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EDに効く
しおりを挟む移動はやはり電車となった。仕事場と同じ方向だったので二度手間だ。
「店の近くで切れば良かったかな」
「かもな。お前も焦っていたのだろう」
「焦りは死に繋がる。お互い気を付けような」
店を調べてくれた弥一に連れられ揺られる事二時間半ちょっと。時間は昼に差し掛かろうとしていた。
「飯食ってから行くか?」
「ああ、食いながら呼ぶか」
「ホテヘルなのか」
「取り敢えず飯食いながら話すべ」
ファミレスに入って禁煙席に通されると、注文頼んでドリンクバー。久しぶりの米飯に心躍る。俺も弥一もカツ丼定食にコーラ。太る筈である。
もりもり食べる弥一の話を聞くに、女の詰める店の近くから電話を掛けて、ホテルの近くで待ち合わせ。合流したらホテルへインしてお楽しみ…だそうだ。
「それ、本番無いだろ」
「俺にそれが分かると思うか?」
「生前に聞いた話だとな?ソープで無いと本番無理らしいんだ。イケメンはその限りでは無いと聞くが、弥一はデブだしな」
「コレでも八キロ痩せたぞ?」
「今食ってるので一キロ太ったな」
「じゃあ…、この辺りだと…此処はどうだ?」
二時間で二万五千円~と書いてあるが、スマホを受け取りよく見ると二時間六万円。
「他にも店あるみたいだし、数打つか」
「おいおい、俺三十路だぜ?」
「問題無い。異世界チートをくれてやる。飲んでみれ」
アレを取り出しお冷に一滴。そして股間に《阻害》を掛けた。咀嚼するカツ丼と一緒に飲み干すと、ゆっくり前のめりになって行く。
「おま…、やべぇって…」
「騒がなかったな、偉い偉い。《阻害》掛けてあるから心配すんな。見せびらかすような事しなけりゃバレん」
「いや、これ、ヤバい」
「刺激で出されたら困るな」
追加で《耐性》と回復も掛けてやる。
「ふぅ…。何だこれ。何時も以上に、デカくなってる…」
「トカゲのオノミのスープだ。EDに効く」
「トカゲ…ドラゴンだよな?」
「ああ。龍に作り方を聞いて、品質のチェックも受けたから効き目はバッチリだろ。三日はカチカチだぜ?」
「これは、自信湧くな…。けど三日もこんなだと外出れねーよ」
「安心せい。終わったら地球とおさらばさ」
「…そうか。分かった。PC壊すから一度家に戻ってくれよな?」
飯を平らげファミレスを出る。少し腰が引けた男を隠すように店を出ると、そのまま如何わしい店のある通りへと進む。
「ホントに見えてないのか?」
「《阻害》されてるぞ?俺には見えてるけどな。下手に隠すと凝視されてバレるかも知れん。堂々とせい」
それでも及び腰なので、異世界製の肩掛けカバンをくれてやる。初めて買ったヤツだ。
「無いよりマシだが、これは幾らなんだ?」
「多分中古で四千ヤン」
「ヤン…四千円って事か?んー、中古にしちゃ高いか」
「作家なら知ってると思うが、加工品は高いんだ」
「成程。糸にして、布にしてってか。あ、あの店だぜ」
防具を纏って多少気が楽になった弥一がお目当ての店を見付け、俺を押し押し入らせた。
「え、予約要るの?」
目の前が暗くなる。
「今からネット予約でも良いですよ」
目の前に光差す。
「俺スマホ置いて来ちゃった…」
河原か実家かゴミ処理場に置いてある筈だ。
「お兄さんですよね?お連れさんのスマホで二人分予約しても良いですよ。今回だけね」
良かった。が、兄弟と思われたのは誠に遺憾である。
店員に言われるままに弥一が急か急かタップして、二人分の予約をしたら指名料やらの料金を支払い待合室へ。都合良く俺達以外の客は居ないようだ。椅子に並んで大人しく待つ。
「歯磨きとか、した方が良かったかな」
「そうだな。口開けて少し我慢しろ」
二人纏めて《洗浄》すると、弥一はビクッと体を強ばらせた。俺も慣れる迄はそんな感じだったな。
「歯に詰まってたのが取れた」
「折角の文明だし爪切るかな」
二人で爪を切り、鑢で整え呼ばれる時を待った。三十分程して、仲良く二人が呼ばれたので待合室を出る…。
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