1,061 / 1,519
倫理的にはダメ
しおりを挟む保温器があるので金属容器は薄くて済む。二ミリ程の薄さにした鉄板を、《威圧》工法でプレスして保温器に収める。何も入れて無いのに取り出し難いのは内圧のせいかな?保温器に溝を彫って、多少出し易くなった。
「穴開けちゃえば良いです」
ニトの言い分は分かる。圧力を調整すれば取り出し易くなるもんな。
「穴の所から冷めちゃうよ?」
「蓋すりゃ良いですよ」
成程…。容器の重みで穴が塞がってりゃ良いんだしな。保温器を作り直すと、その底を内側にテーパーが掛かるよう大きく円に切り、断面を固めてセットした。
「保温効率は誤差程度には下がるが、利便性は大事だよな」
金属部を収めて持ち上げると、カコッと音がしスルッと上がる。これは良いな。試しに水を注ぎ、湯を沸かす。さて、蓋蓋。蓋は雑木を使い、保温器と同じ仕様で作った。
「カケル様、お湯が湧いております」
「おう。今行く」
湯が沸く迄の間に大中小の金属容器と、三つの蓋が出来上ていた。ポコポコと泡を出す湯の中から火の鉄板を《収納》し、コップで掬って一口…熱いな。
蓋を閉めて、待つ。
「増産する前に、コイツが冷める迄何オコンかを調べなきゃならん。皆の協力に感謝するよ、ありがとな」
「カケル様~」
「お湯が冷める迄、お付き合いします」
「ふくりこーせー、お願いするのです」
やはりな。望む所だ。《感知》で時間を見ながら一オコン毎に蓋を開けて温度を見てもらう。スープや食品として許されない程冷めたのは五オコン。もっと頻繁に開け閉めしたり、開けっ放しにしていたらもっと早くに冷めてしまった事だろう。まだまだ温かい白湯を飲み、女達の中に熱い子種を注ぎ込んだ。
改修の結果として、火の属性魔石を一つ、クリスタルモドキで固めた物を蓋に貼り付ける事で解決とした。金属容器に埋め込むと、その一点だけ焦げちゃうかも知れないからだ。
福利厚生を終え、艶々になった兎達は赤ちゃんの世話や料理の仕込みになんか向かってく。俺は容器を増産し、一人二階で横になる…。
「……と……」
「…を……と…い」
「ん…上手く行ったか…」
「目を開けよ」
促され、目を開けるとそこは真っ白い空間。此処に来るのは二度か、三度か。辺りを見回すが誰も居らず、声の主が此処に居ない事だけは分かった。
「本来はダメなのだろうけど、お伺いだけは立てなくては…と」
口にすると何処からか声が聞こえる。《念話》を耳の直ぐ傍で聞いてる感じ。頭の向きを変えても同じように聞こえる。
「確認は出来ておる。久しいの。狩場翔よ」
「地球の神、ですか?」
「うむ。まさか《転移》するとは思うて無かったぞ?」
「のらりくらりと躱しながら、味噌やら醤油やらを密輸したかっただけだったんですけどね」
「人は間違いを犯すモノよ」
「で、実際どうなんです?輪廻の関係とか、体の構造的に」
「倫理的にはダメだの。輪廻の輪に加わるか否かは誤差でしか無い。体の事は狩場翔も知っておるだろう」
「確か俺は、死んだ後、シルケで肉体を地球人の状態で再構成されたのですよね?生身の地球人がそのままシルケに飛んでも平気って事ですか?」
「繁殖出来んのと、魔法が使えん。そしてステータスの閲覧もスキルの発生も無い」
「前の女神がギフトを渡す時に、後の二つが付いたのですね」
「そうなるのだろうな。狩場翔よ。北上弥一を転移させるのは地球人を一人殺すのと変わらぬ。ソレを産みし者が、その縁者が泣くであろう。狩場翔の時と同じく、な」
「それは俺や、俺の娘みたいに事故を装って殺されて、無理矢理拉致させられればそうなりますよ。奴の場合は話を通して行かせます。本当は来て欲しくは無いけど」
「北上弥一の意志も固そうであるしな」
「せめてスキルを増やせるようにしてやれませんか?それと、シルケの女神にも話をしたいので繋がれるよう協力して欲しいです」
「生身で行けば死ぬだろうしの、…仕方あるまい」
地球の神的な者との話は出来た。
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
ダンジョンの戦闘配信? いやいや魔獣達のための癒しスローライフ配信です!!
ありぽん
ファンタジー
はぁ、一体この能力は何なんだ。
こんな役に立たないんじゃ、そりゃあパーティーから追放されるよな。
ん? 何だお前、自ら寄ってくるなんて、変わった魔獣だな。
って、おいお前! ずいぶん疲れてるじゃないか!?
だけど俺の能力じゃ……。
え? 何だ!? まさか!?
そうか、俺のこの力はそういうことだったのか。これなら!!
ダンジョンでは戦闘の配信ばかり。別に悪いことじゃいけけれど、だけど戦闘後の魔獣達は?
魔獣達だって人同様疲れるんだ。
だから俺は、授かったこの力を使って戦闘後の魔獣達を。いやいや共に暮らしている魔獣達が、まったりゆっくり暮らせるように、魔獣専用もふもふスローライフ配信を始めよう!!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる