上 下
1,428 / 1,519

女堕としの甘い物

しおりを挟む


 ワーリンの家は入って直ぐが食堂兼居間。島の母屋に近い作り。その中に暑苦しいパパリンとギャップ萌えのワーリン。そこに俺、アルア、ネーヴェにリュネ、少年隊とハークが入ると座る所も無い。折り畳める食卓を部屋の隅に立て掛けてこの状態だ。

「ウヴァル、せまい」

「ネーヴェ様、すいません。こんなに客が来る事も無ぇもんで」

「穴、開けちゃいますぅ?」

「勘弁してくるぇ…くだせぇ。裏にも他のが住んでますんで」

お、パパリンリュネがネーヴェ並に危険だと察したか。

「押し掛けて迷惑だろうし、そろそろ下に降りといで。日帰り出来るトコ迄な」

「迷惑なのはお前ぇだけだ。坑道崩んじまえ」

「ハーク王よ、この街の獣民は「カケルの事だっつの!」」

茶番はこれくらいにしてやろう。キキラを呼びに行くワーリンを見送り、暫し待つ間に下に行きたい者のマスクを作ってやる。

「何これ?」

「口元に着ける防具だ。細かい粉を吸うと咳が止まらなくなるからな」

「咳?我慢すりゃいーじゃーん」「「いーじゃーん」」

「一生ソレと付き合う事になるぞ?鉱夫の中にも咳ヤバい奴居るだろ?」

少年隊の言葉を往なしてパパリンに聞いてみると、やはり職業病である事が分かる。それを少しでも減らす為に風の属性魔石を置いてあると言うが、撒き散らす手助けしてるのでは無いか?無いと無いで酸欠になるのだろうけど。

「旦那達ー、今来たー。下行くのー?」「連れて来たー」


「「「「いくいくー」」」」

キキラもスカートにエプロンか。可愛いな。下に行きたい少年四人がぴょんぴょん跳ねる。

「私もー」

ネーヴェも跳ねる。護衛だからな。

「ミミッキュってのが居るらしいから気を付けろよ」

「兄貴行かねーの?」「の?」「のー?」

「俺が戦う相手が居ないし「けっ、日和ったか」ネーヴェが護衛だ。離れなきゃ大丈夫だろ「女の尻に隠れてやがる」リュネ~、やっぱり狭いから縦横奥行百ハーンくらい広げよっか~?「やめろこの野郎!」」

「あーンたッ!あンたこそ止めなっ!!」

狭い居間に怒声が響く。奥の部屋から顔だけ見せる小柄な獣民が鉈のような刃物を持って、パパリンに威圧的な視線を送る。

「で、でもよう…」

「!?」

「…分かったよぅ」

女は強い。

「カケルさんだね?家のが済まないねえ。こないだは立派な鉄扉をくれたってのにお礼も言えなくて、本当にありがとねえ。ご覧の通り狭い家だが愛着もあるのさ。其奴はボコボコにして良いからさっ、家は勘弁しておくれ?」

ワンブレスの長い挨拶がパパリンを落ち着かせる。ボコボコにするのは良いのか。

「家をどうこうってのは冗談だよ。初めて会うね。甘い物だけどお土産あるのでどうぞ」

「あ?あ~らあらあらあら。甘いの?嬉しいわ~」

「またでた」「女堕としの甘い物…」「母ちゃん?惚れちゃダメだかんね?」

酷い言い様だ。箱入り黒糖を差し出すと、包丁投げ捨て受け取ってくれた。

「話では聞いてたけどコレが黒糖なんだね!家の子酒と摘みしか買って来ないから何度もお願いしてたんだよお。ん~、あ~良い香り~何時迄居て良いですからね~んるる~」

上機嫌になって奥に消えてった。喜んでくれて何よりだ。

「酒と摘みの他にも買ってけよ…」

「い、急ぎだったんだもん」

それは悪かったな。ハーク一行が遊びに行き、ワーリンは家事に戻る。俺はキキラの家へと同行し、キキラのママラにもお土産を渡す。ママラは熊人でも人寄りだ。おっぱい「おっぱい見るな馬鹿旦那」…目を閉じよう。

「はぁ、はぁ、この匂い。堪らないわ…フス、フッフス」

此方も喜んでくれたみたい。キキラに押し出されて家を出た俺、ぼっちなう。アルアとリュネはワーリン家でママリンと何かしてるのが《感知》で見える。一人で観光するしか無いな。

 ギフィ鉱山には外にも街がある。元々外の街があり、掘り進めた跡に住み込んだのが中の街の走りであろう。外の街の入口には、門はあれど門番は居らず、出入り自由となっている。鉱山の入口に門番が居るのは不審者や盗掘対策なのだろうか。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...