上 下
1,227 / 1,519

戦後処理

しおりを挟む


 地下六階。階段を降りた先の小部屋で昼休憩。皆が干し肉ガジガジしてるので、俺も倣って干し肉を齧る。偶に食うと美味いよな。

「ギチッ。カケル様って、干し肉食べるんだね」

「ふふっ、あたい等より良いモン食ってると思ってたよ」

「良いモンは食ってるが殆ど自作だよ。コレだと塩と香辛料代くらいしか掛かって無いな」

「へぇ。カケルさんって料理出来るんだ」

「主婦の人には負けるがな」

メインの食材さえ取れれば後は何とでもなるものだ。まあ取れれば、だが。
食事を終えて、煉瓦の壁を幾つか建てたら皆こっそりと出しに行き、準備を整え出発となる。

「確かにねえ。同じ時間に食ってんだ。出すのも大体同じってかぃ」

「休憩の方が重要なんだけどな」

「だねぇ。座ってるだけだけど、多少なりとは魔力が回復した気がするよ」

「それにしてもさ。カケル様の事だから一発楽しんでから潜り出すのかと思ってたよ」

「何だいあンた、疼いてんのかい?まあ分かるけどさぁ」

「楽しみは、先にやる事やってから…ってな。腰振るだけで金にならなきゃ潜った意味も無いしさ」

「確かにね、この人数だと儲けなんて高が知れてるけど」

そんなこんなで地下十階。ボス部屋前に到着。

「此処は総力戦だ。とにかく雑魚が多いから、死なないように頑張れ」

「「「おうっ」」」

中に入り、扉が閉まると現れる魔法陣。立ち止まらず、 魔法陣から湧き出る頭をシャムシールで斬り捨てた。

「出る前に減らせ!後衛は固まって集中攻撃だ!」

反射神経の良い前衛達が走り出し、まだ動けぬ敵の首を刎ねる。それでも三百近い敵が出るので一割減らした程度だが、自分達の陣地を確保する事は出来た。
中後衛は、前衛達の手の空いた敵を狙い、弓矢や魔法の集中砲火で煙に変えて行く。死んでなくても足止めや機動力を奪える。それだけでもこちらの損害は大きく減るので疎かには出来無い。

 戦闘が長引き、疲れの見える女達を回復し、魔力の減った者に魔力を与え、散らばったドロップを回収しながら立ち回り、最後の一匹を煙に変えて、漸く敵が居なくなった。

「はっ、はぁはぁ、み、水…」「こりゃ、キツいわ」

「怪我人は居るかい!?早くしないとこっちの身が持たないよっ」

「手に肉刺こさえただけだけど、良いかい?」

「魔力が溢れちまうっ。早く手ぇ出しな!」

二十人も居ると戦後処理も大変だ。疲労で腰が抜ける者、魔力の譲渡が多過ぎて泡吹く者。一人一人をケアして行って、水を飲ませて一息着いた。

「布団屋の娘達って、此処抜けたの…?」

「ウチ等、カケル様の手ぇ借りてヘトヘトだってのに」

「サミイ達は強いぞ。特例でダンジョン行くくらいだからな」

「何だい、知り合いかい?」

「妻だ。宜しくしてやってくれ」

「は、はは…。それなら、納得さ」

 疲れは《耐性》で忘れさせる事が出来るが、あくまでそれは一時的な物なので長い休息が必要だ。

「十一階に降りたら野営しよう」

「カケルさん、あたい等まだまだイける口だよ?」

「早く寝たいってのは分かるけどね」

「「「あははははは」」」

笑顔があるのは元気な証拠だな。だが考えは変えない。

「地下十一階から一気に二十一階に転移するんだ。そこから上に向かう訳だが、急に敵が強くなるから疲れは取り除いておきたい」

「そのまま降りてくんじゃダメなのかい?」

「そのまま降りたら二十階から下には行けないし、来た道を戻るのは敵も出なくて勿体無いだろ?」

「何で二十階から下に行けないのさ」

「簡単に説明すると、飛べない奴は敵に食われて死ぬ」

「「「……」」」

「えと、カケルさんは、殺れんのかい?」

「勿論。けど皆は殺れないからな。中を見て希望を抱くのも辞めて欲しいんだ」

「そうさねぇ、抱くより抱かれたいやね」

「風呂作って飯作るから、抱かせてくれ」

「あは、初めからそう言いなって。だよなみんなぁ」

満場一致で野営に決まった。






しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...