上 下
1,332 / 1,519

国葬

しおりを挟む


「…仕事ご苦労。何か変わりは無いか?」

 声を掛けるとグリグリを止めて膝を着くメイド達。冷や汗をかくから最初からしないで欲しい。

「ゴモラン隊長の部隊が夜間行軍の訓練に出ました」

コレは既出の情報だ。コレが無ければハーク達の乗り物が無いのだから。

「其方からの情報はまだ此方には流れて来ておりません」

「攻撃魔法の爆発とかは見えなかったのか?」

「山向こうが少し明るくなりましたがそれだけですね。音等は聞こえませんでしたし、衛兵達には稲光だと思われているでしょう」

…コレはリュネが何かしたかな。まあ直接手出ししたのでは無いし問題無いか。

「それで、彼処はどうなりましたか?」

「一先ず皆無事だよ。詳しくは仲間が戻ってから聞くと良い。帰る迄が遠足だしな」

「はぁ」

夜もすっかり更けたおかげで眠いのだ。島に戻って朝迄寝る。

 目覚めて朝食を摂っているとリュネが帰って来た。

「「「お帰りなさいませ、リュネ様」」」

「ただいまぁ~。カケルさぁ~ん」

リュネの帰宅に女達からの出迎えの声が上がると、リュネは応えてこっちに飛んで来た。リュネも疲れたと見える。膝に乗せてやり撫でる。

「お帰り~。ご飯はまだか?」

「食べてませ~ん」

俺の食事をリュネに与え、リュネに給餌されたりして朝を過ごした。
食後は城へ直行する。リュネは寝ると言うので休んでもらい、一人で城へと《転移》した。

「「「いらっしゃいませ、カケル様」」」

「うム」

ナイフを後ろ手に隠し持ち、メイド達が頭を下げる。ハーク達にブルランさんも居るからじゃれ付いては来ないようだ。何時もそうであれ。

「カケル、待ってたよ」「カケル様、お待ちしておりました」

天才兄妹も飛び込んでは来ないか。少し寂しいぜ。

「おはよう。体の調子はどうだ?」

リュネのおかげで魔力は戻っているが、仮眠だけで城へと戻り、命を懸けたストレスに疲れが重なった上、まだしっかり寝て無いとなると、子供の健康によろしく無い。トリントン兄弟は宛てがわれた客室で寝ていると言う。

「少しでも寝た方が良いな」

「カケル一緒に寝よ!?」「カケル様、私寂しくて一人で寝られません」

「一人で寝ろ。寝るのも仕事だ」

「ちぇ。カケルは仕事と建物の事になると人が変わるよねー」

「昼間と夜とでも変わりますねー」

「グハハハハ、俺は二つの魂と、二つの精神を持って居るのだー。甘いモン持って来てやるから昼迄お休み」

「「はーーい」」

入浴施設は営業中で連れてけないので昼迄ゆっくり休んでもらった。

 午後になり、レッグルートのじっくり焼きを持って報告を聞きに行く。
ジョンとジジババは夜の内に合流出来たエルシド部隊に帯同して小アトールへと向かったそうだ。

「結果、俺達は何も出来無かったな」

「死ぬ予定の者を一つ場所に押し込めただけだったな」

「ボクも戦いたかったよ」

為政者三人、戦いに出て戦わずに帰って来た事を悔やんでいるが、口だけなら誰でも言える。

「支援も立派な戦いだ。それに、現場を知るのは大事な事だぞ?それに、前線で戦うような貴族は誰かの謀略に引っ掛かったか、余程の武人か無謀者だろ」

「無謀者には、なりたくないな」

「戦いはテーブルの上で起きている訳では無い。と言う事だな?」

「その時に、やれる者がやれる事をする。皆様はそれをなさいましたわ」

アルアが男達をフォローする。良い子だ。


 それから数日。国葬の日となった。俺はゴモラン邸で過ごす。貴族は皆、喪服だ。一時的に街の人口が膨らみ、街には商人と貴族の縁者が、貴族街には貴族と世話人が溢れ、どの貴族家も寄子や親戚筋の者を滞在させ、葬儀に参列すると夫人は言う。

「この家には親戚筋等は来ないのか?」

「ええ。皆私とエルシドの実家にて逗留なさっておりますわ」

黒い喪服から伸びる色白い細指は俺のアイツを扱くのに夢中だ。家主は訓練中に緊急案件が発生し、その対応に追われて現地で指揮を執っている。国葬を休む事の出来る数少ない事例の一つだ。




しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...