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やれば出来る
しおりを挟む「この臭み消しの量って、普段使う量より多いか?」
「トカゲで無いならこれくらいは使いますね」
トカゲ肉はもっと少なくて済むのだそうな。使った臭み消しの値段を聞いたが、島とウラシュ島で育ててるので実質無料だそうだ。手間賃のみの商売は、儲かる。
骨と腱に火が通り、焼き色が付いて肉の焼ける匂いが漂うと、そこに水を入れ沸騰させる。グツグツと強火で炊くのは匂い消しにもなるが、今回は乳化させる為だ。底が焦げないように掻き混ぜながら、水を足し足し煮込んでく。
「後どれくらいで午後の部だ?」
「多分ですが、一日くらいでしょうか」
「なら焦らなくても良いか…」
「所でそれ、食べるのですか?骨ですよね?」
「これはスープの素だよ。ガラを濾したのをスープ作る時に足してやると味が増す」
「一々骨を焼いて作り始めるより早く出来ますね」
「そう言う事だ。野菜も一緒に入れても良いんだが、どれを入れたら良いか分からんからなぁ」
「でしたら此処のを使ってください。スープ用なので合うと思いますよ?」
「使って良いの?」
「リーム様のお陰で野菜の育成に困らなくなりましたから」
「後で手間賃弾まないとな。では少し頂くよ」
《散開》してペースト状にした野菜を入れて混ぜる。ドポドポとマグマ状になるので掻き回す手を止められないのを女達に手伝ってもらいながら三十リット程頑張り、腱と骨を《集結》で排除させたら火を止める。そのまま冷やすと寸胴が使えないので何とかせねば。
「リュ~ネェ~、たーすけーてー」
「はぁ~い~。何ですかぁ?」
「魔力で冷やすと使えなくなっちゃうから、冷やして欲しいの」
「はいはい。お手伝いしますねぇ~」
寸胴の中身を浮かせて外に出し、四角く纏めると、リュネの手から出たキラキラした物がスープの素を冷やしてく。ミーネのヤツと同じっぽいか?
「姉のとは違いますよぉ?」
「違うのか」
「姉のは熱を《収納》するんです。これは魔法の粒子に熱を吸わせてるんでぇす。人の子でも出来る技術なので、覚えてく~ださぁ~い」
魔力で無く、魔法で作った粒子なら素材が魔力過多にならないって訳か。
「否、それ無理だろ。土魔法で鉄板出すの覚える方が早そうだぞ?それにそのキラキラはどの属性だ?」
「水と光ですねぇ」
「俺もやれば出来るってか…」
「はぁい。頑張ってくださいっ」
リュネ先生は職人肌だぜ…。
冷えきったスープの素を練り練りし、ペースト状にすると、ギュッと固めた雑木容器に詰めて小分けにする。こんなにあっても直ぐには使わんからな。今は一つあれば良いので残りは保存庫送りにしてもらう。
「カケル様、料理の試作が終わったようですね」
容器を仕舞いに行くラビアンと擦れ違い厨房へと入って来るシャリーは、もう試作が終わったモンだと思ってらっしゃる。
「まだ始まったばっかりだよ?」
「え?今迄作ってましたよね?」
「これ、調味料な。まだ肉の加工もして無いよ」
「何かお手伝いしましょうか?」
「シャリーは休んでくれ。お前が居ないと店が回らん」
仮眠するシャリーを見送り、今度こそ肉料理に着手する。さっき迄使ってた寸胴に《散開》で砕いた脂身を入れて加熱すると、ジュワーッと美味そうな音を立てて脂が滲み出る。そこへペースト状にした肉を入れて掻き混ぜる。量があるので中々の力仕事だ。底の方をゴリゴリしながら掻き混ぜて、寸胴の中の脂が透明になったら味を見ながらスープの素と塩を入れる。
「ちと味見してみてくれ」
「あ~ん」「あ~ん」「ああ~ん」
皿使えよ…。一摘み浮かせて口に放り込んでやる。
「んむ、んむ…美味しいですね」
「お肉食べてる感じじゃ無くなりましたが味はしっかりお肉です」
「ハンバーグでしたっけ?アレを崩した時に似てますかね。またアレ食べたいです」
概ね好評のようだ。そう言えば、俺が厨房に立たなくなってからとんと作ってないよな。ハンバーグ。
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