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頭がパーン
しおりを挟むネーヴェの《結界》はともかく、リュネの《封印》とミーネの《遮断》が解かれてもサミイは横になったまま。人の弱さと言うより龍の強さだな。
カラクレナイは撓垂れて、自分のせいだと後悔する。
「誰のせいでもないよ。それに反省会は帰ってからするモンだ」
「うん…」
「カケルさぁん、治しましたよ~」
ミーネの治療が終わり、リュネが《結界》を追加する。お陰でまた少し楽になった。
「旦那様よ、迷惑を掛けたな」
「娘にも言った筈だぞ?反省会は帰ってからだ」
「そうだな。私も強めに張り直そう」
三龍の全力に近い《結界》で俺のは二枚迄減らせた。やっと回復出来る。サミイを浮かせて胡座に乗せて、《感知》で診ながら《念話》を飛ばす。
『サミイ、そろそろ起きようよ』
『サミイ起きるの!』
キーンと耳が痛い感じ。カラクレナイが混線する。
『カララちゃぁん、そんなに大きい声じゃなくても大丈夫よお?』
『肉体、精神、共に何ら問題は無いが、唯の疲労だろうな』
『主様、それに姉者達も。そんな所で遊んでいるなら戻って来たらどうだ』
混線が酷い。三姉妹に娘、姦しい事この上無い。《念話》切っても入って来るのだ。何でよ?
「う、うるさい…」
「サミイ!サミイ!あはあ~ん」
そりゃあ起きるわなって感じのガヤガヤに我慢出来無くなったサミイが目を覚まし悪態を吐くのをカラクレナイが絞め落とそうと抱き着いた。
「カラクレナイ、サミイが死ぬ。離れて」
「あはああ~ん!死なないもん、うわ~~んっ」
泣きながら加減したようだ。サミイに背中をポンポンされて、泣き疲れてしまったようだ。おやすみ。
「さて、このダンジョンどうしてくれようか…」
俺の言葉に三龍の目が変わる。
「娘を泣かせた罪は重いですねぇ」
「私の娘だ。だがどうする」
「コア、つぶす」
「あの…、取り敢えず帰りませんか?今からなんかしたらカララちゃんを巻き込んじゃいます。あとわたしも」
…考えて、サミイに同意する。ミーネは怪訝な目をサミイに向けたが、それを手で制する。
「俺に考えがある」
「ふぅ。惚れた弱味、か」
「取り敢えず上に戻ろう。七十九階迄上がれば《転移》で浅い所まで飛べるだろ?」
「…そうですね。戻りましょう。惚れた弱味、ですねぇ」
俺の言葉にリュネが続く。帰るぞ。サミイを抱っこし、ネーヴェを肩に担いで歩き出す。ミーネはカラクレナイを横抱きにして付いて来る。それにネーヴェとリュネが続いた。
「カケルさん、この奥はまだ行けませんね」
「ああ。だが次は無い。消される恐怖を感じて待っているが良いさ」
階層の奥、隠し扉の先にある通路、更にその先にある空間。今はその時では無い。この場所を覚える為に来たのだ。
「リュネ、頼む」
限界迄《結界》を張る。
「はぁい」
瞬きすると気配が変わる。浅い階層に飛んだようだ。暫く歩くと光が見える。外だ。一階の奥に飛んでたのか。
外に出て、延長金を払う人妻乙女を待ちながら、何処へと無く語り掛ける。
『外に出たぞ。助けてくれてありがとな』
居るのだろうが、ソレは応えない。会話が出来たら良かったのに。
「カケルさぁん、浮気ですかぁ?」
事務処理の終わったリュネ達が戻って来た。垂れ流しの《念話》聞いてた癖に。
「命の恩人だぞ?人じゃ無いが」
「精霊と会話なんてしようとしたら、人の子は頭がパーンって、しちゃいますよぉ」
「それは、残念だな。じゃあバルタリンド経由で帰っておいで」
「旦那さまは?浮気ですか?」
「直で帰るだけだよ。皆はドロップの買取りとかあるだろ?ゆっくりお風呂に浸かっておいで」
まあそれならと了承し、五人は街を出る為歩き出す。俺も行こう。路地裏へ向けて歩を進めた。
島の上空に着き、体を《洗浄》しながら下へと降りるとテイカにラビアン達が迎えてくれる。
「お帰りなさいませ。皆様ご無事で何よりで…」
テイカが固まり、ラビアン達も気付き始める。サミイ達と合流してからメット外してたからな。
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