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誤認
しおりを挟む「あっぶね」
「うふ」
目を閉じるのが間に合って、気持ち悪くならなくて済んだ。此処はドーンドゥールの西の森上空。南は開けてるし街道があるから人目を避けたのだろうか。樹冠迄降りながら《感知》で辺りを見渡すと、街道側にも人は居たが、森の中にも人が居る。ダンジョンが無くなって外の獲物を狩りに出た冒険者か、それとも普通の狩人か。
「……リュネ」
「はぁい」
「子供が産まれたばかりで女の匂い付けて帰ったらどうなるよ?」
「触らないようにしましょうか」
「はぁ。リュネは介抱してやってくれ…」
ダメな時に限ってぐへへなお約束が来る。女が五人、男が二十人。囲んで寄って集ろうとしている二十の内一人を残して脳味噌スッカスカにしてやった。残った一人は話を聞く為《洗脳》する。さて、現場に急行するかね。
「大丈夫かー?助けに来たぞー」
「え!?何処!?」「う、上っ」
腰が抜けているのか、経たり込んで動けないで居る五人に声を掛けると、一人が枝の上にいる俺に気付いた。
「怖い思いしただろうから俺はこれ以上寄らない。俺の連れが助けに向かうから安心しておくれ。ちゃんと女だぞー」
「はぁ~い。お助けしまぁ~す」
リュネが飛び降りてって五人の前に姿を見せると、五人は警戒したように固まったが、たわわとドレス姿を見て息を漏らした。
「まだ男が一人居るっ」
「平気でぇす」
指をちょちょいと振ると、生き残った男がふわりと此方へ飛んで来る。見た目からして臭そうな野盗。お近付きになりたくない。《結界》で囲ってその場に繋ぎ止めた。
「女達を襲った動機を説明しろ」
「…はい」
どうせ野盗だ、聞く迄も無かった。リュネが聞き出した女達の報告とも辻褄が合う。取り敢えず誤認で殺らかしたりは無さそうだった。
「カケルさぁ~ん、降りて来て良いですよ~」
五人が落ち着くとリュネは俺を呼ぶ。そして腕に絡み付いて密着して来た。コレは私のだと主張する様に。
「た、助けてくれて、ありがとう」
イチャイチャを見せ付けられて警戒が解けたのか、ポツポツと口数が増えて来て、やっと礼を言う精神状態になったようだ。
「大事無くて良かったね。けど野盗を殺れないなら森に入るのはお勧めしないな」
「あんなに来るとは思わなかったんだ!」
一人一殺出来る程度の実力らしい彼女等は、ギルドの依頼で日々の肉を狩る地元冒険者なのだそうな。近くに停められている大八車には、死んだウォリスが何頭か積まれていた。野盗も血の匂いに釣られてしまったのだろうな。彼女達はこれ以上狩りを続けるモチベーションが無いと言うので一緒に街へ戻る事にする。西門から街中を通って行くのは血等で汚れて良くないそうなので、南門迄迂回してから街に入った。
「獲物の持ち込みはコッチだよ」
そう言って五人はギルドの裏手に向かう。俺達も付いて行く。死体二十匹あるからな。
「食えねぇモンの方が多いじゃねぇか」
解体のオッサンから愚痴られつつもゴミを引き取ってもらい、五人と別れた。片腕をたわわに挟まれていてはナンパなんて出来無いのだ。裏口からギルドに入り、受付で手続きとギルマスへのアポを取った。
暫し待ち、許可が出て、ギルマスの部屋へ。
「やっと来たね。其方の女性は…確か」
「一度報告に来てる筈だぞ?俺の仕事を手伝いに来てくれたリュネ様だ。様を付けろよ?」
「こんな所、窪地にして毒沼にでもしてやろうかと思ってましたが、カケルさんが直すと言うので仕方無く大目に見てあげます」
「は、はぁ。よろしくお願いします」
リュネの怒りはまだ治まってないらしい。ソファーに座らせ手を握り、ニギニギしながら話を続ける。
「で、お偉方との話はどうなった?」
「うむ、カケルの提案の通り話をしたら風俗街の連中も納得したようだ」
「風俗街、ですか?カケルさぁん」
「この街の主要産業の一つだよ。人の子の営みには必要なんだ」
リュネが納得する迄半オコンを要した。
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