顔だけ出してる小さい方。そんな事をしても借金減らさないからな!

 大きい奴隷の服は、お腹がチラチラ見える七分袖の上着で、胸の辺りから紐で編み上げる皮の服だ。手袋や手甲を着けると丁度いいのだろうな。マントで見えてないが、肩と腕の繋ぎ目も編み編みなんだって。
 マントはシンプル。けど裾が千切れたようになってる。広げてテントみたいにするために、わざとこうなってるんだって。テント買ったから売りに出されたと言う。

「あたいのより良い服じゃね?」

「お前のは本当の意味での服だったろ。こいつらのは鎧だ」

 いつまでも顔だけ出てた小さい方も、タララと駄弁ってるうちに姿を現した。パッと見、裂けたポンチョだった。

「ねえ店主?なんで私のは蛇皮なのかしら?」

「女性用で小柄な物は蛇かカエルしか無かったの。値は張るけれど薄くて軽くてひんやりするのよ」

 カエルよりはマシと言う、俺に失礼な理由でチョイスされた上着はなかなかのピチピチ。脇腹と胸を紐で締めて着る服のようで、知らずに見たら蛇の獣人かと思われてしまいそうだ。袖はちょっと長くて手首の所でクルクルしてあった。

「こう言うのはあんたが着なさいよ。自信あるんでしょ?」

「構いませんが、ゲイン様と2人きりの時にお借りします」

「あたい絶対離れないから!」

 マントの方は、本当に切れたポンチョを加工した物だった。編み上げて切れ目を塞いだらポンチョにもテントにもなるな。カエル皮だったら俺が買いたいが、ちょっと小さい。残念。

「これ、俺用の無いかな?カエル皮で」

「無いわ。坊やの話を聞いて、壊れたポンチョをソレにしたのだから」

 視界を塞がず脱げるポンチョ、今まで無かったのか…。更に2人に手袋と、大きい方に手甲を着けてお会計となった。

皮のロングブーツ 6500ヤン
皮の具足付きサンダル 5000ヤン
複合皮のレギンス 4500ヤン
蛇皮のレギンス 5000ヤン
七分袖の皮の服 5000ヤン
蛇皮の編み上げ服 8500ヤン
野営マント 5000ヤン
元ポンチョ 5000ヤン
皮手袋×2 4000ヤン
皮の手甲 800ヤン

総額 49800ヤン

 全部着せて、仮面も着けたらなかなかの怪しさ。けど仮面の冒険者は居ないことも無いのでギリギリセーフな気がする。

「また、借金が増えた…」

「まだまだ増えるぞ。しっかり働け?」

「手入れには必ず来なさい?臭い女は嫌いなのでしょ?」

「そうだね。いつもキレイにしてもらうよ」

「それお嫁さんに言う言葉じゃね?」

「そうか?」

「私はいつでもお待ちしております」

「間違っても来ないでよね」

 次は武器屋だ。金を払ってお礼を述べて、4件隣の向かい側。いつもの中古武器屋の髭もじゃ店主は、起きてフレイル振っていた。

「こんにちは。どこか戦いにでも行くの?」

「それも良いな。年甲斐も無く猛りそうだわい」

「おじさーん、この子達の武器、どれがい~?」

「ゲイン、また女を引っ掛けてきたのか」

「仕方なくだよ」

「私は刺突剣が良いのですが…」

「ふむ…、お前か、ゲインをやったのは」

 よく分かるな。マント越しで分かるのか?当てずっぽうじゃないの?ほれっと渡されたその剣を見て、大きい奴隷が泣き出した。

「あぁぁぁぁ…、私の、私の剣…うわぁぁぁ~ん!」

「鞘がないから作っちまったが構わんよな?」

「うわ~ん!」

「作っちゃったなら仕方ないな」

「私にも寄越せ」

「お前にゃコレだ」

「杖か?魔石も付いてないが」

「それ、ただの棒だよ」

「私も剣にしろ!事故を装いこいつをこるぉあああああ!」

「ぐす…。アンテルゼ、奴隷が主に害意を持つとそうなります…ひっく」

「後で冊子読まなきゃ…。棒は結構役に立つ。持ってろ」

「ぐうぅ…。持てば良いのだろ、持てば…」

「6万じゃ」

「棒4万かー」

「馬鹿め、鞘4万で棒はおまけじゃ」

「剣より高いじゃん」

「新品の剣ならもっとするわい。研ぎ直してくるから寄越せ」

 ギルド証からお金が抜き取られ、研ぎ直しに工房にこもると、チュイーーーンとして帰ってきた。真新しい鞘がキレイだ。

「私は一生ゲイン様に仕えても良い」

「じゃああたいはお嫁さん」

「はい奥様」

「あんたらの人生滅茶苦茶にしてあがゃああああ!」

「うるさい。用がないなら出て行け」

 店を追い出された。4万も使ったのに。立ってても時間の無駄なので次に行こう。

「ねえ、ゲイン。あたいの買い物にも付き合ってくんない?」

「良いけど、何を買うんだ?」

「ベッド」

「ああ。お前ん家、なんもないからなー」

「暖炉あるもん。お風呂もあるもん。キッチンだってあるんだもん!」

「わかったわかった。早く使えるようにしないとな」

 怒ってトラウマ顔になる前になだめておこう。寝具店の場所はマーローネに聞いていたようで雑貨屋の並びにあった。俺も看板をチラ見した程度の見覚えのある店だったが、宿屋だと思ってたよ。
 中古がメインだが新品もいくらかあるみたい。大きな箱におが屑や藁を詰めてシーツで押さえるタイプや、すのこの上にフェルトを重ねるタイプ、綿や羽毛、獣毛を箱状に縫った布に詰め込んでるタイプ。大きさも素材も、もちろん値段もいろいろだ。

「ゲインはどれがいー?」

「俺ならフェルトを選ぶね。洗えるのがデカいし、布は高いからな」

「そだねー。草は補充するの面倒いもんねー。所でさ、2人はこれからゲインの部屋で寝泊まりすんの?」

「もちろんです。ゲイン様にいつでもお使い頂けるよう待機する予定です」

「使わないでよ!?」

「宿屋に泊めさせるつもりだったんだが」

「借金を増やしたくないので是非ゲイン様のお部屋で!」

「厩で寝る方がマシね…」

「馬が迷惑するからやめろ。こいつら、タララの家で寝かせてくれないかな?」

「えー」

「一人部屋に3人で寝たらすぐに5人になっちゃうぞ?」

「私を含めるな!」

「私が双子を授かるのですね。…けど、従者が主の子を成すなど…うふふ…」

「提案が卑怯!断れないじゃない!それならゲインもあたいんちに住む事!」

「家賃がかさむだろうが…。4人で割って、月25000ヤン」

「お風呂代タダになるでしょ!」

「ギルドの宿屋より安いです。ゲイン様、決断の時ですよ!?」

「俺が世間にヒモ扱いされるんだが?」

「奴隷飼うヒモなんて最低ね!あははばばばばばっ!」

「元々ゲインが稼がせてくれたお金だもん。問題なーーし!」

「あの…、お客さん。もうちょっと、静かに…ね?」

 店主に控えめに窘められてしまった。ヒモ扱いされたくないのでフェルト16枚、毛布8枚、枕4つ、俺の金で買ってやったよ!嵩張る荷物を収納して店を出た。ちなみにお値段、164000ヤン。大きい奴隷が天を仰いでいたが、お前が勧めたのだからな?
 続く雑貨屋ではカバンやタオル、食器等の生活雑貨を買い、カバンに入れて2人に持たせた。

「ゲイン、寝間着は?」

「奥様、必要ありません」

「買おう」

「着ませんよ?」「脱がないわよ!」

「「着ろ!」」

 わちゃわちゃしながら部屋着に寝間着、下着などを選んでいた。総額59000ヤン也。パンパンになったカバンを提げて、タララの家に向かうと、奴隷の2人は驚いていた。

「タララ様はどこかのお嬢様でしたか」

「私ここに住む!あんな馬臭い小屋なんて無ぎぎぎぎぎっ!」

 懲りないヤツだな…。

「2人共、これゲインのおかげで借りられてんだからね?」

「さすがゲイン様です!」

「本人は馬と寝てるのに」

「馬とは寝てない。とにかく部屋を決めて家財を置いてくぞ。それと、俺は明日から寝泊まりするから」

「「え!?」」

「賃貸解約して部屋の片付けして挨拶回りするんだよ。文句あっか?」

 俺の正論に反論はない。あってもさせない。2階、主寝室はタララの部屋にして、俺はその隣、屋根裏部屋の下の部屋。奴隷2人は1階のメイドの部屋を使う事になった。各部屋に寝具を置くと、俺は一旦家を出て、大家の家に向かった。
 大家に明日出る事を伝え、明日までの家賃を払って厩に戻った。日割りで2000ヤン。お休みの馬達がブルブルカリカリ、こっちに来いと言うので撫で回す。馬達は雰囲気を察しているようで、顔を擦り付ける圧が高い。

「短い間だったけど楽しかったよ」

 べろべろゴシゴシ顔を擦られ、部屋に戻る前に顔を洗う羽目に遭った。部屋の片付けもしなくっちゃ。竈に板に、装備や衣類を入れた籠に石炭を入れた籠、そして色んな物を詰め込んだ箱。これでマジックバッグが5つ埋まった。石が3種類で残りが2枠、翡翠と敷物で満員御礼となった。1度タララんちに行って置いて来るか…。



現在のステータス

名前 ゲイン 15歳
ランク C/F
HP 100% MP 60%
体力 D
腕力 E
知力 E
早さ D-
命中 E-
運 D

所持スキル
走る☆☆ 走る☆☆ 走る 走る 走る
刺突☆☆ 刺突
硬化☆☆ 硬化 硬化
投擲☆☆ 投擲
急所外物理抵抗☆☆
飛躍☆ 飛躍
木登り☆
噛み付き☆☆ 噛み付き
腕力強化☆ 腕力強化 腕力強化
脚力強化☆ 脚力強化☆ 脚力強化
知力強化☆
体力強化☆ 体力強化 体力強化
ナイフ格闘術☆ ナイフ格闘術
棒格闘術☆
短剣剣術☆
避ける☆
魅力☆

鎧防御術
察知
探知
マジックバッグ

魅了
威圧

水魔法☆ 水魔法
ウォーター
ウォッシュ
デリートウォーター
ウォーターバレット
ウォーターウォール
ボーグ

土魔法☆
ソイル
サンド
ストーン

火魔法
エンバー
ディマー
デリートファイヤー

所持品

鉄兜E
肩当E
胸当E
腰当E
上腕当E
脛当E
鉄靴E

革製ヘルメット
革製肩鎧
革製胴鎧
皮手袋
皮の手甲
混合皮のズボン
皮の脚絆
耐水ブーツ
耐水ポンチョ

草編みカバンE
草編みカバン2号
布カバンE
革製リュック

木のナイフE
ナイフE
剣鉈E
解体ナイフE
ダガーE
革製ベルトE

小石中497
小石大☆450
石大☆20

冒険者ギルド証 6652791→6009991ヤン

財布 銀貨9 銅貨6
首掛け皮袋 鉄貨31
部屋の鍵
 
冊子
奴隷取り扱い用冊子
寸胴鍋
お玉
コップ

カトラリー

五徳
木ベラ
籠入り石炭50
洗濯籠
多目的板
蓋の無い箱
敷物
ランタン
油瓶0.5ナリ
着火セット
翡翠特大

中古タオル
中古タオル
中古パンツE
パンツ
ヨレヨレ村の子服セット
サンダルE
革靴
街の子服Aセット
街の子服BセットE

奴隷
エリモア
アンテルゼ

スキルチップ
ウサギ 3022/4391
ウサギS 0/1
ウサギG 0/1
ハシリトカゲ 2056/3166
ハシリトカゲS 0/1
ハチ 1742/2859
ハチS 0/1
カメ 2000/3459
カメS 0/1
ヨロイトカゲS 0/2
石 0/1853
石S 0/1
スライム 1023/2024
鳥? 213/1360
トンビS 0/4
サル 715/857
ウルフ 0/1051
ワニS 0/1
蝶 0/204
花 0/161
腕 440/541
腕S 0/1
腕G 0/1
脚 549/650
脚S 0/101
脚G 0/1
頭 475/576
体 422/523
体S 0/1
体G 0/1
棒 526/627
ナイフ 112/504
ナイフS 0/1
短剣 0/220
鎧S 0/1
袋S 0/1

水滴 157/394
水滴S 0/1
立方体 175/275
火 0/1

魅了目S 0/1
威圧目S 0/1
頭三本線S 0/1
頭三本線G 0/1
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