1,063 / 1,519
やれば出来る
しおりを挟む「この臭み消しの量って、普段使う量より多いか?」
「トカゲで無いならこれくらいは使いますね」
トカゲ肉はもっと少なくて済むのだそうな。使った臭み消しの値段を聞いたが、島とウラシュ島で育ててるので実質無料だそうだ。手間賃のみの商売は、儲かる。
骨と腱に火が通り、焼き色が付いて肉の焼ける匂いが漂うと、そこに水を入れ沸騰させる。グツグツと強火で炊くのは匂い消しにもなるが、今回は乳化させる為だ。底が焦げないように掻き混ぜながら、水を足し足し煮込んでく。
「後どれくらいで午後の部だ?」
「多分ですが、一日くらいでしょうか」
「なら焦らなくても良いか…」
「所でそれ、食べるのですか?骨ですよね?」
「これはスープの素だよ。ガラを濾したのをスープ作る時に足してやると味が増す」
「一々骨を焼いて作り始めるより早く出来ますね」
「そう言う事だ。野菜も一緒に入れても良いんだが、どれを入れたら良いか分からんからなぁ」
「でしたら此処のを使ってください。スープ用なので合うと思いますよ?」
「使って良いの?」
「リーム様のお陰で野菜の育成に困らなくなりましたから」
「後で手間賃弾まないとな。では少し頂くよ」
《散開》してペースト状にした野菜を入れて混ぜる。ドポドポとマグマ状になるので掻き回す手を止められないのを女達に手伝ってもらいながら三十リット程頑張り、腱と骨を《集結》で排除させたら火を止める。そのまま冷やすと寸胴が使えないので何とかせねば。
「リュ~ネェ~、たーすけーてー」
「はぁ~い~。何ですかぁ?」
「魔力で冷やすと使えなくなっちゃうから、冷やして欲しいの」
「はいはい。お手伝いしますねぇ~」
寸胴の中身を浮かせて外に出し、四角く纏めると、リュネの手から出たキラキラした物がスープの素を冷やしてく。ミーネのヤツと同じっぽいか?
「姉のとは違いますよぉ?」
「違うのか」
「姉のは熱を《収納》するんです。これは魔法の粒子に熱を吸わせてるんでぇす。人の子でも出来る技術なので、覚えてく~ださぁ~い」
魔力で無く、魔法で作った粒子なら素材が魔力過多にならないって訳か。
「否、それ無理だろ。土魔法で鉄板出すの覚える方が早そうだぞ?それにそのキラキラはどの属性だ?」
「水と光ですねぇ」
「俺もやれば出来るってか…」
「はぁい。頑張ってくださいっ」
リュネ先生は職人肌だぜ…。
冷えきったスープの素を練り練りし、ペースト状にすると、ギュッと固めた雑木容器に詰めて小分けにする。こんなにあっても直ぐには使わんからな。今は一つあれば良いので残りは保存庫送りにしてもらう。
「カケル様、料理の試作が終わったようですね」
容器を仕舞いに行くラビアンと擦れ違い厨房へと入って来るシャリーは、もう試作が終わったモンだと思ってらっしゃる。
「まだ始まったばっかりだよ?」
「え?今迄作ってましたよね?」
「これ、調味料な。まだ肉の加工もして無いよ」
「何かお手伝いしましょうか?」
「シャリーは休んでくれ。お前が居ないと店が回らん」
仮眠するシャリーを見送り、今度こそ肉料理に着手する。さっき迄使ってた寸胴に《散開》で砕いた脂身を入れて加熱すると、ジュワーッと美味そうな音を立てて脂が滲み出る。そこへペースト状にした肉を入れて掻き混ぜる。量があるので中々の力仕事だ。底の方をゴリゴリしながら掻き混ぜて、寸胴の中の脂が透明になったら味を見ながらスープの素と塩を入れる。
「ちと味見してみてくれ」
「あ~ん」「あ~ん」「ああ~ん」
皿使えよ…。一摘み浮かせて口に放り込んでやる。
「んむ、んむ…美味しいですね」
「お肉食べてる感じじゃ無くなりましたが味はしっかりお肉です」
「ハンバーグでしたっけ?アレを崩した時に似てますかね。またアレ食べたいです」
概ね好評のようだ。そう言えば、俺が厨房に立たなくなってからとんと作ってないよな。ハンバーグ。
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる