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特技
しおりを挟むそれから二日後。施設関連の根回しも終わり、早めの朝食を摂った俺はギルドへ向かう。パッと《転移》しギルドの上空。《阻害》を掛けて下に降り、路地の隙間から現れる。ギルドの中は早朝な事もあって冒険者だらけ。掲示板の人集りと受付けに並ぶ列を見て気が滅入る。カロは上に居るので《威圧》の手で撫でてやると、何食わぬ顔で部屋を出た。部屋を出て、ニマニマしてるの見えてるからな?
「カケル様、カケル様は何処に?」
「ここに居るぞ!」
階段を降りて来たカロが俺を呼ぶのでお決まりの台詞を吐く。似たような言い回しなら何でも良いが、大きい声を出さなきゃならんそうなのだ。
「兄貴!」「兄貴~」「早いなあにき~」
他の冒険者に比べると小さいので気付か無かったが少年隊も居たようだ。耳も仕舞っているし、尚の事気付かんな。奴等受付けの列に並んでた。
「カケル様、上へどうぞ」
「兄貴何すんの?」「ダンジョンか?」「トカゲ殺る?」
「殺らないな。今回は付き添いみたいなもんだ」
「新しいダンジョン、連れてってくれよ」「よ」「よ~」
「その内な」
『お土産待ってるわね』
階段で待つカロに追い付き、上へと上がる。ギルマス室には男女が五人、男四の女一。先にソファーに座ってた。
「ん?Dランクには見えないが」
「そりゃあそうだ」「俺達がDならAなんてどんだけだって話だぜ」
「弥一が居ないって事はそうなるか。すまん、うっかりしてた」
素で間違えたので素直に詫びると、二人は手を挙げる。不問にしてくれたようだ。
「貴方Bなのよね?足は引っ張ら無いでちょうだいよ?」
女は少しイキりたいのか強気の姿勢。舐められたらあかん商売だし、女だからだろう。
「問題無い。俺等が動く事なんて、飯と糞と、寝る時くらいだろ」
「ふっ、そう願うぜ」
今回の男達はペニスケを見ても動じ無い。皆が、結構値の張りそうな鎧を纏い、自分の力を誇示してる。女も俺をBだと言って煽って居たのでそれ以上のランクなのだろうね。
「カケル様、この場では一番下のランクであるカケル様から自己紹介を」
「ん。二度も名を呼ばれたので分かっていると思うが、俺がカケル。カケルだ…他に何か言うか?」
「特技等ですね」
「特技か。飛べるな。後は詰まんない殺し方が出来る」
「ふっ、何よそれ」
「まあ良い。次は歳の順で俺か?俺はムームード。ムーかムードと呼んでくれ。特技は魔法剣。前衛だな」
女の煽りをスルーして、若く見える男が名乗りを上げた。オカルティックな雰囲気の略称のムームードだが、見た目は金髪爽やかイケメンだ。座り方に貴族味を感じる。銀ピカ鎧をマントで隠し、金持ちそうな感じがする。
「歳の順なら私でしょ?私はヘンプシャー。略称はヘンプでお願いね。得物はコレ。射線には出ないでね?」
手にはダガー?が三本、刃が前後に付いているのを見せ付ける。どっちでも刺さる苦無みたいだ。黒く染めてるのだろうトカゲ皮の鎧は何と無くボーデンフェルトを思わせる。クシャクシャした茶髪の女であった。
「次は…歳はもう関係無いか。一線を退いては居たが、急遽呼ばれたグリオーソだ。主に補助と回復を行う。俺の出番は無い方が良いがな」
どれだけ退いて居たのかは知る由も無いが、魔法を忘れる程では無いだろう。見た目に判るのは白髪混じりだと言う事だけで、それ以外では普通の冒険者だ。トカゲ皮の胸当てや脛当て、軽装だが良い物だ。服に使われてる布地もキラキラしてて刺繍たっぷり。良い仕事してますねぇ。
「最後だが、俺の方が若いからな?メルタールに所属しているダミヤンだ。剣も使うが盾を使う。射線に居ても撃つなよ?」
最後に名乗りを上げたのは、盾職だと言うダミヤン。盾が見えないのは仕舞ってあるのか、それとも本当に見えないのか。嵩張らないなら便利だよな。
「カケル様以外はAランクとなります。仲良くしてくださいね?」
自己紹介が終わるとカロが仕事内容を話し出す。迂闊に殺しちゃいけないらしい。
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