上 下
1,513 / 1,519

見送り

しおりを挟む


「でさ、お前さん。オレ等もコッチに住んじゃダメかい?」

「広過ぎて寂しくなっちゃうしさ」

 ワーリンが提案しキキラが続く。シトンとアズ、セカンドハウスに住む者の総意であるようだ。

「ダメなもんか。入浴施設への直通門もあるし、冒険者するなら此処から通えば良い」

人が住まなくなって魔物が湧いたり野盗の巣になったり、風化してしまう可能性があるとアズは言う。風化については殆どリュネが作ってるので気にする程では無いし、《結界》張れば人も魔物も入れまい。だが汚物を処理してくれている蟹やタマゲル達がお腹を空かせてしまう事は気掛かりだ。

「でしたら皆でセカンドハウスに住みましょうか」

そう提案したのはテイカ。引越ししてこの島を捨てると言う事では無く、そろそろ島の住居を全体的に直すべきでは?との提案だ。

「母屋も使ってないし、集合住宅は半分以上空いてるからなぁ。今の俺ならもう少しキレイに地均し出来るし、悪い提案では無いと思うが。皆はどう思う?」

一番環境が変わるであろうラビアン達は今の居住環境に慣れてしまっているが、補修の頻度が上がっている事には理解を示す。人種は新居に住んでいるが、食堂迄の距離があるので距離を詰められたら良いとの意見。雨の少ないシルケだが、降る時は降るからな。龍は自分の巣が欲しいと言うのが二人。何時も焼き部屋で寝てる二人だ。暖かくしてお菓子焼いてくれたら尚良しだと言う。

「では明日から少しずつ、セカンドハウスを住める状態にして行こう。それ迄に島の家の設計を考えるよ」

話が決まり、ブチ姉妹達セカンドハウスの住民は戻って行った。

「ずっとあるって思ってた」

イゼッタの本音が漏れる。イゼッタの叔父殿が住む城も直し直し使ってるし、貴族は長く使いたいモノなのだろうか。

「今度の家の廃物処理は魔石を使おうと思う。通路も少し暗かったし、そう言うのも見直したいな」

「…分かった」

「それなら、子供達の遊び部屋も欲しいです!崖から転がると危ないですからね!」

「お外の遊び場もご用意出来れば、と」

島の形を変える大規模改修になりそうだ。


 翌日。セカンドハウスで少年隊とお世話係の見送りをした。対岸に渡り、魔動車で森の道を消えて行く彼等と、巣立ちする鳥を重ねてしまった。必ず帰って来い。そう願わずに居られない。そして本日から女達がセカンドハウスに通い、大掃除と物資の運搬に取り掛かる。とは言え島にある物を片っ端から持って行く訳では無い。食事の殆どは入浴施設で作っているので使ってない炊事道具と洗濯機、各自の荷物程度の物。そして転移門くらいだ。寝具や消耗品は新造したり新調したりする。

「パパに言ってたっくさん仕入れてもらいますねっ!」

シーツも雑木で済ませようと思ったんだがな…。逆に雑木シーツを売り付けてやろうか。

 朝の仕事を終えたら風呂場の二階で図面引き。先ずは島の地形図を三面図で描く。川や滝、沼に畑。ミスリル鉱山。分かる物を描いて行く。二ハーン刻みで等高線を引いて疲れ果て、俺は部屋から逃げ出した。

「誰か…」

皆何処かで仕事してるのだろう。誰も居ない。

「あ、ああ…かけ…さま…」

「ペルマが居たか…。おっぱい吸わせて…」

成長したのか学習したのか、片言の言葉を発せるようになったペルマが食堂で待機してたので甘える事にする。ちゅぱちゅぱ揉み揉み。疲れた手と頭と精神を癒した。

「なにしてる」「ナニしてる」

微妙にイントネーションが違うステレオが聞こえて、俺はペルマから顔を離す 。イゼッタとネーヴェだ。

「島の地図描いてたら心折れたんだ」

「見たい」「みして」

見たいと言うなら見せてやろう。俺の労力の結晶を。二人を連れて風呂場の二階へ向かう。ネーヴェは地図の事なんて丸っきり分からないだろうが、イゼッタは領主家でもあったので地図の価値は理解している筈だ。ネーヴェは大きさに、イゼッタは正確さに声を漏らした。





しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...