1,033 / 1,519
姪孫
しおりを挟むリュネは俺の意思に従うのだろう。ぶっちゃけ俺は何方でも良い。
「問題無いですが、退屈ならお茶でも飲んで来て構いませんよ。…では王よ。勇者召喚の方法聞きに来たのだが、資料と方法を教えてくれ」
「禁忌の秘術ではありませんか!貴方、なりませんよ?」
軽く流して話を始めると、王妃は声を荒らげた。
「知った所で勇者を呼ぶ事は無いよ」
王妃の叫びに静かに答える。
「お前等の召喚は召喚前の体を殺して、魂をコッチに拉致してから体を再構築させるみたいだからな。人の人生ぶっ壊すような事、絶対やんねぇよ」
「そこまで知って、更に何を求むのです?」
荒ぶる王妃を手で制した王が、前のめりになって聞いて来た。
「消費魔力や、それを抑える方法だよ。あの時教会で召喚させようとしてたが、あの場の魔力、全部合わせてもイゼッタ一人に敵わない程度の量だった。ならば消費を抑える方法があるのだろう」
「消費を抑える方法は分かりかねます。伝えられた方法でしか行えませんので」
「召喚失敗させたのに、勇者は死んだんだ。少しばかり夢見がちな女の子がな。お前等の手足が何人死のうと、殺して良い子じゃ無かったんだ。隷属させて犯すなんて以ての外なんだ」
「「申し訳、御座いませんでした…」」
王と宰相が椅子を離れ頭を地に着ける。隷属や犯す云々は未遂だが、それを聞いて王妃も口を閉ざした。
「早速資料を持たせます。どうか別室にてお待ち頂きたい」
宰相の言葉で入室して来たメイド達に連れられて、王達と共に謁見の間の奥にある別室へ。テーブルに着き、お茶に焼き菓子が出る。
「今度は普通のお茶だな」
「カケル様、先程同様最高級のお茶でしてよ?それにしても驚きです。勇者召喚を妨害したドラゴンが、カケル様でしたなんて…」
「ああ、根こそぎ殺したよ」
「カケル、叔母様は責めてない」
「そうですよカケルさん。あんな龍を見て惚れない雌は居ませぇん。それに…ふふっ、アレが、うふ、でろ~んって…うふふふ」
リュネの思い出し笑いで、少し暗くなった部屋が明るくなる。目の前のもやもやが晴れたのは、無意識に垂れ流していた魔力が収まったからのようだ。
「カケル様は人の姿をしておいでだが、本当に人なのであろうか?」
冷や汗ダラダラの宰相が問う。イゼッタとノーノ以外の人種は真面に話す事も出来なそうだ。
「ちゃんと人種だよ。ごめんなシャリー」
皆を回復させて居ると、ドアをノックしてメイドが入って来る。以前見た眼鏡の女がカートを引いたメイドを引き連れてる。出世したのか?
「全てお持ちしました。先程の魔力暴走は何事かございましたか?」
「勘違いで垂れ流しちゃっただけだよ」
「あの時のドラゴン様、ですよね?」
「人が龍に化けてたんだ」
資料をテーブルに乗せながら、眼鏡のメイドが問うて来る。龍が《人化》してると思ってるみたいなので訂正しといた。
それにしても量が多い。勇者召喚の方法を記した本に、それに付随する知識についての資料。行動記録と資材資料が召喚された回数分で、これ一日じゃ見終わらんぞ。
「読んでたら日が暮れるなこりゃ…」
「理解しながらですと私の場合十日掛かりました」
「宰相よ、何故メイドが禁書を?」
「拓書要員で私の姪孫で御座います。お忘れですか?」
「トリントン嬢か、覚えてはいるがもっとこう、垢抜けて居ったではないか」
「宰相様、十四の頃から出会いも無く、八年もメイドと拓書をしていればこうなるのも仕方ありませんよね?」
「よし。カケル様に嫁げ」
「ダメー」「ダメです」
トリントン嬢二十二歳がこの世の不幸を全部背負った顔をして膝を落とす。確かこう言うメイドとかって、行儀見習いで数年入る年季奉公とかだったよな。年季も明けず、婚期を逃す。カロみたいだ。
「メイドとしてなら貰っても良い」
俺の言葉に部屋が沸く。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる