1,491 / 1,519
元デブ
しおりを挟むメロンみたいにカットして、皿に盛られた苺味蜜柑を宰相に。
「お毒味を…」「うむ」
宰相も食べたいだけでしょ?俺目の前で食ってたよね?
「宰相よ、奥方はもう帰って居るのか?」
「…食べてから申されましても…。妻は身篭って実家に戻して居ります故」
「そうだったな。して、味は如何に」
「はい。甘さは強く、更に強い酸味が舌にチクチクと。コレが効くのでしょうか…。カケル殿」
「コレは俺も苦手なんだ。食べたくなくて残ってて、偶々手持ちにあったのがコレだけだったんだ」
「美味なる物もあるのだな?一先ず儂にも食させよ」
二人が不味いって言ってるのに結局は食うのか。
「ん、んん…不味い。もう一切れっ」
草の汁飲むオッサンみたいな事を抜かしよる。そうしている内にメイドが道具を持って来て、バクバク食いながら指令書を書く王であった。癖になる味なのかな?
「カケル殿、これを持って行ってはくれぬか?」
「構わないが、俺一人では絶対訝しめられると思う」
「では宰相を連れて行くが良い」「王よ…。承知しまして御座います。直ぐに支度を致しますれば、下がらせて頂きます」
宰相は王に頭を下げると、腰を曲げて退出して行った。
「儂も下がるとしよう。宰相が居らねば仕事にならんでな。カケル殿は別室にて待たれよ」
そう言って退出する姿は、宰相と同じく腰が引けていた。効果覿面だな。
「カケル殿、待たせたな」
お茶やお菓子を頂いて待っていると、旅支度を整えた宰相が数名の騎士を伴い入室した。
「長い旅にはしないので金とお供と少しの着替えだけで十分だよ」
「《転移》が使えるのでしたな」
お供の待つ一階の広間へ向かうと騎士が五十人くらい居た。そこに外で待つホルスト車に馭者、メイドで八十人を超えると言う。多過ぎなので減らしてもらった。
宰相、騎士二十、メイド三、ホルスト車一、馭者一、そして俺。総勢二十六人と一台と一頭。コレは大変だ。ホルスト車に宰相とメイド、馭者席に俺と馭者。騎士達はホルスト車に触れてもらい、サライプラマを治める領主家、ザットルマン伯爵家に向かう事となる。《白昼夢》でザットルマン伯爵家に向かうと、サライプラマでは無かった。これ、先にサライプラマのギルドで話した方が良いな。
「宰相殿、先にサライプラマのギルドで話を通して来るよ。多分だけど、伯爵家の使いしかサライプラマには来てないだろうし」
「確かに、然りですな」
少し自由にしてもらい、俺は一人、サライプラマに《転移》した。門前で撃たれても嫌なので路地裏に直接飛んだよ。
「はあ。面会の予約はされておりますか?」
うわ、ハズレ引いた。王家の紋章すら知らんだと。面倒臭ぇ。
「緊急につき、推して参る事も出来るんだが?」
「ギルドを敵に回します?」
「国を敵に回すのだな?」
「お?翔~」
「む、その声は!?」
振り向くと、すっかりガタイの良くなった元デブ、弥一の姿があった。
「久しぶりだな。ナンパか?」
「否、国からの仕事なんだがな」
「ヤイチさん、この人とお知り合いですかぁ?」
「俺をメルタルに連れて来てくれた恩人だよ。それとな、あんま舐めた口聞くと此奴のソイツでズブズブになるぜ?」
「え…」
「それに国からの仕事だって言ってんならさ、とっととギルマスに繋ぎ付けた方が良いんじゃねーの?」
「…ヤイチさんがそう言うなら、まあ…」
この女、ヤイチに責任擦り付けたな?人に言われて仕方無く、そんな風に設定付けて階段を上がって行った。
「あの女、知り合いか?」
「一月…三十日くらい前から俺此処に来てんのよ。話したのは十回無いぜ?」
「俺よりは親密度が高い訳か」
「電話番号知らないからデートにも誘えないぜ」
「女の子の情報をチェックしてる男と仲良くならんとな」
壁に凭れて馬鹿話をしていると、やっとギルマス降りて来た。冒険者より商人みたいな体型だ。それだけ儲かって居るのだろうな。
20
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる