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人対人の戦い

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 女達を従えて野営地へ。直ぐに戻るとディワダを降ろしてバルタリンドの施設へ移動した。

「あ、お帰りな…チチッ、キーチキーチッ、キチチッ」

「えっ?」「カケル様?」「誰ですか!?」

一杯来たなあこりゃ。施設の各所で片付けや掃除、明日の仕込みなんかをしていたラビアンが全員集まったようだ。

「野盗に捕まって嬲られてたのを確保した。堕ろす必要があるので処置は後でする予定だ。何人か、此奴等を風呂に入れて休ませてくれ」

「「「はいっ」」」

「此処に居る者の指示を聞け」

「「「…はい」」」

双方に指示を出し、俺は野営地に戻る。


「てっ!敵っ!敵襲っ!敵襲っ!」

 三組の誰かが声を張る。女の声は良く響くな。それにしてもやっと来たか。しっかり寝静まった頃に来るのは流石に慣れている。そして面倒な事に全員で来ない。男七十七人中、現れたのは四十六人。YTU46と言った所か。残りは《洗脳》した八人と増援するであろう奴等の計三十一人。増援を取り逃してもノルマは達成だが、潰してやらんと被害が出るし、忖度してやるか。
野営地と、野盗の居る場所に、涙滴形の《結界》を張る。これで逃げられなくなったぜ。

ぐへへ。ぐひひ。何故皆が皆そんな感じに笑うのだろうか。ホルスト車からの増援で計三十六人。暗がりではパッと見同数なのに余裕でぐへって居られるのは増援を待機させているからなのだろう。

「ひひっ、男は殺せっ!女は殺った男の数で決めるっ!!」

「「「うおおおおっ!!!」」」

「野盗を殺って女を買うぞ!」

「女は何買えば良いんですかあっ!?」

「男娼でも買えっ!殺るぞー!」

「「「おおおおおっ!!!」」」

何方もやる事しか考えて無いな。買うか、奪うかの違いだけである。

 人対人の戦いでは、モンスターとの戦いよりも隊列が重要になって来る。黒い森で騎士の訓練を見ていた付き添い達は、前中後衛に分かれて最低限の指示を飛ばす。前衛が列を成し敵を押し止め、中後衛がメインアタッカーとなって敵にダメージを与える戦法だ。相手には魔法職は居ないが、弓矢や投石での攻撃が飛んで来る。
後衛へのダメージを防いだのはなんとあの弥一だ。

「翔~、魔力くれぇぇぇ」

俺からパクった土魔法で何枚もの薄い壁を生やして障害物とし、魔力切れでぶっ倒れてた。固めといてやろう…。
敵には盾職が殆ど居らず、回復職も居ないようだ。そして大した装備も無いせいで、チマチマと敵に生傷を与えている。此方も多少の傷を貰っているが、交代して回復を受けているお陰で敵の死体を一つ、また一つと増やして行った。
戦闘中はアドレナリンが出ているのだろう。人を殺した感覚が麻痺している為動きに乱れは出てないが、後でケアしなきゃならんかもな。

「かーけるーっ!」

「手伝いはダメだって言われてんのに…」

「そんな事言ったら俺なんて最初からコキ使われてるぞ!?俺にも魔力くれぇ」

壁に隠れて怪我した男を治療するグリオーソががなる。同時に敵にも動きがあり、増援が近付いて来るのが見える。

「武力以外は問題無しって事だな?」

「はーやーくーっ」「頼むっ魔力が尽きるっ」

仰向けの弥一と、光の弱まるグリオーソに魔力を注ぐ。

「アバッ、全身勃起したみてぇだ」

「どんどん使わねえと破裂しそうだぜ…」

「だなっ、いっくっぜっ!」

立ち上がり、イキる弥一が増援の近付きつつある敵の後方に十ハーンを超える程の高い壁を建てた。へぇー。ソイツの足元を崩して倒壊させると、前線で善戦していた野盗共の数十人が押し潰されて身動き取れなくなった。まだ死んでは無いだろうが時間の問題だろう。
前線が崩壊し、左右に残る残存が、囲まれ各個撃破されるのを阻んだのは敵の増援三十一人。その中に一人だけ、ちょっと厚着してる奴が居る。ボスなのか、それとも只の寒がりか。
倒れた壁の上に立ち、抜き身の剣を天に掲げた。




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