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身代金を取る

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 お手頃価格の運動と、付き添い達のストレス発散が終わり、傷んだ者等を治して回る。回復も出来る弥一は糞するってトイレに駆け込んでった。野郎、サボってモクモクする気だな?

「お前の回復は魔法では無いな?」

近くで見てれば気付くか。グリオーソが問い掛ける。

「スキルだよ。便利だぜ?」

「自身を癒すキルは知っとるが、人に掛けるのは初めて見たぞ」

「治れば何方も一緒ってな。ほい、終わりっ」

「ありがとうございます。カケルさんとやりたかったけど、まだまだ壁は高そうです」

一組の奴にボコされた六組の男は、礼を述べて寝に向かう。俺も寝るかね。

「あの、カケル様…」

…騎士達が、戦いたそうな雰囲気で此方を見ている。木剣持ってるし、そう言う事なのだろう。

「訓練したくなったのか?」

「体が疼いてしまって…」「我々は鎧があるので怪我は殆どありません。ですので…」

怪我は無くとも鎧が凹むだろうに。夫人達の横に立つ騎士の代表を見ると、頭を縦に動かした。許可は降りているみたい。少しだけ、と念を押し、俺も木剣を握った。

「はっ!しっ!」

対人戦に慣れている騎士達は冒険者より上手い。唯、スキルが使えずレベルが低いだけだ。スキル有りの戦いであれば、《強化》無し状態での俺では太刀打ち出来んだろう。
カツッと軽く木剣を当てて試合が終わる。俺の勝ちだ。

「見え見えだな。剣筋もフェイントも、一歩離れるだけで丸見えだ」

「ありがとうございました」「お見事ですわっ」

 キャーキャー言わずに大人しく見てられるニーネンタールは育ちの良い子だ。対戦相手が身を引くと、俺が淹れ、メイドの注いだお茶を持って寄って来る。

「ありがとうございます。しかし見事等ではありませんよ。間合いを空けさせるのも一つの手、ですからね」

「あら、それは?」

「特に対人戦であれば、押し返す事が勝ちになる場合もありますから」

「それでもあの者は倒されましたのでしょ?」

「多対多であれば後詰と代わるだけです。他の皆を見てください、致命打は狙っていないでしょう?」

「……分かりませんわ」

「戦時では、唯殺すよりも捕まえて身代金を取る方が儲かるのですよ」

「まあ。ではキネイアッセンとの戦いは大損ではありませんか」

「宰相閣下が戦争を辞めさせた理由、お解りになられましたか」

「私がもっと小さい時、豊かなヒズラーを守る為と仰っていましたが」

「戦後直ぐ、俺が寄った頃には草木枯れ果てた土地になってましたよ。今は俺の仲間が国を興して木を植えたりしてますがね」

「カケル様のお仲間?」

「俺が様付けを強要する者等ですよ」

「あら、それは障らぬが良いわね」「王公に強要とは、聞き捨てなりませんな」

夫人と騎士の代表が反応して声を上げると、ニーネンタールに手を引かれた。座って話したいのだろう。俺は寝たいんだが。

「夫人、後で説明をなさってくださると有り難いです」

一礼し、お願いする。

「ふふっ、そうね。因みに何方様であらせられるのかしら」

「ミネストパーレ様と申します」

「して、そのミネストパーレ殿「「様です」よ」ゴホッ、失敬。ミネストパーレ様の治める国とは何処に?」

「国交を結ぶ事が出来ません故、場所はお教え出来兼ねます」

「他国に知らしめての国であると思われるが?」

「デヌーロ、お止めなさい。土地を荒らされた民の住まう土地に出来た国、おいそれと国交等結べようがありませんよ?」

「御意に御座います。されど、キネイアッセンはどう動くか…」

「それは問題ありません」

「「それは?」」

「キネイアッセンの帝国は、皇帝を滅ぼして俺が王位を受け継ぎましたので」

「あら…」「なんと」

「王籍でらしたのね。ふふっ、私より位が高いわ」

「なんと…」

「今は唯の冒険者ですので、そのようにお願いします」

「そうですね。デヌーロ、そのように」

「承知しました」

「カケル様、よろしかったら私も娶りませんか?」

ニーネンタールは許婚が居るでしょう?


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