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やっぱ止めた

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「暫くだな。此処で通せん坊してるって訳か」

 寝袋に簡易コンロ、鍋釜なんかも用意して、十本槍の面子が定住してた。何時からか聞くと、ギルマスが殺された日の夜からで、皆丁度疲れが来ている頃合なのか、少し元気が無さそうに見えた。

「マナーに反するのは分かっちゃいるんだけどね。こうでもしないと止められないのさ」

 ヤーンはそう言うが半ば俺の為だよな。ギルマスが死んだ時に居合わせた女冒険者から話を聞いて駆け込んだと言うし。

「取り敢えず、チャッチャと殺って来ちゃうよ」

「そんな、カケル様っ。無駄な殺しは良くないよ?」

無駄な殺し、か。じゃあ必要分だけと断ってボス部屋を出る。

「オラァ!そこ退けえっ!」「邪魔だゴルルアーッ!」

 扉を開け放つと同時に突っ込んで来ようとする馬鹿共に、扉を潜る資格は無い。《結界》に顔をぶつけた数人は、酷い顔がより酷くなっていた。

「木の魔物を殺るって馬鹿は一人残らず殺して魔物の肥料にしてやる」

俺の言葉と同時に、《結界》に張り付いていた幾つかが崩れ落ちる。それにしても何だ此奴等。確かに討伐すれば魔石なりドロップなりが見込めるとは思うが、そこ迄殺意を向ける程のモノか?鎹打ち込んでも怒らない魔物だぞ?

「やっぱ止めた。肥料にする程のモノじゃ無いや」

向かいに立つ無能共は俺の話が理解出来無かったのか、棒立ちで呆けてる。《結界》の箱で囲って端に避けておこう。俺より強い奴に頼めば助けてもらえるだろうしな。

「戻ったぞー」

「「「カケル様っ」」」

「取り敢えず、暴言吐いて来た奴だけな。皆、一旦部屋に入って休め」

 集まって来た女達を引き連れてホテルオナホへ向かう。取るものも取らずで来てたので食料も心許無いようだ。

「お肉は無いけど野菜と粉はあるからな」

「食べられるだけで十分よ」「干からびると思ったー」

十本槍を浮かせてスイートルームへ向かおうとすると、ホテルオナホが騒めき立つ。木の葉が揺れて枝が震え、まるでフロア全体が地震でも起きているかのようだった。

「カケル様っ、下!木の根元の方っ」

「なんだか形が変わっちまってるみたい…」

流石に敵意を向けられて怒ったか?…と思ったがそうでも無さそうだ。何となく根元が膨らんだ?上がっていたのをキャンセルし、下へ降りて行くと、膨らんだ根元はぽっかりと口を開き、高級宿屋の入口みたいに変化していた。何処か見覚えあると思ったら、ホテルニュー王都っぽい感じ。

「入って、良いのかな?」

「カケル様…」

スールズの問いを聞いて、ヤーンは此方に伺いを立てる。

「俺が居るから何かされても出られるさ。歓迎してくれてるんだろうし、入らせてもらおう」

 中に入ると広々としたドーム状の空間。明かりが無くて薄暗いのを、木の幹に穴を開ける事で何とかしようと努力を見せている。これ、ロビーか?

『無理はするなよ?』

そう告げて、奥へと進む。ドームの端には入口が三つあり、中央の入口に入ると、此方はロビーより少し小さいドーム状。円卓と椅子が等間隔に並んでいた。

「何、此処…」「宿屋なら、食堂か酒場って感じよね」

「成程。食事を提供してくれるのか。後で利用させてもらおうか」

奥へは進まず少し戻って左右の入口も見る。酒場を見て右は上へ続いてる。左は下に向かってた。

「どっち行く?」「宿屋なら、上は部屋だよね」「なら下は?」「倉庫?」「倉庫に客は入れないでしょー」「「「なーー」」」

「風呂とか、かな?」

「カケル様、そんな宿屋見た事無いよ」「けど木の魔物だし、何考えてるか分かんないもんね」「案外当たってるかも知んないねぇ」

気になる方に向かうのが冒険者。十本槍の面々は、左の入口へ向かって行った。
ぐるーっと右回りの傾斜を下る。地下に入り暗くなったので光の棒を出してやる。そして着いたのは何となく四角い小部屋。此処にも入口が二つあり、此処もまた左の入口に入った。





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