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冒険者の飯
しおりを挟む「あたし等、要らなかったわね」
静かになって暫くし、女が声を出す。ボールギャグの男も諦めたようで爪先立ちで歩いてる。
「話し相手にはなる。……ウォリス系六…ブフリム系十二…っと。それに」
メモを取り終え《威圧》の男を歩かせる。
「罠のチェックもしなきゃならんしな」
今消した十八匹もこの男が引っ掛かった罠に因るモノだ。まあ、居なくても良い。一階を隈無く周り、二階、三階と新たな板に情報を書き込んで行き、五階の中程で腹が鳴った。
「腹減ったし、此処が終わったら飯にすっか」
「歩きながら出来るじゃない」
「出来無くは無いが、お前休憩要らんの?」
「わたし等は何時もそうしてる。休むのは何度か戦闘した後くらいよ」
「そう言う事ならそれに倣うか」
歩きながら物を食うのは好みじゃないんだが、それが冒険者だと言うのなら仕方が無い。干し肉とソーサーを取り出して齧り、水の棒を直飲みしながら進む。女はソーサーに果物か。水分と糖分が取れて、比較的足の遅い果物は冒険者の飯に良いのかも知れないな。
「あがっ、ごえっあがげっ、だごっ」
静かにしていたボールギャグの男が騒ぎ出す。
「其奴も食事したいんじゃない?」
「口離したら魔法使うだろ?水でも飲んでろ」
水の棒から出た水を、浮かせて口の隙間に流し込む。
「あんたも魔法職なんだね」
「ん?武器も使うぞ?」
「そりゃあたしだって使うけど。少なくとも魔力が見えるんでしょ?」
魔法職と決め付けるのはどうかと思うが、そう言う事か。
六階に降りて、やはり休憩する事になった。食ったら出る。当たり前だ。
「見るんじゃ無いよ!?」
「俺もしてるんだから集中しろ」
階段の左右に別れて糞を垂れる二人。残りの二人はそっぽを向けられ動けない。あっちはどうだか知らないが、持ってて良かった魔道トイレ。糞も匂いも尻から出た側から《浄化》されて行く。
スッキリし、片付けて、装備を整え準備良し。
「まっ!まだしてるんだから!振り向くなー!」
煉瓦の壁を出しといた。
「そんな事出来るんなら先に言いなさいよっ」
「何でお前にしてやる必要があるんだ?自分にさえしてないのに」
「きっ、気遣いなさいよ」
「気遣って休憩要らんのか聞いたのに」
「そんなのタラレバじゃない」
「飯食って、休憩して、食ったモン出して出る。俺の知り合いはこのサイクルでやってるぞ?そっちはどうしてんだ」
「それは、皆で壁になって…」
「一気に済ませりゃその分時短になるだろ。そろそろ終わりか?」
「聞くなーっ!」
そんなこんなで再出発。その後五オコン程掛けて調査して辿り着いた十階。入口の大きさでボス部屋だと予想出来る。
「此処を殺ったら今日は終いだ」
「殺れる前提で話すのね」
「お前等は端っこで静かにしてろ」
「わたし等、ホントにお話係なのね」
デカいドアを開け、中に入る。ドアが閉まり、フロアを覆う程大きな魔法陣が浮かび上がる。俺は《威圧》の男を浮かせて突出させた。
「なんて数……」
「珍しいな。道中も数が多かったが、此処もか」
「あんた、行かないの?」
「調査が先だ」
敵が出終わる待つなんて馬鹿のする事だが、調査の為なら仕方無い。魔法陣の真ん中辺りからワラワラと現れる大小様々なブフリム系にウォリス系。お代わりの出ないモンスターハウスだなこりゃ。生贄以外に《阻害》を掛けると、一番近い者に集まって、棒や牙で襲い掛かる。
《威圧》は硬い。《威圧》の男に群がる雑魚が、フレンドリーファイアで傷を負う。マップを描いて、そろそろ出切ったかな?敵全員に《威圧》を掛けて動きを封じると、種類毎に浮かせて整理し数を数えて板に書き込んだ。
「ブフリム系…小八十二…中四十…」
「こんな探索初めてよ…」
俺だって初めてだ。敵の数なんて一々数えて無いからな。
総勢二百九十七匹。中途半端な数だがしっかり数えた。尽く《収納》し、カウントしたから間違い無い。箱も出たからこれ以上出ない…筈だ。
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