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お喋りは後

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「これから他の冒険者も来るんだろ?しっかりせい」

「は、はいっ。申し訳ありません」

 カロを窘めビシッとさせる。こっちのカロも好き。

「シンク、パパはお仕事だけどお土産は期待するなよ?」

「うべぇ~」  『はいはい。で、何で一緒なの?』

「朝一から来たってのに他の奴等はまだなのか?」

俺も気になったので二人に分かるように聞いてみた。

「混雑に紛れているかも知れません。シンクを送る序に見て参りますね」

「なら俺は此処で待つよ」

「ばば~い」  『成程ね。お土産期待してるから』

シンクを抱いたカロが部屋を出る。一人で待つのは退屈だが仕方無いな。

暫くして戻って来たカロと、お茶を運ぶ職員。そして男と女の冒険者。男が二人に女が二人。俺、ハブられる?

「さ、皆さんも座って」

二人掛けに男、俺。対面に女、女。お誕生日席に男。俺、気不味い感じを押し殺し、お茶が並ぶのを待って逸早く口を着けた。
机から資料?を取り出し、対面のお誕生日席に座るカロが口を開く。

「先日から話をしていましたが、本日集まったこの五人でダンジョンの調査に向かって頂きます」

「ギルマスよぅ、そいつは構わんが、コレは誰だ?」

「カケル様です」

カロの向かいに座っていた男が失礼な口を聞くと、カロは男を睨め付ける。《威圧》では無さそうだ。

「カケルだ。舐められたくない気持ちは分かるが今は仕事の話をしてるぞ?」

「手前ぇ…」「仲良いな、俺と席代われや」

失礼な男がイラ付いて腰を上げると、隣に居た男が立ち上がる。

「粗末なモンを誇示する奴の隣に居たくねぇんだ。代われや」

「ぷっ」「ふふっ」

見ても無いのに失礼な男だ。見せるなら対面の女達だけだがな。

「俺が代わる。お前は大人しく座ってろ」

お茶を持って浮き上がり、隣の男を迂回して対面へ向かう。

「うっ」「浮いたっ!」

「早よ退け。仕事の話すんだから」

「なっ!?」

驚き騒ぐ奴等を無視して失礼な男を浮かせて排除。男はよろけて踏ん張った。

「さ、ギルマス。仕事仕事」

「は「てめっ!何しやがっががっ」」

「お喋りは後だ。ギルマス、続けて」

五月蝿いので口の中に《威圧》の球を突っ込んだ。アレはもう無視で良いや。

続きを促され、カロが説明を始める。内容は以前に決めた内容と変わらない。二十階層を目安として、行ける範囲での調査である。罠とエネミーの強さの分布にフロアの特徴を出来るだけ詳しく調査して欲しいそうだ。
…真面に聞いてるのは俺だけか。ボールギャグの男は《威圧》の球を取ろうと必死だし、見てない男は対面の女と目と目で通じあっていた。もう一人の女は果物齧ってるが、此奴が一番マシかも知れん。態々此処で齧る為に、態々果物用意して来たんだろうから。

「説明は以上です。皆さん準備はよろしいですか?」

「準備はとっくに済んでるぜ、だがなぁ…」

「何か?」

「ギルマスよぅ、さっきからソイツの飾モンに目が釘付けじゃねえか。溜まってんなら…………」

言葉を切って《威圧》を纏わせた。皮鎧の内側からみっちりと。何分持つかな?

「何も無いようなら行こうか。自己紹介は道すがらでも出来るしな」

固まった男と口に球が詰まった男を浮かせて連れ出す。女達も着いて来るようだ。

 混雑するギルドを出て、外へ出る。

「あ!あんた!荷物!荷物どーすんのよ!?」

目と目で通じあっていた女ががなる。虫の息な男が準備済んでると言ってた時に頷いてたよな?

「準備してないのか?」

「宿屋に!部屋に準備してあるのよ!」

もう一人の女は無言で女を睨む。

「先に行く。場所は知ってんだろ?」

言い捨てて歩を進めた。合流出来なきゃそれまでよーってな。

「ねえ、其奴、死んでない?」

崖を左に仮設の足場を探していると、着いて来た女が口を開いた。

「この程度で死んでたらダンジョンじゃ生き残れんよ」

纏わせた《威圧》をワキワキ動かして見せると女は押し黙った。
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