上 下
1,151 / 1,519

秘密でハメハメ

しおりを挟む


 午前午後、休憩地の手前迄走るのを続ける事十日。動けるデブこと弥一の体に異変が訪れた。

「お前、少しシュッとしたか?」

「そう言えば顎が見えるぞ」

六組の皆が言うのでそうなのだろう。

「元々あっただろ顎は」

弥一は反論するが、野郎が野郎の顔を凝視なんてしないもんな。俺も気付かなんだし。それでも十日も走れば脂肪も燃焼するか。本日夕方、時間的にはあと少しでメルタールに到着すると馭者が言う。

「街に着く迄に痩せられて良かったな」

「ん?娼館行く金なんてねーぞ?」

弥一は食欲より性欲を取るのか。これは末期だな。

「金は討伐した素材で幾許かにはなるべ。まあ、弥一の場合、買い食いで終わるだろうけどな」

「ヤイチは食い溜めするのか」

「女買える程貰えれば良いっすけどねー」

「荷車とかの整備に三日掛かるって言ってましたよね。それ迄俺達は休みですか?」

「だな。依頼を受けても良いが、土地勘無いだろ?街を散策するのが精々だろうな」

「夕方着くから正味二日か。翔はどうすんだ?」

「着いてから考えるが、お土産は買わんとな。それに買い出しする事になるだろう」

「中々羽目を外せないんすね」

君等に秘密でハメハメしてたけどな。そんなこんな、俺達が駄弁っていると、横から斥候の騎士が追い越して、メルタールの門へと駆けて行く。先触れだな。

「翔、俺達も出るか?」

「残念な事に敵が近くに居らん。門前に着く迄待機だな」

「野盗、結局出ませんでしたね」

「草原地帯で昼間の移動なら仕方無いさ。この街道自体、そう言うのが来辛い所に作ってんだし」


 稍あって、メルタールの門前に到着。夫人達との挨拶があるので一旦全員下車をして、お言葉と受け取り証を頂く。今回は突発で、現地での依頼受注であったが、受け取り証をギルドに持って行くとお金に換えてくれるのだ。騎士の代表であるデヌーロが俺を呼んだのに、何故かヘンプシャーがしゃしゃり出てデヌーロの顬をヒク付かせる。目力が飛んで来るのをアイコンタクトで返しその場は済ませる。

「カケル殿、それではこれにて」

「旅のご無事を」

夫人一行を見送って、俺達も門を潜る。そしてそのまギルドへ入り、事務処理を済ませる。夕方の混み合う時間に三十六人も追加されたら受付嬢の顔も曇るし、買い取り嬢の目も濁る。
皆が受付けを終えると一旦お手頃価格達は解散となる。

「お前等、宿に泊まるくらいの金はあるんだろうな?」

「ギルドの安宿ならなんとか」

「そう思ってる奴はお前含めて三十人は居る筈だ。とっとと行かないと間に合わなくなるぞ」

「なっ!宿取れなかったら…」

「大部屋のある宿に行くのが安上がりだな。六人部屋なら十人は寝られる。ベッドは奪い合う事になるがな」

「皆、急ぐぞっ、翔またな!」

解体の支払いと護衛報酬は明日支払われるそうなので、今夜は寝るしか無いお手頃価格達。弥一の掛け声で外へと飛び出して行った。

 で、俺達付き添いは会議室のような部屋に集まり護衛報酬を分ける。

「ヘンプシャー、ちと欲張り過ぎじゃあ無いか?」

「貴族の護衛を真っ当にこなしていたのは私と彼女達だけよ?配当が付くのは当たり前じゃない」

分け前の分配でダミヤンが異論を唱えると、ヘンプシャーは反論する。

「ヘンプシャー、お前のやり方じゃ敵ばかり作りそうだな」

「Bランクの貴方は分け前が少ないから文句を言ってるだけでしょう?口を挟まないでくれる?」

そう。何故か俺の目の前には金貨が一枚ぽっち。ヘンプシャーの言う通り、分け前の少なさに文句を言っているようにも見える。

「お前、カケルの飯食ってただろう!?」

「それは護衛とは関係無いわ」

「否、関係あるぞ」

俺の言葉に《威圧》を込めた視線を飛ばすヘンプシャー。

「護衛する事で食料の買い出しに行く事になったんだ。先ずはその金を貰わなくてはならん。勿論此処にある金貨一枚じゃ全然足りないからな?」

疑い眼のヘンプシャー。金銭感覚無いのかな?



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...