上 下
1,424 / 1,519

うぇーい

しおりを挟む


 ブルランさんが居るなら呼ばれた要件を済ませたかったが、鬼ごっこしてるなら帰って来る迄待つしか無い。干し芋をクチャる少年達に絡まれて、俺はバットを構えた。

「カケルさぁ~ん、頑張って~」

ボコボコにされたら治してくれるらしい。

「へい兄弟、巴討ちを仕掛けっぜ」「「うぇい」」

「僕どーすんのさー」

ハークの嘆く声をスルーして、三匹の兎が寄って来る。ジグザグピョンピョン、撹乱狙いの動きは多対一を想定した物だ。

「うう…、三人共、成長したんだなぁ…グスッ」

「シッ!!」

「クッ、騙されんか」

渾身の泣き真似が見抜かれてしまった。正面、ダートの攻撃はフェイクだが避けないと当てて来るので左に躱し、ダートの右から回り込むニットの突きを全力ダッシュで逃げる。逃げないと飛び込んで来るガットと背後から忍び寄るダートにヤられてしまうからだ。
反転し、ダートニットを見失う。《感知》を使ったら負けな気もするが、負けたら心が折れてしまい兼ねん。なので勝ちを優先した。

《結界》

大人気無い《結界》に、子供らしく無い魔法が打ち当たる。ハークの放った風魔法だ。姑息にも砂等を混ぜて嫌な感じのストームにしてやがる。天才兄妹め、腹芸が上手くなりおって。

砂塵の迷宮となった視界の中で、自由に動けるのは《魔力視》や《感知》等、目に頼らぬ感覚を持つ者だけである。が、少年隊はピョンピョンしているし、ハークはジリジリ移動して、発射位置を特定されないように立ち回る。

ボガッッ!!

突然目の前が閃光と共に燃え上がり、思わず目を瞑る。《結界》のお陰で目眩しで済んだがコレ粉塵爆発だろ、ヤバヤバ。立ち上る火炎を越えて空に上がり、急いで酸素を確保する。そこを狙って、今度は水に包まれた。

此奴等、確実に殺りに来てるぜ。リュネが居るからって安心して殺りに来よる。

「糞ッ、二度死んだぞ」

呟いて、纏わり付く水をハークへ向けて逃がす。飛んで逃げるハークだが捕まるのは時間の問題だな。
着地して、誰かが横を抜けてって、右太腿から下の感覚が無くなる。よろける前に浮かせて《治癒》。おいおい…。

「魔剣はあかんだろ魔剣は…」

さっき迄木製だったのが魔剣に変わり、いよいよ仕留めに掛かって来てる。

「カケルさんなら大丈夫でぇ~す。皆さんも頑張って~」

「「「うぇーい」」」

うぇーいじゃ無ぇぞ。だが声のお陰で大体の位置は掴めた。三人は魔装の効果か何かで自分の位置をズラしてる様子。ハークは水に包まれたが、飛ぶ為に纏われている風と拮抗してる。全く凄いぜ。俺相手じゃ無ければ浮遊砲台じゃないか。試しに抜いた形見のダガーの糸が風魔法で逸らされて虚しく宙を舞う。その隙間を縫うように視界から消えた少年隊が駆け回り、装備と肌を斬らない剣が肉を断つ。

「あ、やべ」

「ひひっ、先ずは一人」

肝臓辺りを犠牲にし、鎧に忍ばせていた糸がダートに触れた。気配のする場所より少し先に糸が集まり繭となる。自分に付着していた糸を外し、麻痺状態から抜けると危険な移動砲台を落とす為空に上がる。飛び掛って行く糸は風に押し戻され、追い越す形となってしまうが想定内。

「残るはお前だけだな」

水玉の中からは何も聞こえない。背後で何かを狙っていたニットとガットを見逃さず、糸の毒牙に掛けると移動砲台から放たれる魔法に術者の天才振りを再確認する。小型だが十数個同時展開されたソレは、イゼッタの使う旋盤であった。器用に全部を操作して、俺を狙いながら仲間を助けるつもりだろう。
だが、やらせん。
切り過ぎて体迄斬ったら可哀想だからな。四人を柔らか煉瓦で包み、ハークをぐるぐる回してやると暫くして意識を飛ばした。

「ひぃ…ひー、物理攻撃もさせて貰えんとは…」

「大人気無かったですねぇ~」

「よ、四人はもう、大人だ」

「ソレはあの子達に言って上げてくださぁい」

言いましたよ。認められた四人は嬉しそうでしたよ。俺は悔しい。




しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...