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一番偉いです

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 既に出発準備が整った門前では、英気を養ったであろうお手頃価格達が静かに体を解していた。バルタリンドの時を思えば成長したのかな。

「お、翔。来たな」

「おはよう。羽目は外せたか?」

「寝るだけで手一杯だぜ」

俺の傍に来た弥一に倣ってお手頃価格達がやって来て、班毎に集まった。

「皆集まっているか?居ない者は返事しろー」

ダミヤン渾身のギャグに返事は無い。まあ分かる。先輩の冗談程対応に困るモノは無いよな。

「居ないなら出発だ。乗り込んだら一号車から出るぞ。乗り込めーっ」

「「「おうっ」」」


「やっぱり三と四はそのままか」

 各員乗り込み出発すると、弥一が口を開いた。

「ムームードさんは貴族の生まれだそうだし、それであの場所なのでは?」

「そう言うの、気にする人には見えねーけどな」

出発して直ぐなので、元気な皆が会話に混ざる。

「なあ。皆が野盗だとして、何処を最初に狙う?」

「え?んー、何処っすかねぇ」

「先頭車を押さえれば足が止まりますよね」

「それだと道を逸れて逃げられるよな?」

「そっか。目標のホルストを潰しちまえば守るしか無ぇよなっ。えっと、そう言う事っすよね?カケルさん」

「うム。で、この車列なら、何処が当たりだと思う?」

「まあ三か四、だろうな」

「斥候、前衛、後衛で分けるなら、三が怪しい…か?」

「ヤイチは女目当てか」

「まぁな。それにさ、貴族の護衛の時、宰相夫人は前の車だったじゃん?後ろが荷物とメイドさん二人で」

「だとすっとよ、ヘンプシャーさんが貴族扱いされたいって事か?」

「一番偉いですよーって?」

「なあ、あの人、偉いか?」

「エロいな」「ああ、エロい」

俺と弥一がその問いに答えた。

「「「成程…」」」

納得するのか。

「ま、どれも似たような庶民用の荷車だ。敢えて真ん中を狙う必要は無いな」

「どっち道前を塞いで横から攻撃って感じだろ。んでよ、翔は護衛した事あるんだし、その時野盗は殺ったんか?」

「俺ん時は…、休憩地を狙われたな。斥候使って俺達の位置を確認して、休憩で足が止まった所を襲おうとしてた」

「ホルストが一番疲れるタイミングですね」

「で、どう殺ったんすか?」

「参考にならんぞ?」

「勿体ぶんなし」

「むう。先ずは斥候を殺して、二手に分かれて休憩地に向かおうって奴等を分かれる前に殺した」

「ど、どうやって?」

「企業秘密なんだがなぁ。まぁ良いか。索敵スキルで敵を見付けて、遠隔攻撃で殺した。浮かせるスキルで敵の群れを浮かせたら、後は殲滅する迄殺すだけだ」

「ああ、あれっすか…」

「空から落とすだけで終わりそうですね」

「なあ翔、アレって《結界》か?」

「ああ。使用感は変わるが《威圧》でも似たような事は出来るぞ」

「結界…物語でしか見た事無いぜ…」

「お前本読めたのかよ」「金持ちめ、なんか奢れ」

「ガキの頃、馴染みが商家だったんだよ。そこで読んだだけだぜ?」

「「なんだぁ」」「翔、何か居る。前方左右」

やっと弥一の《感知》に掛かったか。だが遠くて何か迄は判別出来無いらしい。

「居るねぇ。どっちかに絞ってみ?」

「絞る?」

「画角を狭める」「お、そうか」

地球人なら分かるよな。簡単に言えばズームだが、作家だった弥一ならもう少し深い所迄理解出来る筈だ。

「何だ?ヤイチ、敵か?」

「ちと待て……。良しっ、人だ。悪意有り。もう一つも同じだな。どうする?」

「野盗かな…?」

「左右って、離れてんだろ?まさか、さっき言ってたみたいに…」

「徒党を組んでるのかも…」

「んー、翔が俺が気付く迄放ったらかしにしたんなら、敢えて罠に掛かる方が良いって事か」

「ディワダ次第だな。まあ一号車からは誰も出て無いし、考えてる事は一緒かも知れんね」

「ディワダさんが教えたら飛び出して行きそうっすよね」

「懲りて無きゃな」

「あ、一号車に動き有り。得物抜いて待つみたいだぜ?」

この距離なら弥一でも分かるのか。さて、どっちに行くのかな。
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