上 下
1,257 / 1,519

未踏地

しおりを挟む


 女達は入口には戻らず、俺と並んで下り階段を降りて行く。

「敵出ないから力抜けよ」

「そ、そうだねっ」「私等初めてだからさ、お手柔らかに頼むよ」

「そこ迄急に強くはならんから。それに敵の姿が殆ど変わり映え無くて飽きるぞ?」

「それでも強くなるんだろ?」

「まあな。今回は戦わせんが、途中からドロップした武器でないと戦えなくなる」

「それ、魔装って事?」

「だな。見せびらかすと王家に奪われる厄介者だ」

「それちょいと前にあったよね、Aランクの冒険者が城に呼ばれて…って」

「知ってる!ギルマスパーティでしょ」

「だな。宿に泊まるのもキツいってくらいの値段で買い叩かれたらしいぞ?」

「流石にソレは盛ってるよね?」

「旧王都を封鎖されて出られなくなってたんだ。連泊し切れなくなったら路地裏で寝なきゃならんだろ」

「あんた「カケル」…カケル、あんた詳しいね」

「彼奴等を連れて旧王都から脱出したの、俺だからな」

「ハハッまたまたー」

「サルディナ、多分、本当」

「まあ、強さは認めるけどさ」

「そうじゃない。カケルとネーヴェ、只者じゃ、無い」

「ネーヴェには様を付けとけ」

「え…貴族だったの?申し訳ございません」

「だいじょぶ。外では様つけて」

ネーヴェの寛大な心によって、三人の命は長らえる事が出来た。良かった。それだけ人との交流に馴染んで来たのだろう。人を見たらドレインしてたネーヴェがな…しみじみ。

「此処も階段部屋なのかい」「ホッとするねぇ」

 ホッとするのは良いが、後ろのパーティが入って来るかも知れんので、ホッとしない方が良いと思うぞ?とは言えそろそろ飯の時間。ネーヴェの腹が鳴っている。甘納豆を食ってたから昼を過ぎてるかも知れん。

「先ずは食事と休憩して、それから先に進もう」

「食べながらじゃダメなのかい?」

「干し肉食い千切るのに夢中になって、不意討ちされたくないならな」

「…そうだね。私等には未踏地だったね」

で、ローテーブルと調理器具を出してスープと薄焼肉を焼く。ソーサーは島のを持って来た。

「こんな所で肉焼く人、初めてだよ」

「随分手ぶらだと思ったが、マジックバッグ…ボックスなのかい?」

「容量少なくてもあると便利だよな」

俺のはスキルだがひけらかす事もあるまい。食事を終えて、出す物出して出発だ。

「確かに、強くなってるね」

「この程度の数なら私等でも殺れそうだ」

「ドロップは、ボスには敵わないけど」

「上が混んでたらそのまま潜るんで良いんじゃないかい?」

「そうね」

「歩くのは面倒いけど、人も居ないし狩り放題なのは気分が良いね」

そして辿り着いた地下三十階のボス部屋。女達は戦闘しまくっていた事もあり、疲れの色が見えている。

「此処で休憩かな」

「まだ殺れるさ」「ああ」「私も」

「そうか。なら倒したら階段部屋で休憩だな」

疲れは動きと意識を鈍らせる。一段と強くなったボスと雑魚に少なからず傷をもらうようになった二人にタオルを投げる。

「お前達、そこ迄だっ」

前衛二人に《結界》を張ると、得物を握って前に出る。そして《威圧》で敵の動きを止めながら、煙とドロップに変えて行った。

「何だったんだい、さっきのは」

「急にポーリの壁みたいなのに囲まれたけど」

「凄いだろ?俺も使えるんだぜ?」

「熟練度が、凄い。凄過ぎ」

ポーション飲んで、ドロップ拾って下に降り、一息付いた女達から飛んで来る質問を軽く流す。

「お前達の限界は二十九階迄だろうな。温存して此処迄来ても稼ぎにならんだろ」

「悔しいが、そうなるね」

「けど、此処のドロップは儲かりそうだ」

「強くなるか人を増やすか、だな」

「金持ちの旦那に見初められるってもの、良いんだけどねぇ」

「出会い、無いもんね」

ポーリの言葉に二人は言葉を失った。

「傷で体が汚れてるだろ。水あるから体拭いたら良いよ」

「そんな事言って、私等を此処で…」

それもアリだよな。ネーヴェが睨んでなければ、だが。





しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

処理中です...