1,297 / 1,519
人の事言えない
しおりを挟む「なら何故最初からそれをしない。誰か一人でも死んだらアルアが傷付くだろう事、理解している筈だ」
「本当に、申し訳御座いません」
深く腰を曲げて謝意を表すメイド長に、俺は強く息を吐いてアルアを解放した。
「支度を済ませたら一ヶ所へ集めろ。ハークの所に移動する」
「はい。承りまして御座います」
「カケル様…、申し訳ございませんでした…」
「お前に何かあったら俺は悲しい。分かるか?」
「…はい」
短い言葉を返すと短い返事が返って来た。
荷物を纏めて総員乗り込みを終えたゾーイ車をハーク邸へと《転移》させる。庭にぎっしり並べられ、ゾーイ達も窮屈そうだ。
「アルア!」
「お兄様っ」
感動の再会よりも荷物の搬入が先だ。両家のメイドが束になり、荷物をどんどん運び出す。空荷になったゾーイ車は、浮かせて玄関前に移動させ、逐次街の西側にある厩舎に移動してもらった。
搬入は終わり、ルームメイキングが終わるのは深夜になると言う。それ迄は家令であるブルランさんにメイド長もバタバタしてるので俺達は暇を持て余すしか無い。
「カケル、女の子泣かしちゃ、メッ」
「ダメなモノはダメって、言っても分からんならな。…とは言え、自分の娘にやれるかどうかは分からんが」
「あの子は一度痛い目を見てますからねぇ。ソレを繰り返す様な真似をして欲しくなかったのでしょう」
「カケルがたすける。ばんじかいけつ」
「助けられるタイミングで俺が気付ければな」
「がんばる」
「善処するよ」
お茶を飲み飲みまったりしていると、ノックをしてメイドとハークにアルアがやって来た。
「お部屋の用意が整いましたので、後は休んでよろしいと、婆やが…」
「そうか、お疲れ様」
「あのっ、あの、先程は本当に申し訳ございませんでした」
「うふふ、叱られちゃいましたねぇ」
「うきゅ」
リュネがアルアを胸に挟み、窒息させようとしている。
「カケル、アルアを怒らないであげて」
「怒ってなんて無いよ。所で、旧王都には行くべきだよな?」
出来ればブルランさん達を交えて話したかったが、居ないのでは仕方無い。
「うん。葬儀にも出たいし、王としての名乗りも上げないと、テンテリオンが王になっちゃう」
「テンテリオンは、良き王になれそうな男か?」
「あまり外には出歩かない人だけど、悪人では無いと思う。勉強は凄く出来るよ。公爵家の跡継ぎだしね」
「では、その弟は?」
「ハーラデーは家を出るからって、反対に外に出てる事が多かったよ。集まりにも中々顔を出さなかったし、あまり話をした事も無いんだ。
二人の事を言えた義理じゃ無いけど、僕だってまだまだ勉強不足だよ。僕も含めて皆苦労するんじゃないかな」
「そりゃそうか。俺も人の事言えないからなぁ」
「一緒に勉強する?」
「十日に三日くらいなら…」
「ぷはっ!わ、私もっ、もっと勉強しますっ」
「一杯勉強しましょうねぇ~」
「んん~っ」
夜もだいぶ更けて、子供達はそろそろ寝る時間だ。大人なネーヴェは寝ちゃってるし、今夜は一旦島に帰る事にする。リュネはアルアと寝るみたいでハーク邸に残ると言う。また何か教え込むつもりなのだろうか…。
ネーヴェを抱いて島へ帰り、翌日は朝食を摂って直ぐにハーク邸へ向かう。まだハーク達の朝食が終わってなかったみたいで、食卓へお邪魔してお茶だけ頂いた。そして食卓が終わり、食器が片付けられた食堂でそのまま今後の話し合いをする。
「《転移》にて、私共をミソプファンティアへ送り届けて頂けると、お嬢様から聞き及んでおります」
「誰が行くのか。そしてその後の動き、ですな?」
「自衛出来る者が絶対条件で、後はご自由に」
ハーク側からはブルランさんにメイドが三人、アルア側はメイド八人が同行する事になった。メイド長は自衛的に役不足であると感じた為、ハーク邸の留守を預かる事にしたそうだ。
「全員行っちゃえば良いのにぃ」
それは流石に数が多過ぎるだろー。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる