上 下
1,344 / 1,519

例えば

しおりを挟む


 話の本題はミネストパレス、カケラントとの交易であった。カケラント王が俺だと言う情報を掴んで今回の依頼に繋げたそうだ。だがミネストパレスの情報迄は掴めて無いみたい。人買い船は沈められると聞いていて、抑商売出来るかどうかも未知数であった為近付かなかったのだと。で、最近になってミネストパレスが国を興したと言う情報を得て、カケラントと共に新雪を踏みたくなったのだと。

「ならば会って見ますか?」

「やはり面識がおありか」

「話は通しておきますよ。後日、良き日と場所を連絡してもらいましょう」

「よろしく頼む」

 話が終わり、商船会社を後にする。結果、護衛の依頼は消滅した。キャンセル料は後日ギルド証に振り込まれるらしい。

「安く買い叩かれましたね」

カロ邸にてシャリーに苦言を呈される。金貨十五枚で独占状態ともなればそう言われても仕方無しか。

「お腹がこうなので面と向かっては出ませんが、私も後ろに付きますよ」

「でしたら場所は此方をお使いください。ハイネルマール様にはお世話になっておりますし」

「分かった。今夜中に両国に繋ぎを付けておくよ。前以て話の場を持とうか」

「承りました」

お腹を撫でて、チュッチュして、カケラントへと《転移》する。尻を向けて居並ぶメイドを撫でる。

「今日は仕事がメインなんだ。エンメロイと…商業関係の者を呼んでくれ」

「「「承知しました」」」

玉座に座って待つ事暫し、エンメロイにハーラデー。商業関係の大臣達がやって来た。

「カケル王!何だこの国は!?男が政に参まつりごと 加して居らんではないか!」

「お前が居るだろ」

「俺しか居らん!」

「ハーラデー、静かに。それに正式な謁見の場でその対応は何ですか?」

「ぐ…」

「ハーラデー、愚痴は後だ。今回は騙され気味に通商させられそうになってな。対策を取りたい」

ハーラデーが落ち着くのを待ち、会議の場を設ける。場所はヤリ部屋だ。机と椅子を並べられ、会議室となっている。

「…確かに、騙されましたね」

説明を聞いて大臣の一人が小さく零す。静かな部屋で、全員の耳に入った。

「王が唯の訳知り冒険者と言うならいざ知らず、王と知って直接交渉しようとは舐められたモノだな」

「大方、イゼッタ様を王に据えてカケル様は王配か何かだと思って居るのでしょう。それに、アフマクシア公国とカケラントの話となる筈では?一介の貿易商が出る幕では無いかと」

成る可くフラットな立場で説明したが、大臣達のハイネルマール商船会社に対する心象は良くないようだ。

「売り買いする事については反対なのか?」

「輸出品として出せる物が多くありません。出せて布製品と酒でしょうか」

「そんなしか無いのか」

「他国に羨む物等、男手くらいのモノだな。まあそれは冗談として、国内需要で充分やれている国だし、余所者の俺が見て、欲しいと思う迄の物は先程言われた物くらいしか無かった」

例えば木材。これは殆ど全ての国が内需で足りている。魔物の素材も同じだ。加工して、他国が欲しいと思える品で無ければ売り買い出来ん。例えば石材。宝石や金属も含めるが、土地を削って得られるコレ等は禁制品である。例えば食品。余剰分を使って作る酒以外、売ると国民が飢える事となる。例えば布等産業製品。地域毎に独特な模様があったりして、コレが唯一売り買い出来る。
そして最後に人材。ハイネルマールは人の売買はしてないが、観光業はブルーオーシャンだろう。しかし移民は違法だ。税収が減るからな。

 決を採り、満場一致で否決された。カケラント側に欲しい物が無いのと、受け入れ姿勢が整っていない事。そして、情報を流したくないとの理由であった。

「話の場には私とハーラデー、後大臣を一人連れて行くわ」

「俺は必要ですか?余所者でありますが」

「男の欲しい物があるかも知れないでしょう?それに沢山経験を積んで早く宰相になってもらわなきゃね」

エンメロイは早く隠居したいようだ。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...