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子供の遊びを大人が金にするのは何処も変わらないのな

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 街に着いたらまずは報告。この情報は金になるからな。厩に帰ってすぐにでも寝たいけど、ここは我慢せざるを得ない。

「ゲインってもしかしてあそこに住んでる?」

「馬の匂いがするからか?」

「同じ匂いだし」

 恐ろしい鼻だな。とにかく急ごう。俺は眠いんだ。なるべく早めに向かったからか、ギルドに着いたがまだ少し混んでるな。

「おはようございます、ゲインさん」

「今日はやらないけど、今度後ろに立ったら他に人がいても撃つから」

「あら怖い」

「ゲイン止めなよ。メロロアさんも人の嫌がる事はしない方が良いよ?」

 背後に立って、多分笑顔を振り撒いているメロロアに、俺は顔を向けない。

「お2人共、よりを戻したんですか?」

「そんな事よりギルマス案件だ。話繋いでくれよ」

「ゲインさんはマスターを楽しませ過ぎです。ちゃんと仕事もさせて下さい」

「嫌なら帰る。眠いし、引越しするわ」

 出口に向かおうとする俺を2人に止められた。

「わ、分かりましたよぉ、話して来ますのでおー待ーちーくーだーさーいー!」

「あたいもランク上げるんだから行かないでー!」

 騒がしいギルド内が更にザワついた。何かすごく見られてるよ…。

「1リットで帰ってこなけりゃ帰る。いち、に、さん、し…」

「はいはいはい今行きますからー」

 混んでる事がまるで無いかのように、するすると人を縫って2階に上がって行った。壁に寄り掛かって寝よう…。

「ゲイン、起きて、ゲーイーンー」

 いつの間にか立ったまま寝てたようで、メロロアが待っていた。階段を上がってギルマスの部屋に連れて来られた俺達に熱いお茶が出た。

「おはようゲイン、昨夜はハッスルしちゃったのかい?」

「そうだよ。タララ、アレを出してやれ」

「ほいほい」

 ソファーの横に野盗の死体が横たえる。ギルマスのドヤ顔が凍りついた。いいぞもっとやれな気分。

「1つだけ?」

「タララの昇格条件を満たすだけだからな。ちなみに殺った総数は46人だ」

「2人でかい?そりゃあ凄いね、CDのくせに」

「道を塞がれて逃げられなかったんだよ。で、ここからは情報料取るよ?」

「お?欲張っちゃう?」

「それだけの価値があると思うぞ?東西を繋ぐ野盗の逃走ルートあったろ」

「ダンジョンだった、とか?」

「そこは察するか。入口見つけたよ。2ヶ所」

「お手柄じゃ~ん!」

「2つとも隠し扉だったけどね」

「また開けなきゃいけないねー」

「いくら払える?」

「んー、メロロア、どう思う?」

「ゲインさんがまたお金持ちになっちゃいますね、悔しいです。100万で」

「奮発したねぇ」

「これを機にウチに就職してもらおうかと」

「良いねー!」

「ゲーイーンーダメー!」

「…だそうだ。またパーティ組む事になったから処理よろしく」

 メロロアにギルド証を渡し、処理してもらうと、タララと2人ランクがC/Fとなった。仮じゃなくなっちゃったのね。お金も100万振り込んだってさ。お金もらえたのでもう少し情報を渡す。西側の自動装填の矢の情報はとても重要だったみたい。
 ダンジョンが増えて、ここを拠点とする冒険者が増えればギルドもウハウハだろう。100万なんてすぐ回収できるよね。
 1階に降りてタララは買取カウンターへ。俺は眠さが限界なので即帰る。すぐ帰る。

「あら、お疲れね」

朝もよから珍しい。やたら低い声の中古防具屋の店主さんが手押しのカートに革装備を乗せて歩いてた。

「ダンジョンでエラい目に遭ってさっき帰ってきたんです」

「無事で何よりだわ。ゆっくり寝て、起きたら店にいらっしゃい。洗ってあげる」

「はーい、おやすみなさーい」

 もう寝る事しか考えてなかった。無心で歩いて厩に着いて、本日休業の馬を一撫でして部屋に入り、装備を外してパンツ一丁でベッドに倒れ伏した。

「ゲーイーン、鍵かけないの?」

「えっ!?」

 タララが居た。買取りした後付いてきたのか。

「宿にお帰り。俺は眠い」

「折角遊びに来たのに。すごい数のチップだねこれ」

「まだあるぞ。使い切るまで仕事に行けない。1人で古い方のダンジョンに篭ってくれ。そしておやすみ…」

「おやすみ~」

 寝て起きたらタララが隣で寝てた。手足使ってホールドされていて動けない。宿代浮かせようとしてないで起きて宿に帰れ。こっちの方が金かかるんだぞ?

「タララ起きろー、はーなーせー」

「ぬぅ…、ゲインは女に抱き着かれて添い寝されて嬉しくないの?」

「動けないくらいホールドすんな」

「温かかったんだもん」

「もんじゃねぇ」

「おっぱいもお尻も触り放題だよ?」

「動かせないだろうが。とにかく離れて服を着ろ。俺は飯に行くんだ!」

「あたいもー」

 飯と聞いて、バッと離れてズボンを履きだす腹減り娘。下着丸見えだぞ…って、俺もパンツ一丁だった。ズボン履こう。

「お前は宿で食えよ。そっちの方が安いから」

「ゲインと一緒に食べたいの!」

「…寝るのは宿で寝ろよ?それと、明日から暫く仕事しないから、死なない程度に稼いどけ」

「わかった…」

 互いに着替えを済ませたら、ランタンに油を足して外に出た。仕事から帰って来てた馬達が無言でドスドス踏み鳴らしててなんか怖い。
 酒場にて、飯を頼むとソーサーの値段に唸ってた。味は変わらないのに宿の2倍だもんな。焼肉2枚と俺のソーサー1枚食って、干し肉4食分爆買いしてた。噛み締めながら寝るんだと。
 俺は焼肉とソーサー3食分と干し肉2食分。ランタンにもらい火して店を出た。

「明日はどーすんの?」

「装備のメンテナンスだな」

「じゃああたいも休みにしよ」

「宿に帰って干し肉しゃぶってたっぷりおねんねしやがれ」

「馬に噛まれちゃえ。おやすみー」

 噛まれなかったよ。スリスリべろべろが激しかったが。服までベチョベチョにされたので全身纏めて魔法で洗って乾かした。《洗浄》より洗ってる時間が長くて冷たい。そして服は俺の体に張り付いた状態でパリパリになった。そっと脱いだら立つかも知れん。次洗う時は板を使って洗ってみよう。
 部屋に戻り、荷物を片付ける。まずは大量のスキルチップを机の上に避けて、ブラウンさんに買わされた1000枚セットも置いて、これだけで心折れそうになる。ランタンを消して今夜は寝よう…。

 すっかり寝過ごしハッとする。が、今日からしばらく休みにするんだったな。井戸に飲み水を汲みに行き、朝食を食べたら装備を持って出かけよう。皮は臭くなるらしいからメンテナンスは欠かせないのだ。

「いらっしゃい、忘れず来たのね」

「こんにちは。装備のメンテナンスしてもらいに来たよ」

 カバンやマジックバッグから装備を出して《洗浄》してもらう。

「昨日は何してたの?ダンジョン?」

「うん。なかなか外に出られなくてさ。結局夜になっちゃって、木の門近くの草藪で野宿してたんだ」

「無事で何よりね。補修箇所は無かったわ。着ていくの?」

「いや、今日は外には出ないから仕舞って行くよ」

 お礼を告げて店を後にし、次は雑貨屋に向かう。洗濯物を入れるのに使う草網の籠を2つと、五徳、料理用の大きめの木ベラ、そして1ハーン程の径の木製のタライを買った。5500ヤン也。
 厩に着いたら井戸に陣取り、作業を始める。まずは石炭を使えるようにしたい。籠に石炭を流し込むと一杯にはちょっと少ない程度の量になった。今度からはこれを基準に拾って来よう。デリートウォーターで脱水して、籠のまま収納した。次は竈だ。
 タライと五徳と木ベラは竈を作るために用意したんだ。ソイルで発生した土と井戸水を混ぜて粘土状にしたら、タライの中に詰めていく。全部粘土だとMPが勿体ないので小石を入れて嵩増しだ。粘土でタライを満たしたら、真ん中に五徳を仮置き。この上に鍋が乗るので当たらないようCの形に小石を押し込む。その上から粘土小石、粘土小石と積み重ね、壁を均してすべすべにしたらデリートウォーターで乾燥させた。持って部屋に上がるのはしんどいので収納して戻ったよ。
 竈は窓際に置く事にして、元々あったチップ満載の机は部屋の反対側に追いやられた。排煙しないと死んじゃうから仕方ないね。五徳を外して石炭をゴロゴロっと入れたらエンバーで着火した。煙が出なくてとても良い。満遍なく焼けるように更に石炭を放り込み、通気を良くして後は待つだけだ。
 待ってる時間に洗濯もしてしまおう。服を村人セットに着替えたら、着てない服やタオルを全部出して一気にウォッシュ。板の上に伸しながら重ねてデリートウォーター。シワの少ないパリパリの状態に仕上がった。たたみ直してベッドの隅に安置する。

「ふらふらするのはMP使い過ぎたのか…」

 ステータスを確認すると38%まで減っていた。水飲んで休憩しよう。竈の焼け具合を木ベラでコンコンしながらソーサーをかじっていると、厩がにわかに騒がしくなる。客かな?鎧戸を全開にして下を覗くと、タララが来てた。珍しく街娘みたいな格好してるな。

「遊びに来たよー」

「外に出られないから上がってくれ」

「ほいほーい」

 部屋に招くとホイホイ上がってきて、俺の前でクルクル回ってる。

「はいはい可愛い可愛い」

「ゲインは相変わらずヨレヨレだね」
 
「部屋着だからな。だがさっき洗濯してパリパリに仕上げたぞ?」

「魔法で?」

「そうだ。今は魔法を駆使して竈作ってんだ」

「うわー、何か暖かいと思ったら石炭燃やしてたんだ」

「これでお湯が飲めるぞ」

「ヤカン、買った方が良いよ?」

 ヤカンか…。コップでお湯を掬うのは少し怖いな。お玉でも良いか?その内見かけたら買おうと思う。

「見ての通り、外に出るのはアレが焼けてからになる」

「それまで何してるの?」

「やる事は一杯あるんだよ」

 洗濯籠に洗って来た装備を入れて、石炭の入った籠と一緒に部屋の隅へ。
ベッドの前に石大を4つ並べて板を乗せ、ぐらつきを調節した。敷物が欲しくなる高さだ。脚になる物も欲しい所だ。

「あたいお昼まだだから食べて良い?」

「俺も食ってた所だから構わんよ」

 ソーサーと干し肉を齧り、水を飲んで昼食終了。竈が焼けるまで時間もあるだろうし、それじゃあそろそろやる気を出すか。
 部屋の隅に追いやられたチップを板の上に並べ直す。ブラウンさんに買わされた1000枚も、中身を確認しなければ。

ウサギ 418
カメ 285
サル 93
オオカミ 82
頭 77
ナイフ 45

 こんな内訳だった。オオカミが星2になりそうだ。それにしても、どんどんウサギが増えていく…。考えるな、齧れ!無言でオオカミのチップに噛み付いた。

「ゲイン、ゲーイーン。そろそろ暗くなるよ?」

「え?もうそんな時間なのか?」

 集中し過ぎて意識すら飛んでたようだ。オオカミのチップは残り181枚。500枚近く千切っていたようだ。

「すまん。集中してしまった」

「火の様子はあたいが見てたんだから、感謝してよね」

「助かるよ。今夜は奢ってやる」

 竈の様子を確認すると、カンカン言って何だか良さそう。火事が怖いので一旦デリートファイヤーで消しておく。今夜は使って後1回だな。薄暗い中、パリパリの服に着替えたらランタンと金等を持って部屋を出た。

「んふ~、んひひ」

「嬉しそうだな」

「一杯食べられるもん」

「そうか」

 いつもの酒場で料理を頼む。俺は焼肉とスープ。タララは焼肉3枚とソーサー。

「ねぇゲイン、あたい、明日ダンジョンに行こうと思うの」

「早起きしないとな」

「付いて来てよー」

「泊まりがけになる予感しかしない。せめてマントを用意しろよ」

「遠いの?」

「俺なら日帰りできるけど、タララの足だとダンジョンの中で夜を明かすか、馬鹿高い宿に泊まる事になるだろう。外で野宿しても良いけどな」

「マントかー」

「雨具にも寝具にもなるからあった方が良いと思うがな。そもそも装備が足りてない」

「やっぱ、鎧着なきゃダメ?」

「前後から矢が飛んで来たら、背後を守るのは鎧しかないだろ?俺もできれば金属製の靴が欲しい」

「走れなくなりそ」

「足を傷付けられたら歩けなくなるよ。装備の重さを何とかするのもスキルだ」

「けど、高いんでしょ?」

「そのために金を稼ぐんだ。ゴブリンを殺りまくって貯金して、スキルと装備を整えてダンジョンに挑む、みたいにな」

「考えて金稼ぎしてるんだね」

 投擲、棒格闘、鎧防御、俺は持ってないけど盾防御は最低必要だ。移動に使う脚力や攻撃に使う腕力、体力も無くてはならない。大体それだけで8000ヤン程はするだろう。スライムやカメを入れると9000か。それに鎧などを揃えたら10万は貯めておきたい。

「そんなの無理だよぅ~」

「そうでも無いさ。タララには鉱石の知識があるだろう?」

「黄銅鉱しか採ってないもん」

「川の中はまださらって無いだろ。明日は俺のズボン貸してやるから川浚えに行くぞ」

「付いて来てくれるの!?」

「俺がしっかり休むためだ、仕方ないだろ。明日はカバンとタオルと昼飯と、財布以外は持ってくるなよ?敵が出たら盾でぶちのめしてもらう」

「分かった!」

 食事終わりに干し肉とソーサーを買い与え、ランタンに火を付けて1度部屋に戻り、ズボンを貸して解散となった。

「本当は、ゲインに頼ってばっかりじゃダメなのはわかってんだ。借りは必ず返すから、待っててね」

「ダンジョンで返してくれれば良いさ」

「そんなんじゃ、返した事にならないよ。もっと他の事で返すから!」

 明日は早いので解散だ。俺も寝る前に少しチップを齧る程度で寝よう。

スキル : 噛み付き☆☆ 噛み付き

噛み付き : 効率よく噛み付く為のスキル。攻撃速度と命中率が少し増し、更に少し増し、無駄な動きを少し抑え、更に少し抑える。歯の強度が少し増し、更に少し増す。

 噛み付きが星2つになった。明日の朝、干し肉で確認しよう…zzz

「ヒーヒヒィーン!」

 嘶き一声、何事かと鎧戸を開けて感知系スキルを張り巡らせる…が、厩にはお休み中の馬が3頭居るだけだ。なんだろう?痒い所でもあるのかな?厩に降りて、なでなでしてるとタララがやって来た。

「ゲーイーン、おはよー!」

 きっとこの子達はタララが来るのを知らせてくれたんだな。褒めて褒めてと顔を擦り寄せべろべろしてくる。

「おはよう。ズボンの裾は巻いておくと良いぞ」

「わかった。ゲインも馬に食べられてないで準備しなよ」

「顔洗って飯食ったら行こうか」

 井戸で顔を洗い、部屋に戻ってソーサーと干し肉を齧り、装備を整える。今日の服はサンダルに街の子セット、カバンにはタオルと財布とお弁当、腰にはベルトに武器を付けて、軽装に仕上げた。

「ゲイン、石はどうしたら良いの?置く場所無くて持ってきちゃったけど」

「川に着いたら一旦全部出しておこうか」

「そだね。いこいこー」

 南門から街道沿いを走って木の門へ向かう。サンダルは楽だと思ってたけど革靴の方が走りやすかった事に今更気付く。靴底って大事だね。

「ゲイン、足、速く、なった?」

「なったぞ。タララも走るチップ200枚千切るか?」

「面倒臭い!」

「だよなぁ」

 タララならウサギの金チップ1枚で俺と並べるくらいには早くなりそうだし、稼がせて買わせてやろうか…。

「なんか、企んでる?」

「稼いだ金で足を速くしてもらおうと思ってるだけだよ」

「おいくら万ヤンするのよ…」

「10万で買えればいいな~」

「ゲイン、金遣い、荒過ぎー」

 そんなこんなで木の門に到着。門番さんに挨拶だ。

「おはようございます。今日も賑わってますね」

「ゲインか。今日も相変わらずだ。お前、そんな装備で大丈夫か?」

「橋は渡らないので問題無しです」

「そうか。気を付けて行け」

 別れを告げて川に降り、いつもの下流にやって来た。カバンを降ろしてベルトと武器を仕舞い、石を河原に全部出す。

「そんなに入れてたの?」

「これでも減ってるんだ。タララだって思ったより入ってると思うぞ?」

 タララは俺の反対側に小山を作ってた。2人の荷物の上に盾を乗せ、これで大抵の人は取れなくなったよ。

「服を着たまま水に入るから、くれぐれも無茶するなよ?最悪、服を仕舞って全裸で泳ぐ事も頭に入れとけ」

「さすがにそれは恥ずかしいね」

「子供の頃は普通に全裸で泳いでたのにな」

「あたいは泳いでない」

「砂金掘りとかしなかった?」

「したさ。ハズレばっかり引いてたけどさ!」

「マジックバッグのおかげで当たりが引けるまで水の中に居られるぞ、やったね」

「採れたら良いね」

「ダメなら他を当たるだけさ、やれるだけやってみよう」

 川の水は冷たい。体が慣れるまで不用意に動かず、浅瀬でじっとしてるのがお約束だ。けどそれだけじゃ時間が勿体ないので浅瀬の土砂を片っ端から収納して金目の物とそれ以外を分けて行く。
 ほとんどが黄銅鉱に黄鉄鉱で水晶も少々。体が水に慣れたら少しづつ深みに入ってく。砂地になってる川底を深く掘り進み、ついに見つけた!金だよ金!回収できるだけ回収して岸に戻った。

「どうだった?」

「……あったぞ」

 盾の下から布カバンを引っ張り出し、中に戦利品を流し込む。水晶は濁りが多いのは川に返すかな。

「水晶だね。透明なのはお小遣いにしたり飾ったりしてたかな。濁ってるのは投げてた」

「きっとぼったくられてると思うぞ?透明なのだけ持って帰ろう」

石は質の良し悪し関係なく回収してしまうみたいだな。一旦マジックバッグに戻し、草編みカバンに詰め直す。選別は後でやろう。水晶以外の石も確認の為に布カバンに流してみた。

「翡翠じゃん、紅水晶も。これは大人に取られるやつだよ」

「こっちは濁ってて良いのか」

「色が濃いのが良いやつみたいだよ」

 これらはそのままギルド行き決定。よしよし。そしてお待ちかねの金だ。タオルの上にサラサラと流す。

「こんなにあるの!?」

「ある事は確認できた。俺は水晶の選別してるから気張ってこい、狙うは金だぞ?」

「やる気出た!行ってくる!」

 のしのし川に入ってく…が、止まった。冷たかろう。慣れるまでそうしてなされ。俺は金を仕舞い、水晶を1つずつ取り出して透明度を見る。紅水晶は透き通ったピンク色から白っぽく濁ったピンク色まで様々だがどれも価値があると言う。水晶は透明なのしか価値が無い。なぜだろう?選別するとは言ったがぜ~んぜんわかんない。鑑定はメロロアに押し付けよう。体が冷えて寒いので、石炭を集めて体ごとデリートウォーター、からの、エンバーで焚き火を作った。あったか~い…。

「ゲーイーン、あったよぉ。寒いよぉ~」

「冷えたら戻ってこーい。焚き火あるぞー」

「わ~い」

 ザバザバと勢いよく帰ってきたタララを脱水し、焚き火に当たらせる。デリートウォーターでMPを使うから無限に掘るのは出来ないな。

「は、初めて、金、採れたよ…」

「いっぱい採れたか?」

「金貨、100枚は、作れ、そう…」

「なら100万ヤンだな、金チップ買えるな」

「ゲインはチップに命張り過ぎだよぉ」

「装備は体を、スキルは命を守る物、だ。暖まったらもう1回行っとくか?毎日焼肉5枚は食えるぞ」

「うう…、頑張る」

 昼飯を齧り、体が温まったタララは再び川に入って行った。3日もしたらここは人だらけになっちゃうんだろうなぁ…。ギルド職員には秘密を徹底してもらいたい所だ。
 だいぶ粘って川浚えしてたタララがずぶ濡れの小熊になって帰ってきた。

「あばばばばば…」

「お疲れ様。暖まったら帰ろうな」

 脱水して、焚き火に当てる。焼き熊が出来上がる間に帰り支度を済ませよう。排出してた小石と石を星が付くまで回収して俺の準備は終わった。ホカホカした焼き熊も出来たみたいで石を拾いだしたよ。焚き火を消して消し炭も回収。街に帰ろう。

 夕方のギルドは混むので先に飯風呂してしまおうと言う事になり、厩の前で待ち合わせする事になった。川で水浴びはしたけど擦り洗いはしてないし、芯まで温まりたいからね。ランタンに油を補充したら、全裸になって、パンツも替えて、洗って伸して乾かして、だいぶMP使ったな。パリパリになった服を着直していると馬が鳴いた。タララが来たな?

「ゲーイーン、来たよー」

「今いくー」

荷物を纏めて戸締りしたら、鍵をかけて降りて行く。

「風呂が先かな?」

「ご飯がいーなー」

「酒場に行くか」

 今日の夕食は焼肉とスープとソーサー。タララは焼肉2枚とソーサー。今日は自分で払うからか肉少なめだ。

「ゲインはお酒飲まないの?」

「酔っ払う程娯楽に飢えてないからねー」

 酒、女、ギャンブル。俺はどれもした事ない。隠れてカツリョクソウを齧るのが唯一の娯楽だったからかも知れないが、酒よりカツリョクソウ、ギャンブルよりもカツリョクソウなのだ。女は知らん。

「あたい、飲んでみようかな?」

「今日は止めとけ。ギルド行かにゃならんからな」

「そうだね、うん。次にしとく」

 干し肉とソーサーを2セット買って、ランタンに火を灯して風呂に行く。お風呂屋さんでももらい火できるんだってさ。消そ消そ。
 体の芯から温まり、垢を落として風呂を出た。火をもらって外に出ると、ちょうどタララも出る所だった。

「ぴったりだね」

「待たせなくて良かったよ。では行こうか」

 日が完全に落ちて星灯が照らし出した大通りに、人の通りはまばらだ。露店の消えた露店街は広々した広場となり、なんか寂しい感じがするよ。
 ギルドに着いて、中はガラガラ。受付も2人居るだけだ。買取カウンターにはメロロアが居た。今日も夜勤だな。

「あ、ゲインさん。買取りですね?」

「そうだな。部屋、使おうか」

「へぇ、またヤバい物ですか…」

「ああ、激ヤバギルマス案件だよ。けど呼ばなくても良いぞ?」

「ではお部屋の方にどうぞ」

「あ、箱持ってきてね」

「承りましたー」

 勝手知ったる尋問室に入り、椅子に並んで座ってると、箱を持ったメロロアとギルマスがやって来た。暇なのか?

「呼んでないんだけど?」

「メロロア1人じゃ持ち切れないと思って手伝ってただけだよ」

 嘘つきめ。

「まあ良いや。今回の買取りは他言無用で願いたいな。事故死されても困るから」

「激ヤバって言ってましたけどそれ程ですか?」

「まあね、まずは俺からな」

 メロロア達の持って来た薄い箱に水晶を入れる。大きさは大した事ないが180個もあるので隙間が見えないくらいに盛られた。

「ん?これは水晶ですね。それなりの価値はありますが…」

「これは選別面倒なのでメロロア様に一任いたします」

「凄く面倒です」

 次に、紅水晶と翡翠。新しい箱に小山が2つできた。

「翡翠好きなんだよねー。ピンクの石は女の子が好きそうだ」

「紅水晶だそうだよ」

「恋の願いが叶うかも?なーんて触れ込みで売ったら儲かるかもね!」

「買った人に1人でも叶う人が出れば大儲けだな」

「何で?」

「叶わなかった人の事は言わないで、叶った人の話だけするのさ」

「詐欺じゃん」

「嘘は言ってないので詐欺にはならんのよね!この商売上手」

「父さんの跡を継ぎたかったよ。で、メインがこれ」

 新たな箱に砂金を流す。砂粒が3255粒。ギラギラ光ってなかなかの見た目だ。これには2人も目を見開いた。

「ゲインさん、やっぱりギルマス案件じゃないですかヤダー」

「そうなの?」

「銅はともかく、金や銀は国が動いちゃうからね!ミスリルなんて貴族が攻めて来るから採らないのを勧めるよ。メロロア、これ箝口令ね」

「承りました」

 で、次はタララの番。箱3枚に盛りに盛られた砂金に俺も驚いた。

「よくこれだけ採ってきたもんだな」

「頑張ったもん」

 メガネをかけたメロロアが水晶を鑑定しているが、今夜中には終わらないそうで、終わるまでこの場でカンヅメにされるそうだ。天を仰ぐメロロアに休む時間は、無い。3人部屋の外に出て、鍵がかけられた。トイレとか大丈夫かよ…。

「明日の午後には終わってるだろうし、その頃来なよ」

「よろしく頼むよ。欲しくなったらまた採っても良いぞ」

「出来ればやりたくないけどねー」

「売るなら小出しが良いよ。気付かれると面倒だから。じゃ、明日」

 ギルマスが階段を上がって行ったので俺達も帰ろう。タララが宿に入るのを見届けて、俺も厩に急いだ。

「ブルブルブル…」

 カリカリ地面をかいているのは構って欲しいんだな。厩に着くと、仕事を終えた馬達が構って欲しいとねだって来る。騒がしくしないのは馬達の気遣いで、これを勘違いして放ったらかすと、暴れる。なでなでして一回り。べろべろしてこないのも馬達の気遣いだ。明日も頑張っておくれ。
 部屋に戻って竈に消し炭を足し、五徳を置いて火を付ける。寸胴鍋を五徳の上に安置して、傾きなく出来てるのを確認できた。
 お湯が沸くまでチップを千切る。石と鳥が星2になれるので、石のチップを千切っては吸い、千切っては吸った。僅かにが少しに変わり、誤差程度には速く噛み付けるようになったと思う。比較対象が過去の俺しかいないので比較しづらい。お湯が沸いて小休止、コップでお湯を汲むのはやはり危ないな。
 お湯をちびちび飲みながらステータスを確認すると、石に星が付いていた。

スキル : 投擲☆☆ 投擲

投擲 : 投擲武器を効率よく扱う為のスキル。投擲速度と命中率が少し増し、更に少し増し、無駄な動きを少し抑え、更に少し抑える。

 多分だが、マジックバッグで射出する石にもこのスキルの効果は乗っていると思われる。タララとの命中度の違いが熟練度や性格の違いだけでは無いと思うのだ。数百枚残ってるけどまた後で良いや。心を無にして鳥のチップに齧り付いた。

 そしてまた、朝になった。また寝ながら齧ってたらしい。火にかけた寸胴鍋がグツグツしてるので魔法で水を足す。星が付いたので水の勢いが強くなってた。MPもほとんど減ってないし、これなら使用に耐えるレベルだな。温くなったお湯を掬ってがぶ飲みし、朝食にした。



現在のステータス

名前 ゲイン 15歳
ランク C/F
HP 100% MP 97%
体力 D
腕力 E
知力 E
早さ D-
命中 E-
運 D

所持スキル
走る☆ 走る☆ 走る
刺突☆ 刺突
硬化☆ 硬化
投擲☆☆ 投擲
急所外物理抵抗☆☆
飛躍☆ 飛躍
木登り☆
噛み付き☆☆ 噛み付き
腕力強化☆
脚力強化☆ 脚力強化
知力強化☆
体力強化☆
ナイフ格闘術☆ ナイフ格闘術
棒格闘術☆
短剣剣術☆
避ける☆
魅力☆

鎧防御術
察知
探知
マジックバッグ

魅了
威圧

水魔法☆ 水魔法
ウォーター
ウォッシュ
デリートウォーター
ウォーターバレット
ウォーターウォール
ボーグ

土魔法
ソイル
サンド
ストーン

火魔法
エンバー
ディマー
デリートファイヤー

所持品

革製ヘルメット
革製肩鎧
革製胴鎧
皮手袋
皮の手甲
混合皮のズボン
皮の脚絆
耐水ブーツ
耐水ポンチョ

草編みカバンE
草編みカバン2号
布カバンE
革製リュックE

木のナイフE
ナイフE
剣鉈E
解体ナイフE 
ダガーE
革製ベルトE

小石中☆500
小石大☆450
石大☆20
水晶180(鑑定中)
紅水晶28 (鑑定中)
翡翠56 (鑑定中)
砂金3255 (鑑定中)

冒険者ギルド証 381558→1375558ヤン
財布 銀貨6 銅貨22
首掛け皮袋 鉄貨31
部屋の鍵
 
冊子
寸胴鍋
コップ

カトラリー

五徳
木ベラ
籠入り石炭71
洗濯籠
ランタン
油瓶
着火セット
多目的板

中古タオル
中古タオル
中古パンツ
パンツE
ヨレヨレ村の子服セット(シワシワ)
サンダルE
革靴
街の子服Aセット(貸与中)
街の子服BセットE

スキルチップ
ウサギ 3684/4392
ウサギG 0/1
ハシリトカゲ 3047/3167
ハチ 2726/2859
ハチS 0/1
カメ 2785/3460
ヨロイトカゲS 0/2
石 405/1854
石S 0/1
スライム 1024/2025
鳥? 423/1360
トンビS 0/4
サル 715/857
オオカミ 0/1025
ワニS 0/1
蝶 0/204
花 0/161
腕 441/542
脚 424/525
脚S 0/1
頭 77/178
体 423/524
棒 420/521
ナイフ 403/504
ナイフS 0/1
短剣 0/101
鎧S 0/1
袋S 0/1

水滴 158/395
水滴S 0/1
立方体 0/25
火 0/1

魅了目S 0/1
威圧目S 0/1
頭三本線S 0/1
頭三本線G 0/1
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