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発作
しおりを挟む「準備は終わってるみたいだな」
「当たり前じゃ。期を逃して儲けは出んわい」
成程な。次に向かうは魔法ギルドじゃ!と言われ、それに従う。《感知》で見るが、裏口らしい所が無い。正面に人気が無いので正面で良いや。
「ん~…」
お、一応俺の言い付けを守ったらしい。唸るだけで抑えたハスカンダはズカズカと魔法ギルドに入ってく。見た目からも何か普通に見えるな。後ろ姿だけでは歳分かんないし。
だが魔法ギルドの職員は背筋が伸びて固まっていた。
「デルトローの奴は何処じゃ?案内せい」
「はっ!はいっ!」
元気な声で返事をし、案内してるのは此処のギルマスなのだとジョンは言う。余計な事を言うなと目で訴えるギルマスは、階段を上がって最上階へと上がって行った。
「し、失礼致します。ハスカンダ様をお連れしましたっ」
ノックを三回。お辞儀は四十五度。まるでサラリーマンみたいな応対でデルトローと相対し、ハスカンダとおまけをギルマス室へと案内するギルマス。
「来たな?」
「終わっとるな?」
「うむ。茶を持て」
「はっ!只今っ!」
ギルマス慌てて出て行った。お辞儀はしっかり四十五度で。社会人の鑑である。
「お茶?そんな事して、婆さんが乗り込んで来っぞ?」
「どうせ時間が掛かるからの」「だのう」
歳を経てもそれは変わらないのか。ハスカンダがソファーに腰を落ち着けて、向かいにデルトローが座った所でバタバタと下から駆け上がる音がする。お茶急ぎ過ぎだろ。
「あンた等っ、お茶なんて呑気な事言ってんじゃ無いわよっ!」
ノックも無く駆け込んで来た、婆さんことビビエルは下半身を光らせている。何かの魔法だろうか?
「婆さんや、回復しながら来おったか」
「歳は取りたくないのぉ~」
「あンた等のソレも回復装備じゃ無いかっ」
ローブに自動回復の魔法が施されているみたい。それで二人共ローブなのか。ビビエルはと言うと、同じ様で少し短いローブに、腕には手甲で袖を纏め、脚には脚絆を巻いている。多分お洒落目的では無いのだろうな。杖は二人の木製と違い、細い金属製だ。
「早く立ちなっ!行くんだろ!?」
「「おうよっ」」
「さあて、行くのは良いが、どうお目通りしたい?」
「お目通り…」
「そりゃあ、ハーク王のピンチに颯爽と「馬鹿っピンチになんてさせるもんかねっ」」
「ジョンだけなら森に放置で良かったが、あンた等を放置するのは不自然過ぎるからな」
「ああ…、ワシ等が偉いばかりにハーク王の元に行けんとは…」
「はっ、はぁっ、はあっ、ハーク王っ様っ」
「あたしが居なきゃ…ハーク王様が…あたしが…」
「少し落ち着け、ヒッヒッフー、ヒッヒッフーだ」
このままでは発作で死んでしまう。仕方無いな。
『カケルです。増援に来た過ぎて発作を起こし掛けてるジジババが居るのですが、同行させてもよろしいでしょうか?』
客車の中で座して待つブルランさんが口を動かしハークが動く。そして客車の外へ出ると他の客車を回って全員を降ろし、多分説明しているのだろう。皆が多分聞いている。
暫くすると、ブルランさんは上を見て、腰を曲げた。良いみたいだが、私はそこに居ません。
「ブルランさんと連絡が着いた。皆来ても良いって」
「「「おおお…」」」
「分かってると思うけど、森の中、更に砦の直ぐ近くだから、呉々も静かに」
「うむ」「無論じゃ」「……」
「じゃあ、行くよ」
《転移》して、衝撃二つ、左右から。ハークとアルアの突進攻撃。静かに顔をグリグリと埋め込まれ、三つの怨嗟の視線が刺さる。
「相談役とジョンが増援に来た。為政者としてやる事をやらん男に着く膝は無いぞ?それに淑女は男を立てるモノだ」
「「……」」
「お爺ちゃんお婆ちゃん、来てくれてありがとうね。ボク、この国の為に頑張るから」
「皆様、ご助力感謝致します。皆様のお陰で兄の勝利も揺るぎ無い物となるでしょう」
「「「ははっ」」」
ふぅ。俺のお節介は此処迄だ。気配を殺して城へと戻った。
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