1,335 / 1,519
鬼を見るような目
しおりを挟む灯りが欲しいとエルシドは言うが、考えてみれば窓が無い。
「砦って窓は無い方が良いんだろう?」
「侵入経路は少なくて然り、ではあるな」
「魔法ギルド辺りが光の属性魔石をくれるかも知れんよ。ハーク王が建てさせた砦だと言えば喜んで出すだろう」
「壊した本人でもあるからな」
「アルアも居るからそれは言わない方が良いね」
「うむ。聞かなかった事にせよ」
「夜になったら松明を着けて、煙が抜けるか確認しようか」
「うむ。後は此方で纏めて内装を整えさせよう。忘れて居ったが、ギッツ側の出入口は開けんのか?」
「それも其方で掘ってもらおうかな。今開けるべきでは無いだろうし」
「心得た。ではご苦労であったな。ハーク王も喜ばれるであろう」
コレが戦争の抑止力になれば何よりだ。そして此処より先に攻め入らない事を願う。
「あ、集落はどうすんだ?本当は作っちゃダメなんだろう?」
「無論。だが、この地での流通、そして娯楽はアレで賄われていると言っても過言では無い」
「ならちゃんとした街にしたらどうかな。小アトールもだけど、娼館の女が病気持ちばかりではその内兵士が死ぬぞ?」
「お前のソレが無くなったのもその口か」
「生えてるよ!元気だよ!」
「そうか。…我が家は子が成らんでな、羨ましい限りである」
「その内デキるさ。以前食わせた果物は子作りの効果もあるからな」
「…期待しよう」
別れ際、エルシドの金玉は切って治さないとダメであると診えた。
小アトールで働くジョンに報告し、ギルドから使える人材を連れて来てくれと羽交い締めで泣き付かれ、命のやり取りをしなければこの場から逃れられないと悟った俺は、仕方無くクリューエルシュタルトとシューンシューンズデーゲンに行って三人と二人を連れて帰る。
「ああ、マスターがちゃんと仕事をしてらっしゃる…」
「何時もちゃんとしてるだろうがっ」
「クリューエルシュタルトの仕事もお持ちしましたので、この調子で頑張ってくださいねっ」
慈母の様な笑みを浮かべるサブマス相手に鬼を見るような目のジョンであった。俺は帰るぜっ!
バルタリンドのギルドで受付から報酬を受け取る。久しぶりに働いたぜ。
「パパー、やっとはたーぃたー」「パパー」
失礼な事を言う愛娘である。
「ギルド以外からの仕事もしてるんだよ。他の国で王様が変わるから、それの手伝いしたりな」
「へー」「えへー」
「ギルドの仕事もして下さいね。次の方~」
愛娘と愛息子に煎餅をあげて、列を離れた。俺を排除した受付嬢が羨ましそうな目で此方を見ていた。子供達、早く食べちゃいなさい。
寝具店とカロ邸にも寄って煎餅をお裾分けし、カケリウムを補充されて帰宅。体調の戻って来たテイカが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、カケル様」
「カケル、おか~」「甘いにおい~」
「シンク達とママ上殿と、それとアルネス達に煎餅あげて来たんだよ。お前等はまだあるだろ?」
「「他の、つくって」」
似た者二人がステレオでくっ付いて離れない。ハーク達の見守りもあるのでチャッチャと作ってしまおう。貴重な醤油を使ったみたらし団子で、手持ちの醤油が無くなった。だいぶ時間も経ってるし、仕込んであるヤツを搾る時間を作らねば。
それから三日経ち、棺が教会の地下へ納められると貴族達は束の間の休養を得る。ハーク達王家も同じく、自室にて疲れを癒していた。
「お疲れだな」
「「「いらっしゃいませ、カケル様」」」
「坊っちゃま。カケル殿が居らしましたぞ」
「カケル~、疲れたよぉ」
ベッドで寝たきりになってるハークが片手を上げて返事する。流石のブルランさんも今は注意出来ないか。
「疲れは《抵抗》や《耐性》で忘れられるぞ。《遮断》でも良いな」
「ボクスキル使えないもーん。それに忘れるだけで無くなってないじゃーん。後でもっと辛くなるヤツー」
聡い奴め。聞くとアルアも同様に、ベッドの住民と化しているそうだ。
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる