上 下
1,405 / 1,519

尊い

しおりを挟む


「雛を鑑定して雌雄を調べたりは?」

「は、はい。卵を産んだ雌は雌鳥、交尾を行った雄は雄鶏となりますが、それ以外は雛鳥、成鳥となりまして、隔離が難しくなっております」

 《鑑定》の熟練度不足もあるようだ。とにかく色々足りなくて、収量増加に至らないらしい。

「生産力増加に手を貸すから、見返りに卵を頂けないかな?鳥では無いけどお肉なら出すよ?」

「カケル殿、それでは当方に利があり過ぎまするが」

「貨幣の増産してもらう件もあるし、貴国にはこれから世話になるからね」

「あっ、カケルのランクも上げなくちゃ!」

「それは追々な。城の運営が落ち着いてからでも大丈夫だよ」

「落ち着かないよ?書類減らないよ?」

「頑張ったら《転移》でどっか連れてってやるから」

「頑張るっ」

「陛下…」「坊っ陛下…」「尊い…」

両拳をゾイッとするハークに三人がヘブンする。

「でっ、では、しょろそろ飼育場へと向かいまするかっ」

借りて来た猫であったデュセルが初めて口を開いた。噛んでいるが指摘してはならぬ。卵供与については何も決まってはいないのだが、技術提供は先んじても問題無いからデュセルの提案に乗ろうと思う。

「ブルラン、余も行くぞっ?泣いちゃうぞ!?」

「陛下…」

これにはブルランさんも折れるしか無い。男四人とメイドが二人、城を出て飼育場へ向かうのであった。

「カッケル、カッケルーッへへぇ~」

 ブルランさんに窘められても人気の少ない城の外に出てしまえばハークの勝ちだ。手を繋いではしゃぐ美男児に蕩け顔のメイドが二人。予想はしていたが、コレは腐って居られる。まあそれだけ鬱屈した生活をしていたのだろう。

「陛下、そろそろ…」

「う、そうだね。ずっと着かなきゃ良いのに」

  「「尊いっ」」
腐ったガヤは放っといて、鳥の飼育場に到着する。以前一度来た事はあるが、広い土地の割に飼育小屋は小さい。コレは城を囲む外壁に面しているからだ。

「へっ!陛下っ!?」「陛下御身がどうして!?」

飼育場の職員が平伏して迎えるが、そりゃあこうなるわな。

「らくにするがよい。ここにいるカケルが飼育場をすごくするから」

凄くしなきゃならんのか。

「その為に中を改める故、皆は仕事を続けますよう」

「「「ははっ」」」

ブルランさんがハークの言葉に続き、飼育場の門が開かれた。そして職員に飼育小屋へ案内されて中に入ると、中はそれ程悪く無かった。悪くないと言うか、個体数に比べて広さがあり、良い状態とも言える。だが逆に、個体数が少ないとも言える。

「食事に提供される鳥の数は?」

「はい。二日に一羽とされております」

「年百五十が一人分?足りるのか?」

「狩り草からの物もありますが、実際全く足りておりません」

「も、申し訳ございませんっ」

「あっあやまるな。わたしのふとくといたすところぞー」

「この様に、陛下もお心を痛めておられる。なので俺が呼ばれた訳だ」

「「ははぁー」」

片言なハークを撫でながら言葉尻に乗ってやる。

「この建屋自体は素晴らしい。餌箱に水場、そして床。広さもあり、衛生面にも配慮されている。鳥の健康を一番に考えた作りをしている事がよく分かる。何よりゲル版を使った採光が良い。鳥に掛かる負荷を減らし、穏やかな気持ちで過ごせている事だろう」

「ああ…有り難きお言葉…」

「カケル、家の事になると相変わらずだね」

おっと、ハーク王が引いて居られる。

「んっん、…だが営巣する巣箱が無いのは問題だ。部屋の隅に一々巣作りして居ては落ち着かんだろう。先ずはコレを正す」

鳥小屋の奥に陣取った鳥達に避けてもらおうと職員に指示を出るが、居座った鳥達は威嚇して動こうとしない。コレは、抱いてるな?

職員達を退かせると、建屋の壁に薄い煉瓦で壁を作り、ゆっくり押してスペースを開ける。鳥達は一言ありそうな顔をしているが、壁があるから文句は無さそう。




しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

【絶対幼女伝説】 〜『主人公は魔王なのに』を添えて〜

是呈 霊長(ぜてい たまなが)
ファンタジー
彼の昔、最強の吸血鬼であり最強の魔王『ゼティフォール』が世界を闇で支配していた。 時を経て、神の力を手に入れし勇者率いる英雄によって、100年の闇による統治は終わりを迎えたのだった。 それから400年後、魔王が目を覚ました! 闇と共に滅ぼされるかに思えたゼティフォールだったが、勇者と神の意思により長らえていたのだ。 『再び危機が迫った時、新しき勇者と"共に"世界を救う』ために。 目を覚ましたゼティフォールは危機の訪れを察し、敵を迎え撃つ! 最強の名を欲しいままに、魔王の名を知らしめるが如く、勇者など必要ないと言わんばかりに! 最強の名は伊達じゃない。 復活した魔王軍だけの力で世界を救ったのだった! …………という予定だったが、うまく行かず、敵こそ撃退したものの魔王たる力を無くし、圧倒的強さも奪われ、残ったのはプライドだけ。 しかも、見ず知らずの土地に飛ばされ、雑魚モンスターにいじめられる始末。 服もボロボロ、体もボロボロ、唯一残ったプライドすらもボロボロ。 そんな哀愁漂うゼティフォールを救ったのは、天使のような翼を持った"最強"の幼女『ステラ』だった! ステラというチートな仲間を手に入れたゼティフォールの快進撃? が始まる── 頑張れゼティフォール! 負けるなゼティフォール! 今は幼女にお守りされる身だが、いずれ最終的には、多分、きっと、いつの日か、ひとり立ちしてプライドに見合った実力を取り戻すのだ!! ※一応主人公は魔王です

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...