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その場でうんこする
しおりを挟む一人になった男を前に立たせて通路を歩く。今回は《威圧》で無く《結界》を纏わせた。それにしても女が騒がしい。魔道トイレに感動したようで、何処で売ってるのか、売れとか寄越せとか。お尻の幸せの為に粘る。
「トイレのガワは自分で用意しろ。中の属性魔石はその内売り出すだろうから」
「中の光ってる魔石ね!?」
情報の対価も払わず喜んでやがる。今直ぐボッタ価格で売ってやろうか…。大人しくなったので諦めよう。
前行く男は罠を探しながら歩く。左右にふらふら寄りながら、不自然な膨らみのある床を踏んで行く。
カカカッ!カツカツッ!
矢が飛ぶ罠か。鏃に毒を着けた殺意増し増しの罠だ。罠の種類と矢の本数等をマッピングされた板に書き込む。
「ねえ、その板に描いてあるのってフロアのマップ?」
「そうだぞ?罠や敵の出現位置や種類を書いてんだ」
「こんな事言うのもナンだけどさ、売れるの?ソレ」
「ギルド証に振り込まれるだけだし、問題無い。ギルドが売る時は小分けにするだろ」
「階層毎に?」
「それもある。罠は教えて敵と箱の位置は隠す、とかな」
「積めば積む程性能が…って事ね」
「浅い階層は今言った感じにして安売りするだろうな。階段の場所も隠すかも知れん」
罠が無くなると敵が出る。罠と罠の間に敵を配置しウロウロさせない算段か?
《結界》の男に噛み付くトカゲ。腕を飲まれてデスロールするが、噛んでいるのは《結界》なので腕が捥げる事は無い。トカゲの重みで這い蹲る男だが、伸し掛られても平気だ。
トカゲ共に《威圧》を纏わせ、数をメモして消す。次は罠か。
「あんたが全部消しちゃうから分かんないんだけどさ、敵の強さは確認しないの?」
「大体は魔石の大きさで予想出来るが、魔法を使ったりしなければ大した敵じゃ無いよ。攻撃手段見てから《収納》してるしな」
「そんな収納魔法、見た事ないわよ。生きた魔物よ?」
「ダンジョンの魔物は魔力の塊だよ」
外のも《収納》出来るけどな。
罠と敵を調査して、箱のある部屋にやって来た。勿論男に開けさせる。
「うっ!毒!?」
「こう言う時にも役立つ」
浄化の属性魔石を取り出して魔力を込めると、毒霧が浄化されて行く。
「灯り代わりにもなって良いじゃない」
「成程、ソレもアリか」
光と浄化の属性魔石を一緒にクリスタルモドキに封じれば、臭い敵にも有効な灯りになる訳だ。その場でうんこするタイプの冒険者にも有効だな。
部屋に入り、ドアが閉まる。罠部屋だ。
直ぐに俺と背中合わせになる女はこの状況に慣れてるようだ。
幾つのも魔法陣からにょきにょき出て来る雑魚達。数えるのも面倒だが仕方無いか。自分と女に《結界》を纏わせた。
「何?これ、彼奴に付いてるヤツ?」
「ああ。端に行こうか。攻撃はしなくて良いぞ」
三人が部屋の端に寄り、魔物を浮かせて選別しながら全部出切るのを待つ。
「コレで終わりか?」
「倒したらまた…って感じじゃない?」
「経験アリか」
「まあね」
一旦メモを取り、全て消す。女の言った通り第二陣が湧き出したが面子は変わらないな。全五回。総勢七百五十匹。弱いけどボス部屋以上に出たな。
「箱が、《収納》出来ん」
落ち着いた所で箱を回収しようとしたが、どうやら固定されてるようで《収納》出来無かった。即ちコレはダンジョンの一部、予想としては転移罠だ。
「開けない方が良いわね」
「メモっとこ」
メモを取り、此処の座標を固定する。
「箱を開けろ」
「…はい」「え?」
「大丈夫だ」
女を押して箱に寄り、仲良く転移罠に引っ掛かった。
《結界》を纏っていても転移罠は無事に作動し違う場所に飛ばされた。光の棒を刺した男も居る。女も隣で小さくなってる。良し。
飛ばされた場所は鍾乳石の垂れる洞窟型ダンジョン。凡そ下の階だろう。外に出られる場所は一つ。小部屋扱いの場所らしい。
「少し休憩な」
「え?それより此処何処よ…」
それも調べる。果物でも齧ってゆっくりしてなされ。
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